『マイ ビューティフル ガーデン』(This Beautiful Fantastic)
監督 サイモン・アバウド

 イギリス版『アメリ』とも言うべきテイストの作品だったように思うが、僕は本作のほうが好きだ。イングリッシュなのはガーデンばかりではなく、実にイングリッシュな風変わりさが何とも可笑しな人物だちばかりが登場する。

 亡き妻を偲び続ける純情とは裏腹の偏屈ぶりを発揮していた隣家のガーデニングを愛好する老人アルフィー(トム・ウィルキンソン)や整理整頓の得意なベラ(ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ)の勤務先の上司は、ある種、ありがちな変人なのだが、双子の少女を連れたシングルファーザーの料理の達人ヴァーノン(アンドリュー・スコット)や若きベラが恋する、自称発明家のビリー(ジェレミー・アーヴァイン)の風変わりさが、何とも可笑しかった。

 勢いでヴァーノンを解雇したアルフィーに対抗するようにして彼を雇った、幼時より神経症を抱えていると思しきベラも、相当に変わってはいるのだが、こういう映画を観ていると、変人のほうが独創的な人生を謳歌している感じがあって、少々羨ましく思えたりする。僕も時に変わっていると言われることはあるが、彼らに比べれば所詮、ちょっと個性的だというくらいの凡庸さだ。今どきケータイを持たず、ヤフオクもしたことがなく、アマゾンで本を買ったことも、コンビニでおにぎりを買ったことも水を買ったこともなく、おでんを食べたこともないと言ったら、職場の若い者から「昭和で時代が止まってますね」などと評されたりはしているけれども、世間的には実に面白味がなく固いとされる職業に大学卒業以来ずっと携わっていられる普通さであって、四十路で急逝した脚本家の南木顕生から田辺さんに限らず高知県人は変人ばかりなのに、ヤマさんは珍しくマトモで、ちょっと物足りないとからかわれたくらいだ。

 だから、まるでティム・バートンの映画に出てくるような“機械仕掛けの鳥”が飛ぶような光景と出くわしたり、宝くじに当たるよりも色鮮やかな資産取得に恵まれることもなさそうだが、誰も耳を貸してくれなかったと述懐する老人や色眼鏡による奇行視を浴びる者の孤独といったものに晒されたりすることもない。

 とても風変わりな彼らにしたところで、変人でありたくてそうなっているのではなく、いろいろ難儀もしているのだろうから独創的な人生を謳歌しているなどと言われるのは心外なのだろうが、彼らがユーモラスに愉し気に関わっている感じが好もしく、また、妙な同調圧力に晒されて抑圧されたりしてはなさそうな健全さが心地よかった。
 
by ヤマ

'17. 8.11. あたご劇場



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