『ライトスタッフ<ディレクターズ・カット>』(The Right Stuff)
監督 フィリップ・カウフマン


 午前10時の映画祭シリーズ1 赤の50本の当地での最後の作品。奇しくも本作は、二十六年余り前に僕が映画日誌を綴り始めた最初の映画だ。ファイルノートに手書きのボールペンで記し始めたときに、よもや今のような“殆どライフワークに近い作業”になるとは思っていなかった。赤の50本のうち、今回観たのは16本だが、そんなこんなの縁から、最終週の本作の再見を最も楽しみにしていた。

 表題の“The Right Stuff”を例えば“適性”のような成句に翻訳してしまうと失われる矜持の部分を、巧みな人物造形とエピソードで綴った作品との印象があったから、イエーガー夫婦が二頭の馬に跨って追っ駆けっこをしながら、オゥオゥ、カムカム、ハァハァなどと喘いでいる音声を被せて延々と画面を続けているのを観て、「こりゃ音声だけにすると、絶対にアダルトものに間違われるよな~」と、そのふざけたノリに意表を突かれたが、バーバラ・ハーシーもサム・シェパードも、かなり楽しんでやってる感じで、そういう遊び心が随所に込められている作品だと再認識したのが大いに収穫だった。

 俗物ジョンソン副大統領(ドナルド・モファット)をコケにしたエピソードでの「副大統領だろうと嫌なものは断れ」と電話口で妻を激励したグレン少佐(エド・ハリス)と、想外の彼の応対ぶりに驚いて指揮官が「乗船の順番を変えるぞ」と口にした際に残りの6人の宇宙飛行士仲間が取り囲んで「誰に変えるんだ?」と威圧した場面、そして、音速に賭ける花形のパイロット集団だったはずの自分たちがすっかり宇宙飛行士のほうに注目を奪われるようになっていることをひがんだエドワーズ空軍基地の連中が、同じ空軍パイロット出身のガス(フレッド・ウォード)の着水失敗に対し、「猿でもできる仕事」などとTVを観ながら揶揄したことに、「怖さを知りようのない猿と人間は違う。命懸けで危険に挑戦する連中は立派なものだ」と釘を刺すイエーガーの場面が、かっこよかった。

 会場を出たら、午後1時20分にもなっていて、時計が壊れているのかと思った。少しダレを感じた場面もありはしたが、こんなに長い作品だという記憶はなかったので、大いに驚いた。調べてみると、公開当時が160分で、今回が193分とのことだったが、僕にとっては、当時の尺が2時間半を超えていたということ自体が驚きで、しかも、今回30分以上も長くなってるとは重ねての驚きだった。




推薦テクスト:「超兄貴ざんすさんmixi」より
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by ヤマ

'11. 1.16. TOHOシネマズ9



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