『翔んだカップル オリジナル版』['83]
監督 相米慎二

 相米監督作品は遺作の『風花』を含めて8作品観ているが、初監督作の『翔んだカップル』は、本作も '80年公開版もともに観ておらず、宿題として置き去りにして来ていたものだ。そうなってしまったのは何故だろうと思っていたが、田代勇介(鶴見辰吾)のキャラクター表現に少々苛つきながら今回観てみて、学生時分に同時代で連載漫画を目にしていたときからそれが気に入らなくて、映画化作品も見送ったのだったことを思い出したような気になった。

 NHKでの放映で本編開始前に「一部配慮すべき表現」があるけれどもとの断りがあったのは、無論そのことを指しているはずもなく、本作にそういう物言いや場面がありそうには思えなかったのだが、おそらくは川べりでの放尿にぼかしをかけていたシーンのことなのだろう。そこから妙な感じの逆さま映像に転じていくカメラワークや空飛ぶ鯨、ちょっとしたアクションや人物が絡む場面などの随所に、妙にあざとい映し出し方があって、相米ファンにはそこがたまらないのだろうが、僕には些か小五月蝿く感じられた。

 僕が観ていた8作品のなかで気に入っているのは、『夏の庭』『お引越し』『台風クラブ』『魚影の群れ』だが、映画日誌を綴っている作品は、'86年に観た台風クラブとその前年に観たラブホテルの二つしかないから、相米監督作品と僕の相性があまりよくないのかもしれない。

 しかし、本作はそういう相性よりも、田代勇介の物言いや振る舞いの幼稚な未熟さに愛嬌のないところが、余り面白くは観られなかった一番の原因のように感じられた。山葉圭(薬師丸ひろ子)と杉村秋美(石原真理子)とボクシングに挟まれれば、あの年頃ならずとも右往左往するであろうことは、なにも後の玉置浩二のことを想像せずとも容易に察せられるところではあるので、そのことが気に障るのではなくて、専ら勇介のいかにもエラそうな物言いや振る舞いの幼稚さにうんざりしていたように思う。
by ヤマ

'21. 7.17. BSプレミアム録画



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