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『折れた矢』(Broken Arrow)['50] | |||||
監督 デルマー・デイヴィス
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これがかの『折れた矢』かと思いつつ初めて観たが、時節柄、とりわけ感銘深いものがあった。原題の「Broken Arrow」は、折れた矢などではなくて、強い意志を以て“折られた矢”だった。矢を折り、「和平協定を破るなら、白人のほうだ、悪者にはならない」と決意を露わにしていた誇り高き族長コチースが実にかっこよく、演じていたジェフ・チャンドラーが、完全にジェームズ・スチュワートを食っていたように思う。 単身アパッチ族の本拠地に乗り込み、コチースから勇者と認められ、彼に「愚か者は今日しか見ないが、貴方は明日が見える人だ」と説いて、白人とアパッチ族の和平協定(字幕では「条約」となっていたように思うが…)の御膳立てを果たした元騎兵隊のトム・ジェフォーズ(ジェームズ・スチュワート)も、なかなかの人物だったが、夜明けを告げる“朝の星”を意味する名のアパッチ族の娘ソンシアレイ(デブラ・パジェット)とのロマンスに恵まれていた分、ずっと凛とした佇まいを貫徹させていたコチースに抜かれた兎のようだった。和平協定のもう一方の当事者で、クリスチャン将軍の異名を持つハワード将軍に対して言った「聖書も読み方次第だ」という台詞も含蓄のあるものだったが、コチースの際立った存在感に圧倒されていたというのが実のところかもしれない。 ハワード将軍が言っていたとおり「(守る)意志がなければ、協定など弱いものだ」というなかにあって、トムが堪えきれなくなる反和平陣営による造反が双方の側において生じても、「私はコチースだ、民と子供を裏切らない」とトムを諫めていた。そのコチースの指導者としての器量と矜持を是非とも学んでほしい為政者のなんと多いことか。 | |||||
by ヤマ '22. 4.24. BSプレミアム録画 | |||||
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