『新宿スワンⅡ』
監督 園子温

 二年余り前の同じ11月に高倉健と菅原文太が相次いで逝去したことがとても象徴的だったのだが、遂に松方弘樹までも亡くなって、友人から松方残念やったねえ。うちの親父の話では山田にあった永楽座というところで、近衛十四郎が講演した時に連れてきていて物部川で泳ぎよったらしいけど。 梅宮、里見、北大路、川地民夫、藤竜也、宍戸錠、小林旭、渡.渡瀬兄弟、北島三郎しか残ってないぜ。というメールが届いた。

 役者だけではない。はみ出た世界でしか生きられないアウトローたちの映画そのものが、女性をメインターゲットとする市場になってしまった映画興行では、もはや生き残れなくなってきているような気がする。

 そのなかにあって、そういった作品世界を継承するような映画を撮っている園子温は、そのことをより確信的に本作で示しているように感じた。だから、前作よりも面白かった気がする。メモに「この題材で園子温作品で、この露出度の低さはどうしたことかと驚いた」と記した点に変わりはなかったから、無駄に濡れ場や女性の裸体が頻出した東映やATGのアウトロー映画のような“昭和の香り”は漂ってこないが、むしろそれゆえに後継たる今の作風として継承されている感じがあって、少々感心した。その意味では、ノスタルジックに昭和の香りを感じさせてくれた昨年の日本で一番悪い奴らとは対照的な作品のように思う。奇しくも両作ともにメインキャストを綾野剛が演じている。前作『新宿スワン』では山田孝之に食われていた感もあったが、本作ではなかなかよくて、白鳥龍彦(タツヒコ)のキャラがよく立っていたように思う。

 新宿歌舞伎町に生息するキャバ嬢とスカウトマンを題材にした『新宿スワン』の“風俗嬢&ヤクザ未満”という中途半端さには、アウトローもどきの程の悪さがあるような印象だったのだが、本作は明らかに往年の“実録を謳ったフィクショナルなヤクザ映画”のテイストに満ちていた気がする。バースト幹部の関(深水元基)と因縁のある滝(浅野忠信)の苦衷と葛藤を抱えた姿になかなか味があって、これまで数々観てきた彼の演技のなかでもベストアクトに属するものだという気がした。涼子ママを演じた山田優も貫禄が板に付いていたように思う。そして、この手の作品に欠かせない小物幹部の存在を金子ノブアキの演じる葉山が果たし、バーストの箍となっている真虎を伊勢谷友介が演じて引き締めていた。なかなかのアンサンブルだった気がする。
 
by ヤマ

'17. 1.22. TOHOシネマズ梅田



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