| |||||
『愛獣 襲る!』['81] 『オフィス・ラブ 真昼の禁猟区』['85] | |||||
監督 黒沢直輔 監督 上垣保朗 | |||||
デビュー作を並べて日誌にしていたロマンポルノ女優の作品を続けて観た。先に観たのは、『天使のはらわた 赤い淫画』['81]で、我が“女優銘撰”入りをしていることに目を留め、泉じゅんの出演作として、デビュー作の『感じるんです』['76]に続いて映友が貸してくれた『愛獣 襲る!』だ。「襲る」で「やる」と読ませていた。御目当ての彼女は、とても綺麗な眼福の肢体だったが、物語的には何を描こうとしているのか実に焦点のぼやけた映画だったように思う。 時代設定もよく判らないまま、「BAR POLESTAR」と「Bar Star Dust」が並んだ佇まいに、何となく沖縄を思っていたら横浜だった。だが、土地柄が活かされるわけでもなく、マル暴刑事からヤクザに転身したらしき河村(小林稔侍)が遊(泉じゅん)の母親の死とどう絡んでいるのかも思わせぶりのまま宙に浮き、『トルコ110番 悶絶くらげ』で呆気に取られた益富信孝が存在感を発揮しつつ、ずりコケていっていた。遊が妹のルイ(野々村るい)に諭していた「女は上半身と下半身を断ち切らないと生きていけないんだよ」との強度の高い台詞が主題になっていたふうでもなく、妙にぼんやりした作品だったように思う。劇中で高校生だった遊が家を出て五年後に横浜に戻って来ていたが、奇しくも本作は、泉じゅんのデビュー作から五年後の映画で、彼女が二十五歳時分の作品だった。 翌日に観た『オフィス・ラブ 真昼の禁猟区』は、真昼とも禁猟ともまるで関係のない作品だった。赤坂麗がレストランに車で乗り付けて「田村理英子、車はアウディ」とボーイに告げて登場する、その芸名に相応しい当時のバブリーな導入部から始まったが、七歳にもなる娘がいる身とは到底思えない、勤め先の役員二人を手玉に取る掛持ち愛人契約を交わして身綺麗なシングルマザーを生きている設定だった。本社の社長の息子(草見潤平)に棄てられた形になっていたが、仕事にも有能で日蔭感を微塵もまとわず、性的にもタブーのない生き方を「依存心なき華麗でタフな女性像」として当時は造形していたのだろう。 掛持ち愛人契約がバレて、会社に居辛くなったようだったが、若い男性社員(石井茂樹)も魅了し、最後は二人の若者による二本差しを堪能した後、一人ベッドの布団に包まり、嫣然と笑みを洩らして眠りに就いた翌朝、リビングで雑魚寝をしたと思しき男たちが身支度をして出る姿に「さようなら」とベッドから声を掛けていた。最後の場面では、仕事帰りと思しきスーツ姿がグレーから鮮やかなブルーに制服も変わっていたから、どうやら転職をしたのだろう。娘との暮らしには、何らの変化も訪れているようにはなかった。 昨秋観た同年のデビュー作『高校教師 成熟』の日誌にも「なかなか魅力的な女優さんなのだが、なぜ一年余りで姿を消したのだろう。四十年近く前の公開時に『夢犯』(監督 黒沢直輔)と『美姉妹肉奴隷』(監督 藤井克彦)という最後の出演作二本を観ているだけだが、記憶に残るロマポ女優だった」と記しているが、見目麗しく艶技も色っぽいのに、残念なことだ。調べてみるとデビュー作の一年だけで六作品も出演しているようだ。 | |||||
by ヤマ '24. 3.19. TOEI.ch録画 '24. 3.20. DVD観賞 | |||||
ご意見ご感想お待ちしています。 ― ヤマ ―
|