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『パリのちいさなオーケストラ』(Divertimento)['22] | |||||
監督・脚本 マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール
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やはり音楽映画は、好い。ラヴェルのボレロで始まり終わる作品を観ながら、彼のボレロは本当に映画になる曲だなと改めて思った。観賞後、表の掲示板に貼り出されていたプレスシートを読んでいたら、ウーヤラ・アマムラの演じたアルジェリア系仏人女性ザイア・ジウアニは、こたびのパリ五輪閉会式で、自身の創設した楽団ディヴェルティメントを率いて演奏をしたとのこと。彼女の存在も楽団の存在もまるで知らなかったから驚いた。思えば、金権IOCに嫌気が差してオリンピックの開閉会式を僕が観なくなったのは、いつからだったろう。ささやかと言うのもおこがましい自己満足的な抵抗だが、気になる競技の放送しか観なくなって久しい。 劇中に登場した巨匠チェリビダッケ(ニエル・アレストリュプ)は、僕がクラシック音楽を少し聴き始めた'70年代に、録音音源のない「幻の指揮者」としてもてはやされていた覚えがあるが、劇中でもザイアの質問に答える形でそのあたりに触れていた。「バルドーと一晩過ごせるとして、それが写真だったらどうかね」というようなことを言っていたように思う。 '90年代にバルドーかと思ったが、彼の歳からすれば、むしろ然もあらんとなるわけで、この部分は実際の彼の発言だったのではないかと思うとともに、三十年前に上梓した拙著に「スクリーンにこだわると幅が狭くなるよと言われることもよくあるのですが、どうせ出会うのであれば、より深く体験として出会える出会い方を、映画とはしていきたいと思っています。文無し睡眠不足の腹ペコで絶世の美女とデートするよりも、体調万全懐具合もほどほどで可愛い娘と逢い引きするほうが、はるかに豊かで楽しい一夜が過ごせる出会いと言えるのではないでしょうか。」(P21)と記したことを想起した。演奏家にとってのオーケストレーションの持つ意味や指揮者の果たすべき役割と負担について、わかりやすく生々しく描かれている秀作だったように思う。本作では、世界で女性指揮者は6%。フランスでは4%とのテロップがあったが、日本女性では西本智実のほかに誰かいるのだろうか。 また、1985年にテレビ放送でボレロと出会ったザイアが十年後、パリの音楽院に高三で編入入学した時点から始まったドラマのなかで、彼女が「まっくろくろすけ」と平仮名で記されていると思しきTシャツを着ている姿が目に留まったが、1995年当時に既に『となりのトトロ』はワールドワイドでヒットしていたのだろうか。少なくとも『千と千尋の神隠し』は、まだ出来ていない時期だ。 | |||||
by ヤマ '24. 9.23. あたご劇場 | |||||
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