『2001年:宇宙の旅』(2001:A Space Odyssey)['68]
監督 スタンリー・キューブリック

 二十年前の2001年に、初見はスクリーン観賞でと、二十年待って観た作品を二十年ぶりに再見する機会を得た。改めて色彩設計の素晴らしさと画面構成の見事さに感心したのは、ブルーレイ・ディスクゆえの鮮やかさということがあったかもしれない。

 二十年前に観たときは、“out of order”としての狂気に目が向いたが、今回の観賞でとりわけ目に留まったのは、“円環イメージ”だった。ディスカバリー号の中を歩く姿の描く円環に触発されて、そう言えば、始めのほうでのグリップシューズを履いた女性が回転していたし、ワルツ(円舞曲)だし、HALの現れるイメージは赤い円だし、命の営みの円環、生と死、過去と未来、いずれにも円環イメージが付与されているように感じた。観賞後の懇談のなかでそのことに触れると、ニーチェの哲学には円環思想がある、だから、シュトラウスのツァラトゥストラはかく語りきだったのね、との声が返ってきた。

 他方で、何がいいのかピンと来ないとの声も少なからずあり、改めて、人が映画に求めるものの違いについて想いが及んだ。大雑把に言って、映画にドラマを求めるか、ポエムを求めるかで、本作の受け止め方は大きく違ってくるような気がする。前者に重きを置く人には、本作は、じれったくて仕方がないのだろう。

 また、後者に重きを置く人においても、前者に重きを置く人において、感情に訴えてくるドラマを好む人と、主義主張を訴えるドラマを好む人があるように、主に感性に働き掛けてくるポエムを好む人と、知性に作用してくるポエムを好む人がいるなか、本作は、感性と知性の両方にマックスに働き掛けてくる力を持っているから、映画ファンに強く支持されているのだなと思った。

 いわゆる映画好きの集まりにおいては聞くことが殆どないような意見を直に聴けるのが月1回のこの観賞会で僕がイチバン気に入っているところなのだが、その意味では、今回も大いに愉しいひと時を過ごすことができた気がする。とりわけ面白かったのが、ある意味、病的な映画だという意見だった。核心を突いている部分があるような気がした。
by ヤマ

'21. 6.21. あいあいビル2F



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