『戦う幌馬車』(The War Wagon)['67]
監督 バート・ケネディ

 そもそも幌などないのだから、邦題の「戦う幌馬車」は、字幕にあったように「装甲馬車」のほうが当を得ているのだが、六頭立ての馬車に28人の護衛の騎乗する馬が付いて疾走するオープニングの迫力に感心したわりに、その後の展開は少々緩く感じられたものの、最後の装甲馬車への襲撃は観応えがあった。

 金と賞金に二股かけて欲張っていたローマックス(カーク・ダグラス)にも観覚えがあり、おそらく子どもの時分にTV視聴しているのだが、善良な正直者など一人も登場しない悪漢映画ながら、このところマカロニウエスタンを続けて観ていたこともあって、ある種、似たような悪漢ものながら、その風味の違いが際立っていて興味深かった。

 強奪計画を企てる刑務所帰りのトゥ・ジャクソン(ジョン・ウェイン)が自分の開いた牧場を奪い、金鉱脈を奪ったピアースに一泡吹かせるために集めたのが、女に目のない欲深な伊達男のローマックス、酒にだらしのない爆薬遣いのビリー・ハイアット、先住民アウトローのリーヴァイ、若妻ケイトをカネで買ったらしいこすっからい老運び屋のフレッチャーといった有様で、いかにも曲者揃いの面々が面白かった。いずれも人物的には妙に信用ならないのだが、それぞれの腕前には実に信頼がおけるという如何にも悪漢映画的な配置だったように思う。とりわけ、トゥとローマックスの腐れ縁的な遣り取りが面白く、両優がそれぞれに相応しい個性を発揮していたような気がする。また、若いケイトには若いビリーで収めてハッピーエンドとし、誰も法外な金儲けのできない仕舞いの付け方には、ハリウッド的なものを感じた。

 それにしても、オリエンタル・パレスとの看板を掲げた売春サロンの娼婦たちは、ローマックスから英語も判らない連中だと言われていたが、一体どういう伝手で集められていたのだろう。ひと頃、日本で流行ったフィリピン・パブのような出稼ぎではないはずの時代だけに、装甲馬車にガトリング銃を搭載させていたような十九世紀後半当時に、実際に普通にあったサロンなのだろうかとちょっと目を惹いた。
by ヤマ

'21. 6.20. BSプレミアム録画



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