『毎日かあさん』
監督 小林聖太郎

 同郷のよしみもあって『ぼくんち』('02)以降、『いけちゃんとぼく』('09)、『女の子ものがたり』('09)、パーマネント野ばら('10)と、西原理恵子原作の映画は全作品観ているが、本作が最も出来が良かったように感じるのは、夫婦というよりも縁者的関係に昇華されたような男女を、現実でも元夫婦である小泉今日子と永瀬正敏が演じて絶妙の雰囲気を醸し出していたことと、子供たちのエピソードが抜群に効いていたからだろうと思った。

 幼い子供の存在というのは、最強のものだとつくづく思う。その存在という媒介がなければ、おとっしゃんが“人として死ねる幸せ”に涙することのできる日は来なかったのではないだろうかと思った。一ヶ月余り前、福岡に行ったときに観た博多にわかのオチに「子はカスがいい」というのがあって、えらく気に入ったのだが、ほんとにブンジ(矢部光祐)は、とても笑える困った子だった。『毎日かあさん』ではなくて『毎日おくさん』だったら、リエコ(小泉今日子)は到底あのような看取りと見送りはできなかったような気がする。

 迫り来る死期を前に再びカメラを手に取り始めてからのカモシダ(永瀬正敏)の姿には本当に心打たれたし、最期を看取ったときのリエコの様子にも感じ入った。そして、エンドロールで映し出されたリアルの西原理恵子と鴨志田穣のツーショット写真を観て、改めて映画そのままの鴨志田の風采の上がらなさに感心した。同様に、撮影:永瀬正敏とクレジットされていたエンドロールのモノクロ写真の出来映えにも感心しつつ、憂歌団の木村充揮の唄う『ケサラ』に痺れていた。西原理恵子自身やその子供たちが観ると、さぞかし堪らなくなるだろうなと思った。

 カモちゃんの書いた『酔いがさめたら、うちに帰ろう』が、劇中では確か『うちに帰る途中』に変わっていたように思うのだが、そのタイトルの違いにも、西原理恵子の受け止めが反映されているように感じられた。エピソードの随所に現われる彼女の“感受性の細やかさと生命力のタフさとの共存”が圧倒的で、およそ両極と思えるものを共に顕著に体現している個性の稀有なることに改めて感じ入っている。



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by ヤマ

'11. 3. 6. TOHOシネマズ5



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