『Beautiful Islands ビューティフル アイランズ』['09]
監督 海南友子

 十年ほど前ににがい涙の大地から['04]を観ている監督の八年前の作品だ。既にソフト化されていて「~気候変動 沈む島の記憶~」との副題がつけられているのだが、折しも“金と色と権力しか視野にないような品性下劣なアメリカ大統領”が、地球温暖化に係るオバマ政権の政策方針と真逆に向かう大統領令にサインをして、対策に背を向ける姿勢を示したとのニュースが入ってきていたから、まさにタイムリーな上映会になったような気がする。

 その下劣さ加減が明白な品性のみならず、彼は知性もかなり怪しそうなので、地球温暖化対策がいかに重要事なのかが理解できていないのかもしれないが、本作を観れば、最も危機的な美しい南洋の島ツバルと昔から名高い水の都ベネチア、そして他ならぬ米国領土であるアラスカのシシマレフ島の瀕している危機が目の当たりにできる形になっていた。まるで八年後の今を予見していたかのようだ。

 それにしても、美しい映像だった。これを沈めてしまうのか?との問い掛けとして実に雄弁だったように思う。人々の賑わいも自然の景観もやたらと美しかった。そして、オープニングで音声トラブルかと動揺させられた“浅瀬に横たわり水没している椰子の木の姿”を無音で長く映し出すカットが、最後に再び同じく無音で延々と映し出されたとき、その無音が強い憤りを雄弁に語っているように感じた。

 本編の上映前に参考資料として、産業革命以降の地球温暖化状況の表やグラフなどのデータ画像が映し出され、今から対策を講じれば抑制できる温暖化レベルと対策を講じない場合の温暖化レベルの差異が鮮やかに示されていた。それが具体的にどうのような取り組みによるものなのか、また、くっきりと違う色合いで示されたその差異が大きいものなのか取るに足らないものなのかは判然としなかったが、これだけの長きスパンで見渡すと、ごく短期間で温暖化が進展したことだけははっきりしていたような気がする。そのうえで本編において目の当たりにした“水没”という生々しさは、放置が決して許されるものではないことを明示していたように思う。

 
by ヤマ

'17. 4. 2. 喫茶メフィストフェレス2Fホール



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