『冬の小鳥』をめぐって
TAOさん
ヤマ(管理人)


  mixiコメント 2011年03月18日 23:15 より

(TAOさん)
 自分で自分を生き埋めにしていた場面が圧巻だった。
 同じく〜。”死と再生”フェチにはたまらないシーンでしたよ!

ヤマ(管理人)
 あれだけ意志的で、気丈さを全身で放出しながら自死に向かおうとしている幼い人物の描出というのは、今まで一度も観たことがなかったように思います。死のうとして土を被ったのに死ねないことに対しても、何だか腹を立ててるような風情がなかなか強烈でした。
 あのコワさって、韓国女性にある種通じるとこがあるのかも(笑)。ジニの継母がジニの言う“安全ピン事故”に我が子が見舞われた際にも、おそらくは強烈に発揮されたのではないかと推察されましたが、その強さで向かってこられたら、ジニの父親ならずとも、やっぱ男はたじたじになるんだろうなー(苦笑)。

(TAOさん)
 いやほんとに見たことも聞いたこともない、強烈で画期的な儀式でした。死ねないことに腹を立てつつも、しょうがないから、じゃあ生きるよ、と、憑きものが落ちたように再生するところが凄いです。

 あのコワさって韓国女性にある種通じるとこがあるのかも(笑)。
 そうですねえ。子どもの時からすでにこんなにコワイ。まして成人した女性ともなれば、「再婚した妻から強く言われると、我が子の願いよりも妻の要求のほうに応えてしまうのが男なんだろうな〜と何だか侘しくなった。」となるわけですねえ。韓国の女系家族の入り婿って、細雪どころじゃないでしょうね(笑)。

ヤマ(管理人)
 憑き物が落ち、失ったものへの囚われ故に離れられなかった地と決別する覚悟を得た後の、集合写真で見せていた笑顔が、本作の言わばハイライトシーンの一つでしたね。
 ジニに限らぬ韓国女性の苛烈さを、以上でも以下でもない率直さで誠実に描き出しているところが見事で、善し悪しとは違うところで語っていたように思います。ジニが語った“安全ピン事故”については、TAOさんは、どのように御覧になってますか?

(TAOさん)
 安全ピンが継母の子どもの足に刺さっていた事件ですよね。ジニが悔しそうに語っていることから見てジニの仕業ではなく、でもさすがに継母がやったとも思えず、事故で刺さりそうになっていたのを見た継母が大袈裟に騒ぎ立て、これ幸いとばかりにジニを追い出すことに利用したとみています。甘いですかねえ。

ヤマ(管理人)
 僕は、ジニ、継母ともに全く同じ程度に“コワく苛烈な女性像”を受け止めていますので、継母の騒ぎ立てに「事故の故意への置き換え」は想定していないですねー。二人とも、特段の悪意はなく、起こっている状況への強烈な怒りを率直に放出したのだと思います。
 ジニは、実母に替わって継母との暮らしになっている状況への怒りと、義理の弟妹いずれかの存在への妬みを、抑えられずに表出させたのだと思います。継母は、しょせん安全ピン程度のことではあったにしても、その空恐ろしさに震撼し、ひたすら我が子を守ろうとの一心でジニの追放を強く夫に迫ったのだろうと思います。これ幸いとか利用といったものは、ジニの行為における悪意の不在と同様に、僕はなかったと受け止めてます。だから、ジニも継母も共に、悪いとか悪くないとかではないわけで、強い感情で怒りに囚われた不幸がそのような形で見舞ってくることが、人の人生には起こるという悲劇を描いていたのだと思いました。
 ジニが悔しそうにしていたのは、誤解されたからではなく、自分の引き起こした端緒があればこその悔いても悔い切れないことへの怒りであり、悔しさだったのではないかと推察しています。
 そこんとこが本作の最も凄いとこで、「以上でも以下でもない率直さで誠実に描き出しているところが見事」と僕が感じ取ったところでした。

(TAOさん)
 あ、事故というより、「起こっている状況への強烈な怒りを率直に放出した」結果と見るほうがずっといいですね! ジニが悔しがるのは、自分で起こしたことだからと考えたほうが説得力がありますし、継母も起こったことの核心をまっすぐに捉えて反応したからこそ、夫に我が子を捨てさせる迫力で迫れたのでしょう。
 モラルとか善し悪しではなく、この二人はただどうあっても共存はできない状況にあり、ジニの父親にしてもどちらかを選ばざるを得なかったということですね。

ヤマ(管理人)
 ご賛同いただき、ありがとうございます。そのとおりです。
 まさに「モラルとか善し悪しではなく、この二人はただどうあっても共存はできない状況」ということです。だからこそ、「我が子の願いよりも妻の要求のほうに応えてしまうのが男なんだろうな〜と何だか侘しくなった」わけです(笑)。これもまた、善し悪しということではなく、敢えて言うなら強弱ですよね(とほ)。
 そのように観るほうが、単に厳しい状況に見舞われた少女の物語として観るより数段興味深く、人間や家族を考えるうえで面白くなる気がしますし、いかにもイ・チャンドンが惚れ込みそうな作品でしょ。
 しかし、うーむ、日誌に綴ろうと思っていた部分を殆ど吐き出しちまったぞ(苦笑)。さて、どーしよう(笑)。やっぱまとめておこうかな、それとも…(たは)。
by ヤマ(編集採録)



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