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桜座 “落語&無声映画上映会”
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県都から車で一時間足らずの佐川町で珍しい上映会があると知って出向いてみた。落語と無声映画の組み合わせというのが何処から生じたものかはともかく、語りの達者さにおいて落語家なれば些かの不足もないはずで、噺家がどんな弁士ぶりを務めるのか興味津々で赴いた。それというのも『瀧の白糸』を二人の異なる弁士で観て、かねて自分が思っていた以上に無声映画における弁士の重要さというものを認識させられたことがあったからだ。それで言えば、弁士という点では前説や小咄の面白さのようには上手くいってなかったような気がするが、思いのほか少な過ぎる入りのなかで、会場を盛り立て楽しい上映会に仕立てあげてくれたのは、流石というところだ。返す返すも、貴重な機会が多くの人の耳目に触れぬままに過ぎ去ってしまったことが惜しくてならない。それと同時に、映画の弁士というものの難しさを再認識させられたようにも思う。 もっとも作品的にストーリーものではないというのが、弁士的にはハンディを負わされる面に繋がったような気がしないでもない。なにせ身体動作の面白さやら目に映る事物の珍しさが一番の魅力というような作品ばかりで、最初に上映された『スケアクロウ』など、動きのテンポが速くて、少し説明を加えようとすると喋りが画面についていかなくなるほどの軽快さだ。弁士抜きだった『リバティ』が作品的には最も面白かったのが皮肉な話だけれども、『スケアクロウ』のバスター・キートンにしても、『リバティ』のローレル&ハーディにしても、抜群の身体表現力で、観ていて圧巻と言うほかない。 三作品とも1920年代の映画なのだが、こうして並んだものを観ると、改めて世界恐慌前のアメリカが工業化社会の先頭を走っていた当時の“勢い”のようなものが感じられる。『リバティ』は、脱獄囚の二人組が逃げ込んだ先でのスリリングなパントマイムが観ものなのだが、当時の最先端であったろう高層ビル建築の現場が舞台になっていたし、『スケアクロウ』や『専売特許』では、工業化の一大テーマであった“オートメーション化”がともに色濃く反映されていて、ニック・パークの人気クレイ・アニメーション『ウォレスとグルミット』で発明家ウォレス氏が見せてくれたような、目覚ましから朝食に至る自動システムが実写版で展開される。それにしても、映画のなかで奇抜に繰り広げられたアイデアの大半は既に実用化されているのが、今観ると興味の尽きない点でもあった。 『スケアクロウ』の“女手いらずの家”にあった折り畳み式のソファーベッドや食器洗い、エコロジカルな資源循環型の残飯処理システムや『専売特許』でスナッブ・ポラートが乗っていた磁力の牽引力で推進する言わばリニアモーターカーなど、実に愉快で物珍しく観ることができた。それにしても『専売特許』での発明家のベッドに居ながらにして日常生活が事足るシステムというのは、まるまる『ウォレスとグルミット』で見覚えのあるものそっくりだったから、ニック・パーク氏の元ネタだったのだろう。また、視覚的な技法にも工夫が凝らされていて、『リバティ』のラストでの縮んだ警官の姿など思い掛けなくて、思わず笑いを誘われた。風物的なもの珍しさでは、『スケアクロウ』でのコイン式ガス供給システムが印象に残っている。当時の家庭へのガス供給システムとして、実際にあったものなんじゃないかと思った。 | ||||||||||
by ヤマ '04. 9. 4. 佐川町桜座 | ||||||||||
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