『ロボット・ドリームズ』(Robot Dreams)['23]
監督 パブロ・ハルベル

 思い掛けなくも、(IT'S A)MONSERS' HOLIDAYが流れてきて吃驚した。半世紀近く前になる高校三年の体育祭でのホームゲームの振付と選曲を担当した際に、当時のディスコブームに背を向けて、カントリー&ウエスタンとフォークダンスで構成したなかの一曲で、オープニングに持ってきた楽曲なのだ。西部劇好きでもあったから、最初に銃声から始めようと、映画館に音源を録りに行った覚えもある。

 銃声一発、怪物たちの高らかな笑い声と悲鳴で始めた選曲は、自分の趣味全開の遣りたい放題で、かなり顰蹙を買ったものの、クラスのなかでも押しの利く級友が「みんなぁ受験で逃げて押し付けちょいて文句らぁ言うな!」と一喝してくれた。そのことが嬉しくて後年の同窓会でその話をすると、まるで覚えておらず「俺もなかなかエエとこがあるじゃいか」と嬉しそうにしていたことを思い出した。そういう懐かしい時間のことを思い出させてくれる映画だったように思う。

 '70年代にヒットしたエルトン・ジョンの♪グッバイ・イエロー・ブリック・ロード♪は流れなかったが、オズの魔法使がテレビで流れ、黄色い煉瓦道が印象深く映し出される。テーブルテニスのテレビゲームも出て来ていたから、'70年代後半あたりが時代設定のような気がした。まさしく僕の十代後半と重なり、僕が独り暮らしを始めた時期とも重なる。人並みに“孤独”について想いを巡らせた覚えがある。

 また、ちょうど今、高校の同窓生から借りた漫画『博多っ子純情』を読み進めていたから尚のこと、そういったノスタルジックな気分を誘われたようなところもある気がする。ただ、ドッグが使っていた電動歯ブラシは当時、見掛けた覚えがないし、スティール・パンも後年になってからのようには思うけれども、ニューヨークでは既に普通に見かけるものだったのかもしれない。だが、けっこうスラム化の偲ばれたニューヨークの光景からは、'80年代のほうだったのかもしれないとも思った。

 ともあれ、一言の台詞もなく効果音と楽曲のみで、海水浴場の閉まる九月から始まった物語が、夢に見たドッグとの再会よりもラスカルを選択するロボットの意思で終えたことに少なからず意表を突かれつつ、大いに納得した。いい結末だと思う。

 するといちばん最後のほうのショーウインドーの左下のほうに1984の数字が見えましたから1984年設定だったようですね。選曲は素晴らしいものでしたね🙂とのコメントが寄せられた。僕は見落としていたが、'84年だとするとテレビゲームが少々古すぎる感じだ。だが、電動歯ブラシだったことを思うと、まだ早いくらいだ。僕はニューヨークには住んでいなかったが、同時代を過ごしているので細部に妙に反応してしまうのだが、♪(IT'S A)MONSERS' HOLIDAY♪が '70年代前半、Earth, Wind & Fire の♪September♪が '70年代後半なので、TVゲーム共々どうしても '70年代的なイメージのほうが強い。だが、そもそも本作はアメリカ映画ではなくて、エンドロールが英語ではなかったことに意表を突かれ、日本人スタッフの名(Yuko Harami だった気がする)が頻出することに驚いた。もはや製作国で映画を分類するのもナンセンスになってきたようにも感じる。
by ヤマ

'24. 1. 5. キネマM



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