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人を捉えて離さない光
 『光をくれた人』(The Light Between Oceans)['16] 監督 デレク・シアンフランス
 『カフェ・ソサエティ』(Cafe Society)['16] 監督 ウディ・アレン

高知新聞「第184回市民映画会 見どころ解説」
('18. 1.17.)掲載[発行:高知新聞社]


 今回は、戦前の1920~30年代を舞台にした結婚にまつわる物語が並んだ。ともに奇しくも監督自身が脚本も書いていて、作品に対する想いの強さが窺える仕上がりになっている。両作とも人生の選択における是非もない生き様が心に残る作品だ。

 光をくれた人は、孤島に漂着した赤ん坊の届け出を怠る“不作為による赤ちゃん泥棒”を犯してしまう灯台守夫婦のトム(マイケル・ファスベンダー)とイザベル(アリシア・ヴィカンデル)を描いた作品で、赤ん坊の生母ハナ(レイチェル・ワイズ)を含めた各人の選択と覚悟に現れる意思の強さが印象深い。

 『カフェ・ソサエティ』は、ミュージカルとストレート・プレイの違いはありながら、筋立てのみならず映画とジャズへの作り手の強い愛着が窺える点でも、先ごろ“県民が選ぶ映画ベストテン”外国映画第1位に選出されたラ・ラ・ランドを想起させる作品だ。ハリウッドでエージェントとして成功した家庭持ちのフィル(スティーヴ・カレル)と彼の下で働くニューヨークのしがない宝石職人の息子である甥ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)の双方からプロポーズされるヴォニー(クリステン・スチュワート)、三者それぞれの選択にままならぬ人生の巡り合わせが作用し、タイミングのもたらす悲喜劇を醸し出していた。

 いずれの映画においても、単純な是非では片付けられない人間的な真情に、苦しいまでの切実さがあり、人と生への誠実とは何かという問い掛けがある。

 また、前者には、第一次世界大戦の落とした影が背景にあり、後者には、若い国アメリカが背後に隠した暴力と縁故を巧く使いながら、カネと社交力で後に国際社会をのし上がっていった姿のボビーへの仮託があって、物語にスケール感を与えている。敢えて時代背景を前世紀はじめに置いたことの意味が利いているあたりが大きな観どころだ。

 前者の盗みにしても後者の虚飾にしても、決して善きものとは言えないながらも、普遍的に人を捉えて離さない光も放っていた気がする。その根底にあるのは人の生に必要な「欲」なのだが、両作に描かれた時代の人々の欲の表現には、今の時代が失っている節操が感じられるところをぜひ味わっていただきたい。そして、それぞれの作品のタイトルになっている「光(The Light)」「ソサエティ(Society)」の暗示しているものに思いを巡らせてみていただきたい。
by ヤマ

18. 1.17. 高知新聞「第184回市民映画会 見どころ解説」



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