『ソルジャー・ボーイ』(Welcome Home, Soldier Boys)['72]
監督 リチャード・コンプトン

 パッケージの帯に「ベトナム帰還兵を描いた先駆的作品」と記されたレンタル落ちDVDを高校時分の映画部長から借りたのは、ソルジャー・ブルー』と『小さな巨人が課題作として取り上げられたときだったように思うが、もう定かではない。冒頭のタイトルバックで流れるナレーションによる、除隊したら社会に適応するのだとの訓示に添えられた軍の教育が役立つと確信するとの言葉が痛烈に効いてくる作品だ。

 十三年前に三十余年ぶりに再見した、本作から六年後の作品ディア・ハンター['78]の日誌ベトナムからの帰還後、出征前の自分には戻れない自分になっていることを思い知らされたマイケルと記したような意味合いでの特別な絆というか腐れ縁で結ばれた四人の軍隊仲間が、共に過ごせる夢を牧場経営に託してカルフォルニアに向かうロードムービーだった。確かに6200ドルの中古車を5500ドルに値切るうえでは、軍の教育が荒っぽく役立ってはいたように思うけれども、始まって早々に行きずりの女(ジェニファー・ビリングスリー)を死なせた展開に、ハッピーエンドが訪れはしない映画の結末が約束されたように感じた。俺がしてきたことは殺しだと零していた帰還兵のダニーことダニエル・バレット(ジョードン・ベイカー)においては、113人分の1人くらいの痛みというか、苦み程度でしかない様子が強烈だった。

 酒場でのトラブルでの不当とも言える留置場送りによって同房になったクリス爺さんがどうしてキッド(アラン・ヴィント)の大事にしていた写真と同じものを持っているのかと訝しんだが、所持金ともども盗まれていたのだった。そのうえ、ボッタクリの修理屋に1400ドルも巻き上げられて文無しになっても、あれだけの銃器を隠し持ち、手放せなかった若者たちが、ベトナムから帰還してきても居場所のない放浪の挙句にヤケクソとも思える暴挙に出たなか、道中では実に冴えなかった連中が、戦闘になると活き活きとしてくる姿が哀れだった。親父の夢に踊らされてきたのかとのダニーの台詞に言う“親父”というのは、帰還した息子に普通に就職してうまく立ち回って自分のように昇進しろと言っていた実父のことではなく、若者たちを戦場に送り込んだ“アメリカ”のことなのだろう。神よ、照覧あれだ。
by ヤマ

'24. 4. 9. DVD観賞



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