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『ガール・ピクチャー』(Tytot Tytot Tytot)['22]
監督 アッリ・ハーパサロ

 十代の終わり頃というのは、悶々とすることの多い難儀な年頃だなと改めて思う。このいつになっても普遍的な題材を描いた作品は、僕の歳にもなれば、これまで繰り返し観てきた、日々更新されてきている、いわゆる「うまくいかない青春の日々」映画なのだが、現代フィンランド事情の一端を見せてくれるだけの興味に留まらない描出がされていたような気がする。

 それにしても、ミンミ(アーム・ミロノフ)とロンコ(エレオノーラ・カウハネン)の二人が交わす会話のなかで、観たいねと挙がっていた映画名がブルジョワジーの秘かな愉しみ['72]だったことに吃驚。加えて挙がったのが『今夏マリエンバードで』で、それ「去年」よ、ときっちり正されていた。本作は、2022年の作品だが、今の日本のフレッシュジュースバーで働く十代女性のいったい何人がルイス・ブニュエルやアラン・レネを知っていて、観たいと思ったりするのだろう。(たぶんフィンランドでも圧倒的少数に違いないと思ったりはするのだが…

 そして、エマ(リンネア・レイノ)を愛しく思えばこそ、自分との関係を逃げ道にさせてはいけないと突き放したミンミの心情を、落ちつけばきちんと汲み取ることのできる聡明さを備えているエマを映し出していたラストシーンを好もしく観た。

 また、登場する今どきの男の子たちのジェントルマンぶりにも大いに驚かされた。'70年代の日本の青春映画の男の子たちとの落差の大きさに唖然としてしまう。実のところは、どうなのだろう。また、枝豆がフィンランドでも「エダマメ」と発音されていて、ビールのつまみに焼き鳥とともに食されていることにも驚いた。その時々の風俗を映し出す映画の醍醐味を観るような思いだった。主題的には幾度となく繰り返されている物語であっても、必ずその時ならではのものが映り込んでいるのが映画だと改めて思った。
by ヤマ

'24.12.18. あたご劇場



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