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| 『エディントンへようこそ』(Eddington)['26] | |||||
| 監督・脚本 アリ・アスター
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| さすがアリ・アスター作品だ。かつての明るくタフで格好をつける頼もしいアメリカではなくなり、混沌と不安と分断に強迫されて混乱している現在のアメリカで起こっている事々について、BLM運動やテロ集団、銃乱射、暴動、陰謀論、カルト教団といったフェーズで、現にいつかどこかで見聞した覚えのある言葉の数々を矢継ぎ早に並べ立てつつ、今や百年前の西部開拓時代のごとく力が物を言う無法地帯と化している現況を“狂ったアメリカ”として西部劇に擬えて活写していたような気がする。大きな違いは、かつての西部劇の底流にあったマチズモが消え失せ、強迫神経症的な不安に苛まれているアメリカの姿が投影されているように感じた。 特に目を惹いたのは、本作に登場する人々の、カリカチュアライズに留まらない、常軌を逸した頭のオカシくなった姿だった。彼らこそが現下のトランプ2.0を現出させたとみていて、その原因は、全米を襲ったCOVID-19とそれに対抗したmRNAワクチンの接種にあると言わんばかりの舞台設定だった。確かに、あの頃からアメリカの混迷と暴走は一段ギアを上げたような印象がある。アメリカ社会の変質に対して、底が抜けたような驚きを僕が覚えたホワイトハウス襲撃事件が起きたのは、まさにCOVID-19パンデミックから一年経った2021年1月6日のことだった。本作でも襲撃事件とは異なった「一年後」が登場する。 突如、市長選に立候補する、正気が跳んでいるような不穏なジョー・クロス保安官を演じてさすがのホアキン・フェニックスだったが、父親からは性的虐待、母親からは精神的虐待、十代時分にはデートDVと思しき強姦による堕胎に見舞われた心的外傷を負っているらしきジョーの妻ルイーズを演じたエマ・ストーンの体現していた不穏が印象深い。そして、いささかファナティックな社会運動家サラの配置と人物造形が利いていたように思う。 そして、この狂ったアメリカを生み出した、もう一つの鍵だと作り手が見ていると思しき人物の名前としてジョージ・ソロスと、トランプの側近だったスティーブン・バノンを偲ばせる人物名を負ったヴァーノン・ジェファーソン・ピーク(オースティン・バトラー)教主を配していることが目を惹き、痛烈な皮肉の込められたラストが鮮やかだった。エディントンこそは、トランプ2.0下のアメリカに他ならないというわけだ。 すると「これはアクチュアリティありましたよね。アリ・アスター、カルト監督から飛躍しましたね。」とのコメントが寄せられたので、「はい。財力であれ、銃力であれ、洗脳であれ、力に物を言わせる粗暴な時代として西部開拓時代への先祖返りだとしている慧眼が利いていましたね。主人公、保安官ですよ、保安官(笑)。全然カッコよくありませんでしたが。」と返した。それにしても、アメリカ人の頭がここまで一斉におかしくなったのはCOVID-19とmRNAワクチンのせいだとした着眼には恐れ入った。 我が国でもトランプ=安倍エピゴーネンのような出鱈目な暴言や無責任な虚言を放つ党首が選挙で圧勝するようになり、戦後着々と進められてきたアメリカナイズもここまでに至ったかと唖然としたものだったが、実得票率では三割台だったとの報道を受けて一息つくとともに、それでこの議席数を得てしまう制度に呆れ果てた。 | |||||
| by ヤマ '26. 2.23. TOHOシネマズ3 | |||||
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