『鑑定士と顔のない依頼人』(The Best Offer)
監督 ジュゼッペ・トルナトーレ

ヤマのMixi日記 2014年05月05日20:06

 相変わらずトルナトーレは、こましゃくれてて趣味が悪いなぁ(苦笑)。
 僕でも知ってるほどの名品も並ぶ女性肖像画のコレクションに囲まれて陶然としていたヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)が、行きつけらしきレストランのグラスや皿に“V.O”と刻印させていたのは本人の趣味なのか、トルナトーレの趣味なのか判らんが、V.S.O.Pには及ばないV.O.との皮肉のつもりだったのだろうか(笑)。

 それはともかく、あのコレクションの節操なきまでのカタログ色からは、一級贋作コレクションということかと思わせるが、されば、ビリー(ドナルド・サザーランド)の恨みは、贋作作家としてさえも一流とは認めてくれなかった点にあるのかなどと突っ込んでみたくなった。

 それにしてもだなぁ、『氷の微笑』['92]ばりのノーパン挑発はまだしも、還暦過ぎてのチェリーボーイゆえの恋のイカロスって悪趣味が過ぎやしないか?(苦笑)
 美術品の鑑定眼は超一流でも人の心を観る目のなさの哀れを描くにしても、少々やり過ぎじゃないかしらねぇ(笑)。そこへもって「The Best Offer」って、どぉよ(呆)。おまけに翻弄される恋の手管が、激高と謝罪の波状攻撃ってのも何だかなぁ。

 でもって、一番の謎は、あれだけの大仕掛けをする元手は誰が調達し、どのようにして調度品を手配したのかってことだった。まぁ、お話のためのお話は、トルナトーレ劇のお約束だから、それは了解するにしても、やっぱ、上述した趣味の悪さがいただけなかったなぁ。思わせぶりに舞い落ちていた白いハンカチーフはそれっきりだったし、雨の中、クレア(シルヴィア・フークス)が助け出しに来る暴漢事件も、作戦的にはお粗末だし…。


コメント

2014年05月06日 10:18
(アリエルさん)
 昨年見た最後の映画で、今年は、まだ見ていないので、映画館で見た最新作になります。^_^
 12月31日かのブログ、13年新作に書いてます。
 私は、わからないところも多い話でしたが、二回見たいとは。。。とても混んでいて期待したのですが、トルナトーレはそれほど好きではないので、やはり、でした。


2014年05月06日 15:01
ヤマ(管理人)
 ◎ようこそ、アリエルさん、

 ブログ、拝見しました。さんざんでしたね(笑)。

 >ラスト、一体誰が、主犯、ロバートとクレアは恋人同志だったの?
 とのことですが、主犯は、クレアが母親を描いた絵と言っていた“腰を下ろした踊り子”の絵の裏にサインを入れ、引退オークションを終えたヴァージルに絵を届けておいたと告げていたビリーだというのが、三人組の年齢構成からしても、ヴァージルの隠し資産の存在を知っている点からしても、本作で設えられていた真相だろうと思います。

 >贋作を高く売ってる?
 との部分は、そうではなく、オークションを仕切るなかで掘り出し物を予めビリーと示し合わせ、安値で自分が落札するインサイダー取引をしていたということなんだろうと思います。
 ただ、そのコレクション自体に余りにも著名な作品が並んでいたので、失笑してしまいました。

 ヴァージルの人物造形にリアリティがないというのは、御指摘の通りだと思います。ちょっと極端な色付けが過ぎてますよね(笑)。老いらくの初体験で童貞を脱してから、やおら手袋を外し出すってのも、何か笑えました。

 場面演出が過剰なまでの判りやすさというか色付けなのに対して、最後のほうの編集は、やたら韜晦に満ちててワザとわかりにくくしてありますよね。

 僕は、あの老けようから施設みたいなところに入っているのが、時系列的にはいちばん最後なのかなと思いながら観てました。そこからの回想物語で、言わばアマデウスと同じ形です。
 ラストシーンのプラハを訪ねての「ナイトアンドデイ」がロバート(ジム・スタージェス)好みの機械仕様で、彼がオーナーであることを偲ばせ、店名がエッシャーの“だまし絵”として有名な「デイ アンド ナイト」を引っくり返してあるというのもあざとい仕掛けでしたが、あそこまで訪ねて行って、自分が嵌められた、精密機械のように組み立てられた騙しの顛末を見届けたということなんでしょう。そのときからヴァージルの時計は止まってしまっていて、施設暮らしになっている、そういうストーリー構成かなと思っています。

 収入の件は、
 >絵は自分の異常なお部屋の宝物だから売れないし
とお書きのとおりなんですが、それでもなお高額所得を得る凄腕競売人なのでしょう。取引金額の次元が違いますから、手数料商売でも相当なものなんでしょうな。

 結局のところ、
 >常に、ちょっと大袈裟、あざとさのある話を好んで撮っている
 とお書きの通りの作り手なのだと思います。
 若き日の出世作で広げた大風呂敷によって占めた味が忘れられずに、より強度を高めて繰り返しているのだという気がします。

 でも、場面を見せる力はありますよね。その点は、いつもながら大したものです。


2014年05月07日 09:57
(アリエルさん)
 詳しく書いていただき、よくわかりました。安価でのインサイダーなのですね。確かに、単位がおおきいから、手数料、枚数でかなりになるので生活はできますね。ヤクザな世界(^ ^)アートを欺いて。
 五ヶ月たっているので記憶も薄れてますが、『アマデウス』のような回想形式なのですね。TV放映があれば録画で、そのあたりを見直したいです。公開時はリピーター割引もあり混んでいたのかもしれません。二回みれば、わかると思います。ありがとうございます。


2014年05月07日 20:04
ヤマ(管理人)
 あからさまに回想形式がとられているわけではないんで、僕の理解として、そう受け止めているだけなんですけどね(たは)。




推薦テクスト:「銀の人魚の海」より
http://blog.goo.ne.jp/mermaid117/e/a232047d52821a8ce274a498d38352d5
推薦テクスト:「チネチッタ高知」より
http://cc-kochi.xii.jp/hotondo_ke/14051101/
編集採録 by ヤマ

'14. 5. 5. あたご劇場



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