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『女はそれを我慢できない』(The Girl Can't Help It)['56] | |||||
監督 フランク・タシュリン
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一週間ほど前に『不死身の保安官』を観た際に「名のみぞ知る『女はそれを我慢できない』を是非とも観たくなった」と記していた作品で、僕が生まれる二年前になる六十七年前の映画だ。いかにも戦後アメリカの黄金期に相応しいマッチョな緩さと明朗な楽天さが横溢していて愉しい。 『七年目の浮気』['55]の翌年に、同じトム・イーウェルの相手役をマリリンからジェーン・マンスフィールドに替えて、同じようにダイナマイト・ボディを持ち、マリリン以上に胸と尻を強調するウェストの締め付けを施していたジェーン扮するジェリー・ジョードンことジョージアナという女性は、彼女を目にした男の手が大きな氷塊を一瞬にして溶かし、朝配達される瓶詰牛乳を沸き立たせ、眼鏡レンズをひび割らせる程にホットな魅力に溢れているにもかかわらず、素直な気立ての良さをマリリン同様に印象づけていて、あまつさえ家庭的であることをアピールしていたように思う。 ジェーンがマリリンの若き死から五年後に、マリリン以上に若い歳で不慮の事故死を遂げてはいなかったとしても、マリリンには及ばなかった気がするものの、『不死身の保安官』でのケイトとはまた違って、可愛らしくて魅力的なジェーンを堪能できたように思う。だが、キャラクター的には、ケイトのほうに惹かれるように感じた。 本編で落ちぶれた芸能エージェントに扮するトム・ミラー(トム・イーウェル)が、本作はモノクロ・スタンダードではなく、シネスコ・カラー作品であることを強調していた冒頭で「主役は音楽だ」と言っていたように、僕にも覚えのある、エディ・コクランやプラターズ、リトル・リチャードといった当時、流行していたロックンロールの歌曲を当人たちによる歌唱で映し出し、かなり丁寧に長く見せていた。そのようななか、最も目にも鮮やかだったジュリー・ロンドンの歌う♪クライ・ミー・ア・リバー♪が懐かしくも気に入った。 また、ジェリーを何とかして売り出そうとする、今や忘れられた暗黒街の顔役で賭博の帝王だったファット・マーティことマードック(エドモンド・オブライエン)と、落ち目になっても離れていくことのなかった腹心マウシー(ヘンリー・ジョーンズ)の人物造形が気に入った。スターになることよりも結婚して子沢山の家庭を持つことのほうを求めるジェリーの夢が叶う、いかにも強引なハッピーエンドに向かう立役者になっていた。ところで、ジェリーが最後に歌っていた声は、誰のものだったのだろう。 推薦テクスト:「やっぱり映画がえいがねぇ!」より https://www.facebook.com/groups/826339410798977/posts/5861426593956875 | |||||
by ヤマ '23. 7.19. DVD観賞 | |||||
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