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『ホームレス理事長~退学球児再生計画~』['13] | |||||
監督 圡方宏史
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なかなか痛烈な作品だった。野球部の池村監督が言っていた「理事長としては、…アホやと思いますよ。けど、一方で物凄うレベルの高い人」との言葉が、ず~んと効いてくる作品だったように思う。 手元にあるポレポレ東中野で上映されたときのチラシには、2013年作品とあるが、エンドロールも終わって黒字画面になったところで現れた「あれから3年」というのは、映画版が公開された2016年に添えられたものなのだろう。池村監督が2014年に死亡したこと、支援企業が現れたこと、ルーキーズの監督を経験者である理事長が兼ねるようになっていること、2016年の卒業生は14人で、7人が大学で野球を続けていることなどを記していたから、作中で課題になっていた利用者の確保と法人の財務改善が果されたということなのだろう。 作中で資金難から窮地に追い込まれ、理事長個人宅の電気水道ガスを止められるばかりか、家賃滞納で住居を失い、ネットカフェ難民になりつつ金策に追われていた山田理事長が「筋違いは重々承知ですが…」と東海テレビの撮影クルーに駐車場で土下座して、午後3時までに繋がなくてはならない資金の借金を申し入れて断られていたが、当日の借金に応える以上の力添えを2014年の放映によって得たのだろうと思った。四隅を取らせたうえで勝つ逆転オセロに熱心に挑んでいた山田理事長に相応しい顚末が「あれから3年」として実っていることに感銘を受けた。 本作から七年後に自社にカメラを持ち込んだ『さよならテレビ』['20]では、取材対象とした派遣社員の派遣切れに際し「個人的に…」と頼まれた借金に応じ、映し出していた圡方監督において、応否の境目は何だったのだろう。七年の時を経てラインが動いたのか、ラインは変わらないまま応否の結果が違ったということなのか、非常に興味深いところがあるように感じた。 チラシには、名古屋での放映後、東海テレビに多くの声が寄せられたことも記され、「理事長への激励とあまりの無策ぶりへの侮蔑。真逆の反応の数々。そして、もっとも激しかったのはチームを率いる池村英樹監督が選手にビンタ9連発をする場面を映したことへの反発だった。」とあり、どこを観ているのやらと実に嘆かわしかった。そして「そんな訳で、フジテレビも本作の放送を謝絶した。」とあった。なんともはや。 本編の最後に収められていた中退球児たちの入部時とは打って変わった晴れやかな表情や、池村監督に勇退を求めるに至ったことの説明会での保護者たちの声の雄弁さよりも、一場面への囚われが優先されてしまうのだろう。チラシには「しかし、今の社会を映し出している。だからホントは何が問題なのか、全国の映画館でいっしょに考えてみたい。少しばかり大らかに。」と締められていた。同感だ。 | |||||
by ヤマ '22. 5. 4. 日本映画専門チャンネル録画 | |||||
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