『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(Godzilla:King Of The Monsters)
監督 マイケル・ドハティ

 原点回帰が鮮やかで見事だった前作を引き継いでの『三大怪獣 地球最大の決戦』をどのように蘇らせているのか楽しみだったが、まるでロマポの如く、一定間隔で頻出する濡れ場ならぬ見せ場に些か呆れつつ、圧倒された。

 しかし、これでは、ラッセル一家に世界のみならず怪獣たちも翻弄されただけの話になっていて、なんだか釈然としないというか、それこそ“バランス”が悪い気がして仕方なかった。とはいえ、環境テロリストのジョナ(チャールズ・ダンス)の言うバランスにしても、エマ(ヴェラ・ファーミガ)の説くバランスにしても、芹沢博士(渡辺謙)の主張する共生にしても、真意はそこにない方便というか口実のようなものだった気のする描き方だったから、ある種、確信犯かもしれない。

 ただ、話は壊れていても、見せる力は凄いと思ったし、古関裕而のモスラの歌、伊福部昭のゴジラのテーマがハリウッド作品で朗々と流れることに心打たれた。最後にこうして流されると劇中での隠し味的な密やかな使い方も却って効いてくるような気がした。

 だが、それならせめて、魔王ゴジラの改心にモスラの献身が作用している鱗粉の降り掛かりを尊重し、芹沢博士に最初からゴジラへの信愛を託させないようにしてほしかった。芹沢博士よりもむしろ作り手の心情なのだろうとは思いつつ、魔王に「Old Friend…」はないだろうと、けっこう気恥ずかしかった。

 また、キングとしての君臨を示したエンディングと、それに続く取って付けたような「めでたし、めでたし」エピソードの羅列は、かなり無粋なもののように感じた。騎士や侍の時代劇でもあるまいに、足下にひれ伏す図を以て称える趣味は、やはり戴けない。
by ヤマ

'19. 6.30. TOHOシネマズ9



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