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| 『ヒポクラテスの盲点』['25] | |||||
| 監督 大西隼
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| 先頃、満八十九歳で亡くなったばかりの母は、一度もワクチン接種しないまま亡くなるに至るまで、新型コロナウイルスへの感染は一度も認められずに死去した。かねてよりの天邪鬼も手伝って同調圧力には逆らいたくなる僕だが、このワクチン接種に対しては、単なる同調圧力ではなく、当時従事していた職務上の必要性からの已む無さと、内科医の友人からも大学の医学部で教授をしている弟からも勧められたこともあって、三回目までは接種したものの発熱も含めた副作用は一切なく、ワクチンが効いたのか生来の免疫力か奏功したのか判らないけれども、妻ともども、一度も感染が認められないまま今に至っている。 本作のチラシの表に記された「あの時「喧伝」されたことは正しかったのか?」に対しては、今なお少なくとも三回目までのワクチン接種は奏功したと評価する医師と、その効果においても安全性に対しても不確実性が極めて高いなかでの、リスク開示のない接種キャンペーンは、間違っていたとする医師の双方の意見が、それぞれそれなりの説得力と節度で自負と熱意によって語られていて感心した。 どうすべきだったかについては、是非もないという気がするのだが、生じた“不都合な真実”に対して隠蔽や黙殺、責任回避をするのは不誠実極まりないと思った。そして、その“不都合な真実”に対して、科学的に正面から向き合うことを求めて止まないだけでなく、ビタミンD摂取などの実際的な対処法を模索し続ける熱意と気概を持って臨んでいる巷の臨床医たちの存在に気高いものを覚えた。彼らに対して「先生は反ワクですか」と返したという後輩医師の“医師にあるまじき非科学的態度”に失望を抱いたと嘆いていた児玉医師の言葉と、現場で実際に薬害と思しき害を被っている患者と接している医師には立派な仕事をしている医師が少なからずいるのに、昔と違って学術界は政府の御用学者のような医師ばかりになってしまったと嘆いていた福島医師の言葉が印象深い作品だった。「害は与えない」というヒポクラテスの言葉が医療従事者の根本だとする考え方からは、割合的には小さくても一定割合を越えて害を与えてしまう処方は以ての外だというあたりがタイトルの意味するところらしい。 今なお引き摺っている学術会議問題を持ち出すまでもなく、国家主義的強権政治を政権与党が何十年も続けてきていることの帰結なのだろう。事は学術界のみならず、官界でも教育界でも報道界でも、極めて顕著になってきている気がする。最前線の現場に立っている心ある者と斯界の上層部にいる者との乖離が大きく、経済のみならず、こういったところでも格差社会化が進展していることを改めて感じた。チラシの最下段には「大手メディアが殆ど報道しない、科学と事実に基づく《驚愕》ドキュメンタリー」との惹句が記されていたが、きっと現場には大きく報じたいと思っていた記者が幾人もいたに違いない。 | |||||
| by ヤマ '26. 2.22. 喫茶メフィストフェレス2Fシアター | |||||
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