『南部の反逆者』(Band of Angels)['57]
監督 ラオール・ウォルシュ

 西部劇のつもりで録画したのだけれど、なんと舞台はケンタッキー州だった。マンティことアマンサが少女時代の1853年から始まりながらも序章にすぎず、本編はアマンサが大人になり、心を寄せたセス(レックス・リーズン)がリンカーンの大統領選の応援演説を依頼されたということだったから、1860年という、時代的には西部開拓時代に入り始めた頃と重なってはいた。しかし、専ら南北戦争と黒人差別を時代背景にした物語だ。

 白い肌を持ったカラード女性の葛藤を描いていた点では、先ごろ観たばかりの悲しみは空の彼方にに二年先立つ作品となるわけで、BSプレミアムの番組編成としては“狙った線”だったのかもしれない。父親の死により思い掛けなく黒人種とされ、奴隷市場で売りに出されたアマンサ(イヴォンヌ・デ・カーロ)に訪れた数奇な人生が描かれていて、思いのほか観応えがあった。

 その奴隷市場でアマンサを破格の指値5000ドルにて一発で競り落とした大農園主ヘイミッシュ・ボンドは、いかにもクラーク・ゲーブルらしい役どころで、よく似合っていたように思う。「自己抑制は男の喜び」などと少々怪しげな見栄を張っていたセスがアマンサから「偽善者!」と吐き捨てられるに至る場面の運びの乱暴さには、再びボンドに向かわせるためとはいえ、少々鼻白んだが、ラウルー(シドニー・ポワチエ)やアマンサが育ての親の白人から教育を受け、自我と自尊心を育んだことによって葛藤が深くなり、思い迷う姿が目を惹いた。

 それにしても、北軍兵士はどれもこれもろくでなしだった。勝てば官軍としたもので、北軍は解放軍的な描かれ方をすることが多いけれども、軍隊なるものの戦地での有体というのは、こうしたものなのだろうと、このところ日々、繰り返されているロシア軍のウクライナでの行状報道を思ったりした。
by ヤマ

'22. 4.14. BSプレミアム録画



ご意見ご感想お待ちしています。 ― ヤマ ―

<<< インデックスへ戻る >>>