『ディア・ファミリー』
監督 月川翔

 七年前に観た君の膵臓をたべたい響-HIBIKI-を観てその名を記憶した作り手による作品だから、安心して観られる出来栄えだったような気がする。

 学会の指導医も務める弟がダブルバルーン内視鏡を開発したのは、もう二十余年前になるが、当時はまだ講師だったような気がする。開発経緯に触れた十六年前の記事では既に教授になっているが、1997年に考え始めてから2003年秋の実用化まで六年くらい掛かっている。本作で坪井(大泉洋)がぶつかったような壁には、何度も当たっているのだろう。最初はまるで取り合ってもらえなかったと話していたような覚えがある。アイデアだけでは駄目ならと試作品を製作してやってみせたということだった。

 だからだろう、研究実績や研究予算の獲得が最優先で、保身のためには壁となって立ちはだかることに些かの躊躇いもない石黒教授(光石研)などへの呆れや苛立ちよりも、坪井の意を汲み、力を添える富岡(松村北斗)や桜田(満島真之介)といった若き医師たちの存在に救われる気持ちのほうが、強く湧いた。そして、福本莉子と鈴木結和が演じた次女・佳美の眼鏡っ娘ぶりがなかなか好かったように思う。実話を基にしているとのことだが、大した内助の功だと菅野美穂の演じた妻・陽子に感心した。

 まるでもう観たまんまという映画に他ならなかったように思うけれど、モノづくりの部分をわりと丁寧に撮っていた点と併せて、啓発映画臭をあまり感じさせない点が気に入った。
by ヤマ

'24. 7. 8. TOHOシネマズ3



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