『LOVE LIFE』
監督・脚本・編集 深田晃司

 元カノ山崎理佐(山崎紘菜)が抱いている罪悪感にほだされてキスを交わす夫の二郎(永山絢斗)にしても、家出した元夫の困窮を見かねて義父母の残した向かいのマンションに密かに住まわせる妻の妙子(木村文乃)にしても、子連れのおそらくは年上女性と結婚した息子に対して屈託を抱く両親にしても、実にややこしく一筋縄ではいかない関係が描かれる家族の物語だったように思う。そして、その腐れ縁的な厄介な関係が、まるで日本と韓国の関係そのものを暗示しているような気がした。

 聾者の元夫パク・シンジ(砂田アトム)を追って韓国に渡った妙子が、パクの息子の野外結婚披露宴中に降ってきた雨に、上半身だけでの小躍りを続けながら打たれている後ろ姿が延々と映し出されていた。彼らの関係も日韓関係も、妙子が打たれていた雨のように綺麗すっぱりと“水に流せる”ものではない経緯を抱えた関係なのだけれども、エンディングショットで、共に寄り添い歩いていた大沢夫妻(永山絢斗・木村文乃)のように歩んでいかなくてはいけないのだろうと思う。そして、理佐が言っていた真っ直ぐ眼を見つめ合った対話をしなければいけないわけだ。

 にしても、四年前の二歳の時に別れたきりで、姓も変わっている息子を、いくら顔写真が掲載されたからと言って、葬祭会場を訪れるほどに我が子と確信できるものなのだろうかと、ふと思った。パクさん、凄い。だが、考えてみれば、妙子と入籍しても連れ子の敬太(嶋田鉄太)とは親しみつつも入籍せず、養子にはしていなかったのだから、喪主となる妙子の名とセットで報じられれば、心当たりを得てもおかしくはない気もする。

 だが、夫の二郎のほうはまだしも、妙子の心境がどうにも量り兼ねた。パクでなければ駄目なのだとの禊の入浴を見届けるよう求めていた場面など、その最たるもので何とも観念的な尤もらしさに妙な拵え感を覚えて興醒めた。山崎理佐と二郎の父誠(田口トモロヲ)も、妙に不可思議な人物だったような気がする。人物配置にしても、展開にしても、いかにも取って付けた感じが否めなかった。先ごろ四十年ぶりに再見した愛の嵐['73]と似た“観念的に創り上げた頭でっかち感”が強いように感じた。だが、時代のトレンドを狙って当てた感のある『愛の嵐』と違って、『LOVE LIFE』には、願いと志の籠っている点がいい。

 ただ本作のポイントは、ややこしい関係と難儀なコミュニケーションなのだから、観辛くなるのは仕方のない面があるとはいえ、人物造形はもう少し何とかならなかったのだろうか。理佐の表白した罪悪感の根本は、何だったのだろう。何だか本作に“罪悪感”というキーワードを盛り込むために設えられた人物像のような気がした。誠にしても、敬太の生前と亡くなってから後での人物像の変貌ぶりに、まるで二郎の母明恵(神野三鈴)の人物像を際立たせるために設えられたもののような気がするほどに違和感があった。そうではあっても、明恵は人物造形は、とても好かったように思う。
by ヤマ

'22. 9.13. TOHOシネマズ2



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