『ネイチャー』(Enchanted Kingdom 3D)
『ファイアbyルブタン』(Feu:Crazy Horse Paris)
監督 パトリック・モリス
監督 ブリュノ・ユラン


 劇場で2D、3D両方のバージョンで公開された2つのドキュメンタリーを観た。ドキュメンタリーというマイナージャンルで3D版公開があること自体が例外的なのだが、どちらもそれなりに故なしとは思えない要素を持っているので、興味を抱いた。『ネイチャー』のほうは当地でも劇場公開されたので3Dで観賞し、『ファイアbyルブタン』は当地での劇場公開がなく、友人が送ってくれたDVDで観賞した。実のところは、友人が業務用DVDを入手し、いかにも僕が好みそうなので譲ってくれたのを受けて、ちょうど見合わせてみるのも一興かと思い、同日に観賞したわけだ。

 大自然の生態の驚異をカメラに捉えた前者と、徹底的に人工的な洗練を指向した後者を観て、3Dで観たかったのは、やはり名店クレイジーホースでの華麗なるヌードショーだと改めて思った。『ネイチャー』の映像も確かに凄かったのだけれども、驚異と言えど最早どこかで既視感のあるような映像が単に3Dで観られたというだけで、作品的には、被写体の驚異の側からも、3D画像の驚異の側からも中途半端な気がした。でも、考えてみれば、3Dカメラを持ち込める範囲でしか撮れないのだから、これでも大健闘しているというべきなのだろう。エクスキューズを入れるかのように、本編終了後に4分程度のメイキングを添えてあったのが妙に可笑しかった。観終わった後に残ったものという点では、3Dで観た驚異の生態というよりも、主題的なものとしての「水資源の大切さ」のほうだったような気がする。『ミクロコスモス』['96]を観たのは、もう十六年前になるが、3D画面ではあっても、本作のインパクトは到底及ばないように感じられた。

 かたや『ファイアbyルブタン』のほうは、眩しいまでの美尻美脚のオンパレードで実に圧巻だった。クレイジーガールにおいては、おっぱいは重要ではないらしく、ひたすらボリューム感と張りのある尻と長くしなやかな脚が追求されていた。CGではまだまだ真似のできそうにない“生身の肉の引き締まった脂肪の揺らめきと鍛えられた筋肉の伸縮”が見事なまでに蠱惑的で、恐れ入った。映画のオープニングタイトルでクレジットされた文字をひとつも読むことが出来なかったのは、もしかすると初めてかもしれない。

 ステージプログラムを演出した靴デザイナーのクリスチャン・ルブタン氏や主なトップレス・ダンサーたちの語りを挟んで繋がれた81分の作品に収められた11の演目には、アーティフィシャルな意匠が入念に凝らされていて、とても観応えがあった。そのなかでも特に目を惹いたのは、最初の演目「ヴゥドゥ」の幻想感、下半身だけでなく上半身も見事だった「エロティシズムの手ほどき」、デヴィッド・リンチの音楽によるとの「マステロイド」の尻さえ見せない脹脛から下のダンスの醸し出す変態性の可笑しみと最後に尻から見えて横たわった女体の鮮烈さ、「アップサイドダウン」のステージワークの見事さ、「懺悔」におけるパーフェクトボディのダンサーの美女ぶり、「ファイナル・ファンタジー」でのロープ使いのアーティステックな妖しさ、だった。

 各ダンサーが誇らしく語るコメントが印象深く、フォルムの点からも色合いの点からも極めて対照的な“生体としての肉と人工的なピンヒールとの組み合わせ”がフェティシズムの核心を捉えているように感じられた。僕が脚フェチ、ピンヒールフェチだったら、卒倒したかもしれないなどとほくそ笑んだ。

by ヤマ

'14. 5.14. TOHOシネマズ4 & 業務用DVD



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