『ダークナイト』(The Dark Knight)
監督 クリストファー・ノーラン


ヤマのMixi日記 2008年09月07日23:05

 こういう作品を観ると、いかに自分が社会とか信念といったものに対する意識が薄いかが知らされるとともに、善と悪の二項対立といったものへの関心が薄くなっていることを知らされる感じだった。ブルース・ウェイン(クリスチャン・ベイル)の信念もジョーカー(ヒース・レジャー)の信念も、僕には同等に、あまり興味が持てない。
 気になったのは、「あの高潔なハービー検事(アーロン・エッカート)でさえ」とのゴードン警部補(ゲイリー・オールドマン)の台詞ほどに「あの」が造形されていたように思えなかったことと、それならば、なおのこと、彼がジョーカーの唆しでジム(ゴードン)の計画の不手際で悲劇が起こったとの逆恨みに乗せられてしまっていたことだ。留置場で拘束されていたのだから、爆破できないだとか、自分は計画的に事に臨むほうではないってな弁を真に受けるのか?(苦笑)  まぁ、そうならないと、後の展開が運ばないけどねぇ…。
 それと、まぁ、これもブルースの信念なんだから、仕方ないと言えば仕方のない話だけど、バットマンをどうしてもヒロイックにしたがらないことが却って枷になっている気がする場面もあるのに、ルールに拘る。匿名性の元にそこに拘ってても仕方ないんじゃないかなぁ。それで本末転倒して、悲劇が拡大するのも何だかね〜。
 秘書のアルフレッド(マイケル・ケイン)とフォックス社長(モーガン・フリーマン)の人物造形は魅力的だった。でもって、ヒース・レジャーのジョーカーには凄みがあったなぁ。


*コメント
2008年09月08日 23:08 (ミノさん)
 え〜いまいち登場人物の整理が出来ていないので(笑)なんなんですが、いまいちこのテーマ性には共感しなかった、てことですね?
 わたしも自分とこでマイミクさんに解説してもらってこのストーリーに意味付与出来ましたが、見ただけではなんかあのピエロがなかなかやっつけられないんでイライラしました。登場人物の誰にも感情移入出来なかったのが最大の要因かも…。でも楽しかったんですけどね。


2008年09月09日 07:31 ヤマ(管理人)
 あのピエロをなかなかやっつけられないのは、バットマンが自身に課していたであろうルールのせいなんでしょうね。バットマン自身が意図しないところで、「不幸にして已む無く訪れる死ではなく、彼自身が積極的に殺意を持って臨むこと」をギリギリのルールとして自らに禁じたうえで、からくも圧倒的なパワーで以って“正義”のための“力の行使”を自らに許しているってな己がルールに縛られているんでしょうね。
 そんなふうに観てました。アメリカ的でしょ、それって。妙な形でのルールへのこだわりとかってのは、遵守し得ないとなると毒を食らわば皿まで的な無法へと一気に相転移しちゃうようなとこもあって、ね。前者がバットマンで後者がジョーカーみたいな、二項対立だけど、どこか表裏一体なんですよね。ノー・カントリーのコイントスのシガーにどこか重なるところのあるハービーにしても、何か皆々が窮屈そうでね、スカッとするとこがどこにもない。
 まぁ、圧倒的な力の行使には、自ら枷を課すっていうのは、確かに最低限のルールで、力ある者には守ってもらわないといけないけど、課した途端に枷自体に囚われて、枷を課した意味のほうと本末転倒しちゃうと、何だかおかしなことになってきちゃいますよね。圧倒的な力を保有する故に自ら課した枷に苦しむ強者の辛さを誇示したり、掟破りの囚われのなさで無法の限りを尽くしているように見えながら、無法であること自体に囚われまくり、悪意の意匠と計略性に囚われまくっている人物を見てても、感情移入しにくいのは、当然ですよ(笑)。

 僕もビギンズのほうを観てないので、ミノさんのマイミクさんがそちらでお書きになっていることの核心がよくは判別できないのですが、ブルースが自己の論理に囚われている姿は、本作だけでも充分に窺えたことながら、その細部というのは、ミノさんのマイミクさんが書いておられるようなことだったのかもしれませんね。
 “暗黒の騎士”的なダーティ・ヒーローっていうのは、今に始まったことではなく、昔からヒーローのバリエーションの一つとして古典的に認知されてきているものだとは思うんですが、かつてのバットマンとノーラン版のバットマンというような比較が、僕自身は、あまり出来ないくらいに記憶がぼやけてます(たは)。まぁでも、アメコミですから、苦悩キャラではなかったんでしょうね。でも、映画版では、バートン時代からそういう傾向が少し出ていた気がしなくもありません。記憶がぼけてますが。
編集採録 by ヤマ

'08. 9. 7. TOHOシネマズ2



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