“上田慎一郎ショートムービーコレクション”

①『彼女の告白ランキング』['14] 製作:パノラマメトロ
②『ナポリタン』['16] 製作:株式会社シミズオクト
③『テイク8』['15] 製作:八王子日本閣-noce ange-
④『Last Wedding Dress』['14] 製作:八王子日本閣-noce ange-

 先に観た2本は、些かシュールな設定が笑いを誘う作品で、後の2本が、ブライダル業を行う八王子日本閣の製作によるプロモ作品だった。先の2本は、良くも悪くも実に自主製作映画色の濃い作風で、この2作だけだと、何とも他愛無いプログラムになってしまうのだが、その自主映画とプロモ映画とを絶妙につなぐ『テイク8』が入っていることで、特集上映の妙味がグッと増していた。

 僕自身は、『テイク8』を先にネットで視聴していて、カメラを止めるな!』['17]の映画日誌でも言及しているように、何があっても止めない、止められない、止めるわけにはいかないというのが共通テーマだなと思うとともに、日暮≒上田監督自身にとっても、映画を止(や)めるか続けるかが、ずっと最も切実な問題だったのではないだろうかと思ったのだが、その日暮監督が撮っていた映画が、①②のようなSFショートショートみたいな作品だったと思うと、なんだか妙に笑えて来て仕方なかった。

 そのうえで幸せになりたいではなく、不幸せになっても構わないと思えるかのほうが大事なのだと改めて指摘されると、それが伴侶選択であれ、職業選択であれ、少々虚を突かれるようなインパクトがあったわけだが、そういうスパイスがいずれの作品にも込められているところが好もしい。

 国語教師の洋平(中山雄介)からのプロポーズに対して、返事をする前に告げなければいけない17の秘密があると、ダメージの少なそうなものから順に千晴(榎並夕起)が明かしていった『彼女の告白ランキング』で俎上に上がっていた“受容”の動機にしても、不動産投資のマンション販売の営業マンである川上(福島龍一)が、人の発する声全てが「ナポリタン」としか聞こえなくなる『ナポリタン』で取り上げられていた「人の話を聴く」の逆襲にしても、笑って観ながらも、けっこう痛いところを衝いてきている感じが気に入った。17もあるのかよの最初が「浮気をしていた」から始まるランキングにしても、耳にスパゲッティが潜り込むナポリタンにしても、なんじゃそりゃの虚を突かれる感じが心地よかった。必ずしも製作年次順に上映されたわけではないプログラム構成は、もしかすると告白ランキングならぬ“主催者のお気に入りランキング”の順だったのかもしれない。

 大ヒットした『カメラを止めるな!』と『テイク8』では日暮監督だったものが、両作に先んじる『Last Wedding Dress』のときは上田家の話になっていたことに、何だか微笑ましいものを感じた。製作順と思しき①④③②で観ると、また印象が違ってきていたのではないかと思うとともに、『ナポリタン』『カメラを止めるな!』と来てからの次作品となれば、『テイク8』のテイストに戻ることはないのかもしれないという気もした。
by ヤマ

'18.12.23. 自由民権記念館ホール



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