『ドリアン・ドリアン』をめぐる掲示板編集採録
my jazz life in Hong Kong」:kaoriさん
ヤマ(管理人)


 
-----*まずはお薦め香港映画祭-----------------------

(kaori)
 こちらではお久しぶりです。
 もし、実家にいたら私もオフ会参加できたのになー、と残念です。


(ヤマ)
 ようこそ、kaoriさん、お久しぶり〜。実家、大阪なんですね。
 そうじゃないかという気はしてたんですけど(笑)。いつか機会があるといいなぁ。


(kaori)
 京都なんですけど、大阪は近いですからね。


(ヤマ)
 京女でおいでやしたか、これはこれは〜。


(kaori)
 そうか〜。
 やっぱり隠しきれない関西人のノリがほとばしってるのでしょうか、私(笑)?


(ヤマ)
 あはは、そういえば、中国裏物ビデオ市場の話はノリがよかったですよね(笑)?


(kaori)
 いつか香港に出張にでも来られたときはぜひ(笑)。


(ヤマ)
 僕、行ったことないんですよね、まだ。
 香港映画祭とか行ってみたい気はするものの、


(kaori)
 香港映画祭は、なにげにお薦めです。200本ぐらいやるし、種類もさまざまだし、


(ヤマ)
 200とは半端じゃないですねー。一年分あまりじゃ〜ありませんかぁ!!


(kaori)
 特集も年によって違うし、だいたいその1年でカンヌ、ベニスなど映画祭で話題になった映画は選んでいるし。今年はSARSだったからほとんどいなかったけど、ゲストも結構来るし。それにチケットがすごく手に入りやすいんですよね。


(ヤマ)
 なんか怪しげな売り子さん達が巷を闊歩していそうですね(笑)。
 でも、言葉が・・(苦笑)。


(kaori)
 言葉の問題なら、日本映画ばっかり見る!とか(笑)。結構やるし。ドキュメンタリーもあわせるとかなりの数です。日本からは近いから監督とかもたくさん来ますし、ティーチ・インも聞けていいかもしれませんよ(笑)。


(ヤマ)
 いくら、いま地方で一番観る機会に恵まれないのが日本映画だとは言え、香港まで行って、それっていうのは、なんだかさびしいですよねー。


(kaori)
 高知でやらなくても香港でやる邦画はありますよ。ふふふ。


(ヤマ)
 ずっき〜ん!(笑)


-----*癒しのアジアって本当か?-----------------------

(kaori)
 ところで、「ドリアンドリアン」の感想を読みました。


(ヤマ)
 ありがとうございます。
 僕もkaoriさんの書いたもの、自分が書いた後、すぐさま探しに行って、既に読んではいるんですが、いつもに増して刺激的な文章でした。外国人とは言え、その土地に住んでいる方でないと書けないものだと思いましたよ。その地に住んでいることが、こうしてしっかと身になっている方というのは、なんか、とてもいいですね。


(kaori)
 「癒しのアジア」には私も苦笑というか、爆笑してしまいました。


(ヤマ)
 でしょう?(笑) ヤスイですよね、あまりにも(苦笑)。


(kaori)
 そうですねえ、日本での最近の流行り的な捉え方では、アジアは癒しかもしれないですね。女性誌的に。
 でも、私には、もはやアジアを癒しとは思えない...エネルギーあり余って疲れるというか、いー加減というか、なんというか(笑)。


(ヤマ)
 僕も、映画を通じてではありますが、むしろそういう印象を持っていて、いくつかの中国映画の日誌でも、イラン映画の日誌でも、そんなふうなこと綴ってます。『あの子を探して』とか『カンダハール』なんか、そんなこと書いてたんじゃなかったかなぁ。


(kaori)
 私の感想には、そういう自分の中でのアジア観がそのまま映画の着目点の違いにも出ていたような気がしました。私はどうしても香港でのエネルギッシュな彼女部分の描かれ方が見事で、その後はすっぽぬけかな、という気が強くしました。


(ヤマ)
 元々構成的には壊れている映画ですよね。あの印象深いオープニングの海を被せて二つの土地を映し出し、少女の語りで始まる家族の物語が、いつのまにやら北の出稼ぎ娘の話になって、少女は、最後に果物届けるためだけに出てきたんか?って(笑)


(kaori)
 彼女はその前の作品の「リトルチュン」に出てくるんですけど、ご覧になられましたか?


