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『ロゼッタ』(Rosetta)['99] 『EO イーオー』(EO)['22] | |||||
監督 リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ 監督 イエジー・スコリモフスキ | |||||
奇しくもロベール・ブレッソン監督作に縁のある新旧の映画を続けて観た。先に観たのはダルデンヌ兄弟の旧作『ロゼッタ』だ。出張で上京した際に寄ったアテネフランセ文化センターで、たまたま訪れたビターズエンドの定井さんから強く押されるとともに、ダルデンヌ兄弟は追っ掛けますからねと言われたのは、もう四半世紀近く前のことになる。以来、高知で上映された際には日が折り合わず、宿題になったままの作品を今頃になってようやく観たわけだ。 全身から怒りを放射しながら足早に移動する若い女性を追うカメラに、『午後8時の訪問者』以来の六年ぶりになるダルデンヌ節の原点を観たような気がした。この時分には、まだヤング・ケアラーという言葉はなかったけれども、ロゼッタを演じたエミリー・ドゥケンヌは、当時十八歳くらいだったようだから、ぎりぎりヤングケアラーと言えそうな気がする。若者らしい頑なさとぎこちなさが実に痛々しい映画だったように思う。 翌々日に観たのは、スコリモフスキ監督による『EO イーオー』だ。監督がインスパイアされたと言っているらしいブレッソン作品『バルタザールどこへ行く』['66]を『抵抗』['56]、『ロゼッタ』と繋がりがあるように感じられる『少女ムシェット』['67]とともに、三十年近く前に自分たちで上映したのだが、画面に漲る緊張感の高さに瞠目した覚えがある。 その点においては、本作も相当なものだと思ったが、ロバの目に映った人の営みが描かれるかと思いきや、ロバの観ていない殺人事件や大自然の血流を思わせるような山中の水の流れ、空撮風景、スクラップ置き場でのクレーン作業などが現れて面食らった。 マグダとも呼ばれていたように思うカサンドラ(サンドラ・ジマルスカ)から「イーオー」と呼ばれていた、ロバの名前の意味が何なのか不明だったが、ロバがイーオーと呼ばれると、くまのプーさんのイーヨーを想起し、象徴性の高い作品でイーヨーと言えば、大江健三郎を想起したりしないではいられなかった。作品タイトルにまでしている名前に対する作り手の意はどこにあって、ポーランド語で「イーオー」が何を意味しているのか知りたいと思った。 | |||||
by ヤマ '23. 9.22. BS松竹東急土曜ゴールデンシアター録画 '23. 9.24. あたご劇場 | |||||
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