『蛇にピアス』
監督 蜷川幸雄


ヤマのMixi日記 2008年09月24日16:34

ルイを演じた吉高由里子に浮遊感があったところがよかった。
崩れや自堕落を感じさせずにむしろ透明感のほうに向かうイメージを
体現していたのが出色で、それが果たせなければ、この作品世界は
壊れてしまうような気がする。

ただ、それと併せて放射し体現すべき、
サディストのシバを触発して止まない魔性のほうは、
台詞で語られるヨガリ具合の激しさに見合うべき艶技にしても、
大いに力不足で物足らず(憾)。
シバに、ルイを惹き付ける闇のもたらす怖さが宿っていないのも
少々物足りないところだ。

アマのほうは、可愛らしさと危なさの同居したスリリングさを
どうにか感じさせてくれていたけど、シバについては、
むしろ健康さのほうが印象付けられてた感じ。それも必要な要素ながら
そっちのほうが強すぎては、なんだかNANAのヤスのようだった。

曲がったレールをうねるようにして進み来る電車をスローモーションで捉え、
都会に住む蛇に見立てて映し出したショットが、台数を変え、
何度か繰り返し挿入されていたところがよかった。
それにしても、あのスプリット・タンの映像は本物なんだろうか。
あんなふうに開いたり、独立した動きを与えたりできるものなんだろうか。
あの舌の動きが一番エロティックだったよな~。




コメント

2008年09月26日 15:42
(TAOさん)
 崩れや自堕落を感じさせずにむしろ透明感のほうに向かうイメージ

 堕ちてますます聖性を高めるヒロイン像って、石井隆みたいですけど、たぶん今の若い女の子にとって、そのベクトルはほんとうに大事なんでしょうね。映画版の『恋空』のヒロインに私はそれを感じました。レイプされたり、妊娠したり、流産したり、なにがあっても愛に守られ、清潔そのものなんです。現実ではどんどん崩れていくことがわかってるからだろうなあと思ったりもして。

 魔性不足は予告編から大いに察せられました。やっぱりこれはパスかな。


2008年09月26日 20:45
ヤマ(管理人)
 そーか、それってトレンドなんですねー。だとしたら、映画化としては成功してますね。原作もそのテイストだったんでしょうか?

 予告編は、僕は観てないのですが、例のスプリットタンの映像って予告でも流れていたらしいですね。あれを観てれば、パスもいいかな~(笑)。


2008年09月26日 22:38
(TAOさん)
 原作は読んでないんですよ。綿矢りさのほうは新しさを感じたんですけど、こっちは古そうな気がして。でもそのうち読んでみます。

 スプリットタンの映像はみました!
 一番エロいところを予告で見せちゃってるんですね(笑)。吉高由里子は声に色気がないんですよー。モノローグを聴いてこりゃいかん、と思いました。


2008年09月26日 23:21
ヤマ(管理人)
 そうでしたか。
 TAOさんのことだから、きっと読んでるんだろうと思ってました。予告でキモの映像を見せちゃってしまうハシタナサって、昔の映画にはなかったんですけどねー(とほ)。

 吉高由里子の声はね、確かに色気から遠いんですが、映画では、あの調子がうまく浮遊感に繋がっていた気がします。この映画を観た日の夜のTVドラマで高校生役の彼女を見かけましたが、基本的にしゃべり方が同じだったので、彼女だと気づいたのでした。演技としての口調ではなかったようです(笑)。




参照テクスト:原作小説の読書感想
編集採録 by ヤマ

'08. 9.22. シネ・リーブル梅田



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