『また、あなたとブッククラブで』(Book Club)['18]
監督 ビル・ホルダーマン

 ダイアン(ダイアン・キートン)が、自分は1951年生まれだと言っていた2018年作品だから、六十七歳の役どころとすれば、半年後には六十五歳になる僕とほぼ同世代となる。加えて、月例二回の映画合評会を五人くらいで楽しんでいることもあって、本作の女友達四人で毎月一回の読書会に集まっているという設定に親近感が湧いた。それだけに、彼女たち四人における色づき具合のほどが興味深く、かなり面白く観た。

 前回のデートで妊娠したと揶揄されていたダイアンが四十年連れ添った夫と死別して一年ほど経った後に、小6の時の思い出深いファーストキスでの“掌で顔を包み込むキス”を、今度は自分がミッチェル(アンディ・ガルシア)に施して「幸せを恐れるな」と新たな人生に踏み出す物語を観ながら、いかにもアメリカ的な恋愛賛歌であるところに、不変のアメリカン・ビューティを想起して感慨深かった。

 立派なホテルのオーナーとして成功し今なお現役で浮名を流しているらしきビビアンを演じたジェーン・フォンダが1937年生まれで、十八年前に離婚した夫トムが若い娘と婚約したことに動揺し、マッチングアプリに出会いを求めたりしていた連邦裁判事シャロンを演じたキャンディス・バーゲンがダイアン・キートンと同じ1946年生まれ、夫ブルース(クレイグ・T・ネルソン)との半年余りのセックスレスに煩悶しているキャロルを演じたメアリー・スティーンバージェンが1953年生まれであることを思うと、1958年生まれの僕は、ひたすら感心するほかない心身の若々しさに恐れ入った。

 いつもとは趣向を変えてと、キャロルが読書会に採り上げた小説が『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』だったことに最初は失笑を洩らしたが、恥をかいた、恥をかかせた、恥ずかしいという台詞が頻出するコメディを観ているうちに、還暦も過ぎ、熟年期に至って老いも感じている人々における恥とは何かを描いた作品であり、尚且つ、'51年型セスナ機にミッチェルが飛行機嫌いのダイアンを乗せて言わば調教することで彼女を新たな世界へと導く話になっていたことに納得感が湧いた。

 映画化されたフィフティ・シェイズ・オブ・グレイ['15]のみならず、原作小説も既読だと思っていたけれども、読書記録には見当たらなかったから、どうやら記憶違いだったようだ。映画化作品とは出来が異なるのかもしれないが、三部作の続編たる「ダーカー」や「フリード」についてはダイアンたちと違って、映画化作品すら追う気になれなかった覚えがある。

 そして、トップガン マーヴェリックではkawasakiだったバイクがHONDAに替わって、奇しくも忌野清志郎の雨あがりの夜空にを想起させていたブルースが、キャロルを後ろに乗せて颯爽と走駆していた姿に窺えた、必要なのは妻がビールに忍ばせたバイアグラなどではなく、自分の手で修理し蘇らせた“自身への自信と手応え”なのだという実に真っ当な顚末に頬が緩むとともに、If Not for Youが作者のボブ・ディランによる歌唱で登場していたのが、いかにもあの頃世代を描いた作品という感じがして好もしかった。シャロンの愛猫の名がギンズバーグだったのは、彼女が法曹だけに、やはりRBGから来ているのだろうか。




推薦テクスト:「やっぱり映画がえいがねぇ!」より
https://www.facebook.com/groups/826339410798977/posts/4671129702986576/
by ヤマ

'22. 8. 8. CSムービープラス録画



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