『ひと夏の体験 青い珊瑚礁』['81]
『ラブ&ポップ』['98]
監督 池田敏春
監督 庵野秀明

 女子高生の性意識を捉えた四半世紀前の映画と四十余年前の映画を奇しくも併せ観る機会を得た。

 先に観た日活ロマンポルノ『ひと夏の体験 青い珊瑚礁』は、先ごろ観たばかりの私の奴隷になりなさい 第2章・第3章['18]で明乃を演じた行平あい佳の実母である寺島まゆみが主人公の女子高生千秋を演じている作品だ。ヴァージンを卒業したいと思いつつ「あげる」のも「捨てる」のも何か違うと感じてボーイフレンド正彦に「売る」ことを思いつきながら中断したまま、沖縄旅行に出て先達女性たちのセックス恋愛事情を観てわかり始めたこととわからなくなったことがあると実感しつつ、卒業していく話だった。

 珊瑚礁は青くなくて白かったが、白い肌は焼けて少々痛々しくもあったなか地元民ミサコを演じた朝霧友香はきっちり小麦色の肌だったことに感心した。そんなに難しくないのよ、男と女。欲しけりゃ獲るのと言っていたのは、若者二人を侍らせて全裸の日光浴をしながら全身隈なくオイルを塗らせていた別荘の女(志麻いづみ)だったか。東京から追ってきたアサミ(倉吉朝子)とも地元のミサコとも浜辺で交わり、千秋からも熱い眼差しを送られていた昇の一体どこがいいのかさっぱり不明だったが、千秋に呼ばれて沖縄まで訪ねてきて正彦が念願を果たした際に、砂浜に敷いた青い珊瑚礁ならぬ布地に真っ赤な染みが拡がっていることに感激している彼に驚きながら、実は一足先に卒業していたのに、たまたま持っていた赤ペンのインクがもたらした誤解にほくそ笑んでいるラストが、いかにも当時の時代感覚を表していたような気がした。


 そこから十七年後の、バブル景気も経た1997年の援交JKを描いた『ラブ&ポップ』では、もはやヴァージニティなど話題にも上らない。売るのは前提で、何をどこまで売るかについての逡巡が描かれていた。裕美(三輪明日美)に私、何度か最後まで行ったことがあるんだぁと告げていたチィちゃんを演じていたのが仲間由紀恵で目を惹いた。彼女たちが使っていた伝言ダイヤルは、今でも災害用のもの以外でも使用されているのだろうか。裕美が小まめに撮っていたのがデジカメではなくて、写真にもお金の掛かっていた時代を描いた作品であり、「監督 庵野秀明(新人)」とクレジットされ、掛川(平田満)が愛唱していた神田川の世界をJKがチョーウルトラスーパーベリーバッドと評し、気に入った128,000円のインペリアル・トパーズの指輪の代金を数時間で稼ごうとしていた時分の映画だ。

 ダンス好きのサチ(希良梨)、猫好きのゲイ男(渡辺いっけい)から預かった携帯電話に若い男を釣る伝言をたくさん入れるよう頼まれていたナオ(工藤浩乃)たち四人の女子高生以上に目を惹いたのが、彼女たちに少なからぬカネを払っていたオヤジと呼ばれている男たちの造形だった。最初のしゃぶしゃぶ男(モロ師岡)にしても、手料理を女子高生に食べさせたいエプロン男(吹越満)にしても、女子高生が咀嚼したマスカットの標本蒐集に精出していた掛川にしても、ビデオ屋に随行させてからAVコーナーでズボンのポケットに引き込んだ裕美の手を使って射精を手伝わせていた上原(手塚とおる)にしても、携行したぬいぐるみを取り出して絶えず話し掛けていた説教男(浅野忠信)にしても、かなり軌道を外れているけれども、モデルとなった人物が実際にいるのだろうと思わずにいられない実在感があって、なかなか気色悪かったように思う。

 きっちり軌道を走って周回する親父ホビーの鉄道ジオラマに始まり、両側高くコンクリート壁の聳え立つまるで軌道のような水路をあの素晴らしい愛をもう一度の流れるなか、ひたすら歩き続ける四人の女子高生で終わる作品を観ながら、彼女たちの人生の軌道は、この後どうなっていたのだろうと思ったりした。
by ヤマ

'23. 3.30. GYAO!配信動画
'23. 3.31. GYAO!配信動画



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