『“if....”もしも‥‥』(If....)['68]
監督 リンゼイ・アンダーソン

 これが『“if....”もしも‥‥』か。知恵と分別を謳い上げる箴言で始まり、煙でいぶりだされた人々への銃乱射で終えて、観る者を煙に巻いているような作品だった。

 第一章「学寮 休暇明け」に映し出された寮内には、ジェロニモやゲバラ、毛沢東らの写真が貼られていたり、ヌードを含むピンナップが壁に留められていたけれども、政治や性事にまつわる'60年代の青春の放埓と暴力性を描いた作品としては、先ごろ観たばかりの青春残酷物語』や『青葉繁れるのほうが、遥かに魅力的に映し出されていたような気がする。

 ただイギリス映画だけあって、アングロサクソン文化の獰猛さの原型を観たように思う。力による支配と反逆、規律性への従順と反発の仕方に、現世界における矛盾と混乱を引き起こしている根底にある“アングロサクソン文化による欺瞞と横暴”が、とりわけ透けて見えてくるような気がして、五年前に読んだ日本型資本主義と市場主義の衝突 日・独 対 アングロサクソン'01]<東洋経済新報社>を想起したりした。そして、本作の最終章である、第八章の章題になっていた十字軍こそ、アングロサクソン文化における欺瞞と横暴の象徴のような気がした。

 それにしても、各章に現れた唐突なパートモノクロ画面に込められていたものは、何だったのだろう。さっぱりピンと来なかったが、第二章「学校 授業開始」で映った木に登って休むライオンの写真から降りてきた猛獣の愛咬のようにして始まった、第四章「儀式とロマンス」での、寮友からガイ・フォークスと呼ばれる反逆児ミック(マルコム・マクダウェル)とカフェ店員(クリスティン・ヌーナン)が全裸で縺れ合う場面は、彼女の豊満な肉体さながらに、なかなかインパクトのあるモノクロ場面だったように思う。

 ミックがカフェの女店員らも引き入れて銃乱射を行なっているカラー場面には既視感があったけれども、全編を観たのは初めてだ。まさかラストシーンだとは思わなかった。

(各章題)
 第一章「学寮 休暇明け」、第二章「学校 授業開始」、第三章「新学期」、第四章「儀式とロマンス」、第五章「規律」、第六章「抵抗」、第七章「いざ戦いへ」、第八章「十字軍の兵士」




推薦テクスト:「お楽しみは映画 から」より
http://takatonbinosu.cocolog-nifty.com/blog/2018/08/if-566a.html
推薦テクスト:「八木勝二Facebook」より
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AZma8P77qVVpCFn8UMWnnkBLei5bmfM4LEUatQPyb3l

by ヤマ

'23.11.12. BD観賞



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