『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
 (Once Upon A Time In... Hollywood)['19]
監督・脚本 クェンティン・タランティーノ

 スクリーン観賞するつもりが予期せぬ打ち切りで観逃していた本作を、十日余り前に観たアムステルダムでのマーゴット・ロビーが気に入って観たくなっていたら、折よく無料配信されていて飛びついた。55インチの有機テレビでCMも挟まれずに部屋の灯を落として観たから、なかなかの儲けものだった。

 奇しくも、二日ほど前に観たばかりのザリガニの鳴くところで事件が起こっていた1969年を描いた作品で、モハメド・アリがまだカシアス・クレイと呼ばれていて、遠い昔に僕が『アメリカン・グラフィティ』['73]を観て初めて知ったような覚えのあるドライブ・イン・シアターが人気のあった時代というわけだ。

 画面サイズやらモノクロ・カラーの使い分けのみならず、いかにも映画オタクらしいタランティーノ作品に相応しく隅々まで凝りまくった画面に眼福を覚えながら観たが、さすがに2時間41分は長すぎて少々倦み始めていたところに、なんで?という顚末が最後に現れて驚いた。シャロン・テート(マーゴット・ロビー)に思い入れのあるタランティーノの叶いようのない願望表現ということなのだろうかとSNSに記していたら、あの事件によって語ることが憚られるようになった69年夏とシャロン・テートへの「悪魔祓い」の映画だというコメントを寄せてもらった。成程、そういう思いも込められていたのかもしれない。

 それはともかく、わずか八歳の子役少女トルーディ(ジュリア・バターズ)からあんないいお芝居観たの生まれて初めてよと言われて感じ入っていた、落ち目俳優リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)とその専属スタントマンからお抱え運転手になっているクリフ・ブース(ブラッド・ピット)の相棒関係のイーヴンな感じがなかなか好もしく、スティーブ・マックイーン(ダミアン・ルイス)やブルース・リー(マイク・モー)の醸し出していた雰囲気のそっくり感に、ニンマリした。作中に描かれた『サイレンサー/破壊部隊』でブルース・リーがシャロン・テートに格闘指導していたエピソードは、実話なのだろうか。

 そして、プレイボーイ・マンションのパーティでの鮮やかな黄色のへそ出しルックで踊っていたマーゴット・ロビーが目を惹き、マンソン・ファミリーのスクィーキーを演じていたダコタ・ファニングに対して、今やこういう役どころになっているのかと驚いた。彼女もきっと、まさにリックの抱えていた苦悩と憂鬱を負っているのだろうと思わずにはいられなくて、トルーディのキャラクターは、ダコタから着想されている気がしてならなかった。

 ブラッド・ピットのラリった演技と、レオナルド・ディカプリオの情けなさ全開演技が良かったというコメントも寄せてもらったが、確かにブラッド・ピットは、なかなかの儲け役だったように思う。リックが自分の台詞忘れに対して、三、四杯で止めておけばよかったのに、なぜ八杯も飲んだと自分に怒り狂っている場面のレオナルド・ディカプリオもよかった。
by ヤマ

'22.11.25. abema.tv.



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