『迷い婚 -すべての迷える女性たちへ-』(Rumor Has It...)['05]
監督 ロブ・ライナー

 三ヶ月前に四十三年ぶりに卒業を再見した際に、後日譚があると教わった映画だ。正確には、後日譚そのものではなく、『卒業』のモデルとなった人々の後日譚で、うわさに基づくフィクションとクレジットされる、ちょいと洒落た作品だった。

 『卒業』の元になった騒動は'62年の出来事で、'63年に小説が出たときは一過的に終わった噂が、'67年の映画化作品の大ヒットによって三十年後の今も伝わることになっているという、1997年を舞台にした2005年の作であった。確かに'90年代の後半らしい“自分探し”ものだなと思いながら観ていたら、実際、台詞に「自分探し」というフレーズが出てきて膝を打った。

 東海岸から西海岸の郷里へ婚約者を連れて帰郷する機内でWanna have sex in the bathroom?(トイレでセックスしたくない?)と誘って弁護士のジェフ(マーク・ラファロ)を狼狽させる奔放さを祖母・母から譲り受けているサラ(ジェニファー・アニストン)が見舞われたマリッジ・ブルーのなかで婚約者の何気ない指摘から自身の出自を問い直す過程を経て人生は築くもの…彼とは冒険しかできないと確信した母と同じ確信を三十路半ばにしてようやく得るに至るという物語だった。随所にニヤリとさせられる引用や小ネタが仕込まれていて愉しい。

 それにしても、母娘丼なら知らぬでもないが、三代に渡ってベッドを共にする男という設定は、初めて観たように思う。ベンジャミン・ブラドックと同じイニシャルながら飛び級どころか中退だというボー・バローズを演じていたのが、当時、五十路のケヴィン・コスナーで、Mrs.ロビンソンのモデルになったという祖母キャサリンが当時、七十歳のシャーリー・マクレーンだったから、確かに勘定は合っている。『卒業』のベンとエレーンが予感もさせていたように、モデルとなった二人は結婚しておらず、思い残しを片付けておくべく挙式の前に、母のほうからボーの別荘を訪ねて行ったことになっていて、納得感があった。遠い昔に、似たようなことが卑近なところであったのを目の当たりにしているからだろう。

 他方で、新婚旅行中に不安に見舞われ切り上げてきた妹アニー(ミーナ・スヴァーリ)が祖母と母と関係を持ったボーと寝てきたと姉から告げられて吹っ切れることには、いささか唐突感が拭えなかったが、案外、そういうものなのかもしれない。サラと和解したジェフの僕たちに娘が出来たら、ボーには絶対に会わせないことにしようとの台詞がけっこう可笑しかった。
by ヤマ

'24. 7.14. BD観賞



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