『ワイルド・アパッチ』(Ulzana's Raid)['72]
監督 ロバート・アルドリッチ

 アパッチ族の戦士が白人に対して行う残虐行為が、かくも生々しく描かれる西部劇は初めて観たような気がする。

 聖職者の息子ながら跡を継がずに、騎兵隊将校になりはしてもキリスト教的愛の教えが身に馴染んでいて、インディアン憎しの思いに駆られる部下たちには違和感を覚えていたはずの若きデ・ビュイン少尉(ブルース・デイヴィソン)が、その残虐な振る舞いを目の当たりにして、疑問から次第に憎悪の念に転じていこうとしていたときに、ベテラン斥候兵と思しきマッキントッシュ(バート・ランカスター)が言っていた水がないからと言って砂漠を憎むか? 恐れて生きるほうが賢いとの言葉が妙に響いてきた。彼は、サン・カルロスのインディアン保留地を脱走したウルザナたちの追跡を命じられていた型破り兵という位置づけだったが、もう一方の頬を出そうなどという兵など一人もいないと言っていた軍曹(リチャード・ジャッケル)の配置とのバランスがよく、加えて、全編通じて一言も言葉を発しないまま繰り返し登場していたウルザナの存在が効いていたように思う。

 それにしても、自分の妻とウルザナの妻が姉妹関係にありながら、ウルザナを追い詰め、仕留めていたアパッチスカウトのケ・ニ・ティ(ホルヘ・リューク)の内心は、いかなるところにあったのだろうか。少なからぬ恩義をマッキントッシュに負っているような気がしてならなかった。そのあたりの事情は、作中では明かされなかったが、マッキントッシュの妻がアパッチ族の女性であることと、何かしら繋がりがあるような気がした。

 先住民女性を妻に持つ男の西部劇は、折れた矢['50]にしても、ガンヒルの決斗['59]にしても、大いなる勇者['72]にしても、なかなか興味深かったが、本作もまた、なかなかの出来映えだと思った。
by ヤマ

'23. 1.31. BSプレミアム録画



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