『牝猫たち』['16]
『ANTIPORNO アンチポルノ』['16]
『ホワイトリリー』['16]
監督:白石和彌
監督:園子温
監督 中田秀夫


 気になっていた【ロマンポルノリブートプロジェクト】の作品をいくつか観る機会を得た。最初に観たのは『牝猫たち』だ。ロマポを謳いながら、昭和の匂いが漂ってこない白石作品という、ちょっと意表を衝かれた映画だった。

 リブートのほうではないロマポ時代なら、雅子(井端珠里)も、結依(真上さつき)も、里枝(美知枝)も、猫の名のとおり、ある種の自由の体現者として描かれているはずなのだが、平成末にあっては、生き辛さと閉塞感のほうが強く残る描かれ方をしているように感じた。

 いささかも官能的でない平成時代の風俗を捉えた作品として、なかなかよく出来ていたような気がする。今一つ釈然としなかったのは、夫が愛人を作っている不妊症の人妻里枝のエピソードで、阿部定を思わせるような事件を起こすに至ることに納得感が湧いてこなかった。


 次に観た『ANTIPORNO アンチポルノ』は、嘗てあれだけ刺激的で面白かった園子温作品とは思えない体たらくに何だか哀しくなった。若くして持て囃されながらも袋小路に入っていると思しき作家の京子(冨手麻妙)の口を借りて“出口”を探し求めている心境を吐露していたが、園子温に果たして“出口”は見つかるのだろうか。

 それにしても、筒井真理子は、凄いなと感心した。五十路半ばでの裸身の見事さもさることながら、それ以上に、劇中でのベテラン女優として演じているM女の役回り演技と、「カット!」の声が掛かると忽ちS女に豹変するギャップの演じ分けの凄さが圧巻だった。


 最後に観たのが『ホワイトリリー』。レズビアンものにはあまり食指の動かないほうなのだが、リブートプロジェクト作品ということで観てみたものだ。物語的にはいかにも陳腐で退屈したが、画面の魅力では三作中、最も気に入った。はるか(飛鳥凛)が陶芸の師匠である登紀子(山口香緖里)に「指と舌、どっちがいいですか」と囁きながら臨んでいた場面が印象深かったように、指と舌の映画だった。いく度か現れる粘土を弄る手つきが記憶に残った。


 残る2作は、『ジムノペディに乱れる』(監督:行定勲)と『風に濡れた女』(監督:塩田明彦)で、どちらも贔屓筋の監督だけに観てみたかったが、叶わなかったのが残念だ。2016年中に公開された2作品については既に配信が終わっていて、2017年になってから公開された3作品しか観られなかったということなのだろう。
by ヤマ

'19. 9.20. Netflix配信動画
'19.10. 2. Netflix配信動画
'19.10. 3. Netflix配信動画


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