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『決断の3時10分』(3:10 To Yuma)['57] | |||||
監督 デルマー・デイヴィス | |||||
リメイク作の『3時10分、決断のとき』['07]は、2009年度のマイベストテンで第2位に選出していた映画なので、そのオリジナル作は大いに気になっていたのだが、観る機会に恵まれないままDVD鑑賞の機会を得た。踏襲部分と改変部分の対照に実に妙味があって唸らされた。 そもそも父子物語であったリメイク作が、オリジナルでは夫婦愛の色合いのほうが強く、拙日誌に綴ったチャーリー(ベン・フォスター)⇒ベン(ラッセル・クロウ)⇒ダン(クリスチャン・ベール)の三者関係にしても、チャーリーはリメイク作で俄然、重要な位置を占めるようになっていたことを知って驚いたのだが、自分がリメイク作において着目したポイントのことごとくがオリジナル作にはない新たな意匠であったことに大いに感心した。 だから、エマと交わす「青い瞳」、アリスと交わす「緑の瞳」という台詞までもが新旧同じでも、オリジナル作では描かれなかった“聖書の箴言を諳んじ、手慰みで達者なデッサンを描き付けてしまう無法者”として造形されていたリメイク作のベンのほうに、僕は軍配を上げたいように思う。もちろんグレン・フォードのベンも悪くないと思うし、恵まれない生育環境から受ける人生の風雪により無法者となったことが明示されていたリメイク作のベン像は、オリジナル作のベン像があってこそのものに他ならない。ダンとの関係にしても基本的にリメイク作がオリジナル作を踏襲していることが、よく判った。 リメイク作が結末を変え、チャーリーを撃ち殺す人物をダンからベンに変えたのは、少々やりすぎなのかもしれないが、オリジナル作においては一度も激することのなかったベンを、彼らしからぬ激情に駆られている姿として描き出したことで僕の得られたものは大きかったのだから、あれでよかったのだと改めて思った。 本作での“一度の出会いで忘れられなくなる関係”との言葉は、エマ(フェリシア・ファー)とベンの間で交わされたものだったが、言うまでもなくベンとダン(ヴァン・ヘフリン)の間に生まれたものをも表わしていて、その対照は、本作のほうが率直で且つシンプルだったように思う。そして、アレックスの死を見送ったダンの発した“責任”という言葉の重みが印象深かった。また、妻としての頂と女としての頂をアリス(レオラ・ダナ)とエマの二人に託して対照させていた構図の鮮やかさも、最後に馬上からユマ行き列車を見送るアリスの姿として、オリジナル作では雄弁に語られていたように思う。 そういった人と人との“忘れられなくなる関係”というものを、半世紀前に描き出すには『決断の3時10分』のほうが妥当だし、ちょうど半世紀を経て描き出すには『3時10分、決断のとき』のほうが、より味わい深い感慨を残してくれて、リメイクに相応しい出来映えとなっているということが、とてもよく判ったような気がした。 推薦テクスト:「TAOさんmixi」より http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1265105654&owner_id=3700229 推薦テクスト:「虚実日誌」より https://13374.diarynote.jp/201007062330121233/ | |||||
by ヤマ '12.10.29. DVD | |||||
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