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『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(Nebraska) | |||||
監督 アレクサンダー・ペイン
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ウディ(ブルース・ダーン)は、確か80歳だとか言っていたように思うのだが、彼の次男デイビッド(ウィル・フォーテ)は、いったい何歳だったのだろう? 観たところ、40代半ばに見えたが、長男ロス(ボブ・オデンカーク)との年齢差は、そうなかったような気がする。だから、ウディとケイト(ジューン・スキッブ)の結婚が、あの世代にしては、そう早くはなかったか、子供が出来たのが遅かったかのいずれかになるのだろうが、イメージ的には、求められれば断れない性分で、'70年代に旧知のエド(ステイシー・キーチ)に実質取り上げられたらしいエア・コンプレッサーの恨みを40年間も抱えているウディが結婚した顛末というのは、エドが“アバズレ”と呼び、ウディ争いに敗れたと述懐するペグ(アンジェラ・マキューアン)が語る敗因からしても、更には、結婚前から酒飲みだったらしいウディがデイビッドに対しては、自分が飲まずにいられない理由としてボヤく妻への屈託やデイビッドが生まれる前に持ち上がったらしい離婚騒動からしても、優柔不断で素面では自己主張も余りできないウディの受動的な結婚であり、それもかなり若いときのものだったような気がしたので、画面から窺える親子の年齢差が少し気になったりした。 それはともかく、いつも強気で押してくる妻と何十年も暮らし続け、あからさまに子ども扱いされ、立つ瀬というものが与えられることの少なかったであろうウディが、己が身の証を立てるべく最後に縋ったようにも見えるものが、余りにも頼りなさの見え透いた情けない代物だったのが、いささか遣り切れなかった。これを笑える他人事として観られるのか、そうは済ませない苦さとして味わうかで本作の映り方は随分と異なったものになってくるような気がするが、ちょうど小津安二郎監督の戦前作品『大人の見る繪本』['32]を観たばかりで斎藤達雄の演じる吉井課長の苦さに触れていたからか、僕には後者の趣が強かった。 だからこそ、呆れつつも父親に付き合うデイビッドの心遣いが沁みて来たのだが、もっと若い頃に観たら、そのデイビッドにも付き合い切れない気分のほうが支配的になったのではないかという気がしないでもない。妻からダメ出しをされ続けるウディの腹癒せということでもなかろうが、おそらくは兄ロスとの比較のなかで父親からダメ出しをよくされていたと思しきデイビッドは、それゆえに、ある種、父親と相通じる断り切れない性分とか優柔不断さを受け継いでいて、それゆえ2年間も同棲した女性から愛想を尽かされたりするのだが、出ていくことを思い止まるよう求める強気を出せない代わりに、出ては行ってもデートなら出来るのかと問うて了承されるとすかさずセックスはと訊ねる間の悪さというか間抜けぶりも父親そっくりというわけだ。しかし、それは同時にデイビッドならではの優しさもまた父親譲りということであって、だからこそダメ出し妻ケイトも、常に夫の心配はするし、その窮地においては夫に成り代わって悪態をついて反撃することも厭わない頼もしさを発揮するのだろう。 ウディを演じたブルース・ダーンをはじめとして、それぞれの役者の醸し出すペーソスに実に味わいがあって、トホホな人間のトホホでは済ませられない趣というものが、よく表れていたような気がする。しょうがないなぁというような人物像が頻出しても、『ザ・ファイター』を観たときの印象とは違うように感じたのは、本作には温かみが宿っていたからのような気がする。 推薦テクスト:夫馬信一ネット映画館「DAY FOR NIGHT」より http://dfn2011tyo.soragoto.net/dfn2005/Review/2014/2014_05_19_2.html 推薦テクスト:「映画通信」より http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1923381444&owner_id=1095496 | |||||
by ヤマ '14. 4.18. TOHOシネマズ3 | |||||
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