(ヤマ)
 未見です。こちらでは上映してないと思いますね。


(kaori)
 私はこの映画はすごく好きで、この少女を主役に撮ると聞いて楽しみにしていたので、見てがっかり。あら? てな具合でした(笑)。映画の中の時間軸としては、ドリアン→リトルチュンって気がしますけど。彼女の魅力は「リトルチュン」の方が全然よかったので残念です。


(ヤマ)
 ほほぅ〜、観る機会が得られるといいなぁ。


-----*「シンセン」と「北磨vには特別な意味があるのだろうか?--

(kaori)
 もしご覧になっていなかったら是非。
 あと、北からきた娘(を、香港では北魔ニ言いますが)シリーズを撮りたかったみたいですね。


(ヤマ)
 ある種のラベリングが施されているみたいですね。kaoriさんが書いておいでの、例の大陸側のトイレの事情の話には、う〜ん、効くぅって感じで、すっかりやられちゃいましたからね〜。


(kaori)
 この次の「ハリウッド★香港」もそうなんです。この映画は私、「ドリアン」よりおもしろかったです。日本でももうすぐ公開するみたいですね。


(ヤマ)
 こっちにまで来てくれるといいんだけどなー(笑)。


(kaori)
 あと、ドリアンが象徴するもの、というのも今一つよくわからなかったです。ドリアンってもう強烈にくさくて、スーパーでも姿は見えなくてもどこにあるかわかるぐらいだし(笑)。もーすぐ季節です。憂鬱です...(笑)。それほどの強烈さの何か、というのが映画の中では薄れてしまってる、と思いました。くさいけどやみつきになってやめられない(らしい。私は違いますが)という部分が、いったい何なのだろう?といろいろ考えます。


(ヤマ)
 映画の中では、僕は単純に、それこそ身体を張ってギネスものの数をこなし、南で大金を稼いできた彼女の「生」だと思いましたが、日誌にも綴ったように、いろいろな捉え方があるでしょうね。
 僕のような受け止め方すると、やみつきなるってとこが捌きにくくなっちゃうところもありますよね。一旦踏み入れると足を洗いにくいって捉え方もあるかもしれませんが。


(kaori)
 でも答は出ないですー。


(ヤマ)
 まぁ試験じゃないんで、出す必要もないんですよね(笑)。求めてみて、思いを巡らせるとこに味わいがあるんであって、ね。簡単に出ないほうがスルメのごとく、長く味わえて得かも(笑)。
 『ドリアン・ドリアン』で僕が訊ねてみたいと思ったことは、自分の日誌に「それにしても、中国に返還されて後の香港で、中国本土からの若い娘の売春出稼ぎをかように生々しく描いた作品を撮り、国外の映画祭などに出品していったのは、かなり凄いことではないかと思う。」と書いたことの実際のところはどうなんだろーってとこでした。
「北磨vって呼称には蔑称的ニュアンスがあるんでしょうか? 公然の事実だったりするなら、それを映画に取り上げても「かなり凄い」ってことには、ならないのかもしれませんね。
 映画のなかでチン・イェンが大金を稼いで帰ってきたことの実情を北の家族たちは、どこまで知っているとしたもんなのだろうか、とか、事情のわかる方に確かめてみたい気持ちがしたものでした。


(kaori)
 日本の方はよく誤解されるのですが、香港は中国に返還されてますが、香港と中国は、やはり2つの違う場所です。1国2制度ですから、法律も違うし、税金制度も、さまざまな制度も違うし、通貨も違う。大陸の人は簡単に香港には来ることもできません。(逆は簡単)。日本人を含めた外人が大陸に行くにはビザが必要ですが、香港に来るには3ヶ月以内ならビザは必要ありません。帰属する国が中国に変わりましたが、法律やらなにやらのさまざまな制度まで中国と同一になったのではないのです。
 香港と大陸の違いを実感するには、シンセンに行くのが一番です。こんなに近くてこーーんなに場所としてくっついていて、テレビとか香港のが映ってしまうし、情報としては香港のものなんでも入ってくるだろうに、国境を越えるだけで(香港と大陸の間には、ちゃんと入国管理局があり、入国審査があります)こーーーーんなに違うもん? ってぐらい、人の服やら髪型やらがいきなり大陸的になるので、結構おもしろいです。
 ですから、香港産の映画は香港産であって、中国産ではありません。大陸の会社が出資していない限り、中国では香港映画は外国映画扱いであって、国産映画ではありません。この映画は多分、公式には国内では上映されていないと思います。VCDは買えると思いますけれど。後半の大陸での撮影は、多分香港お得意のゲリラ撮影じゃないかと思います。許可なし撮影ではないかと。許可あって撮っているのなら、ちゃんと脚本の話してなかったんでしょうね(笑)。
 なので、大陸をマーケティングに入れないのであれば、香港産の映画は、何作っても平気です。しかし、最近は商売を考えると、大陸をマーケティングとして無視できないので、大陸の会社と提携したりして、なんとか大陸でも公開してもらうよう香港の映画関係者はがんばっています。人口700万の香港と12億の中国を比べれば、どちらを重視した方が賢いのかは明白ですよね。
 大陸で公開してもらうには、やはり中国政府に不利なことは描けませんから、香港映画といえど自然と社会ネタは描かなくなりますね。普通のおギャグな香港映画はそういった点で問題ないので、最近はどんどん大陸でも公開されるようになっています。


(kaori)
 長くなっちゃったので2つにわけました。
 「北磨vは蔑視とまでいかないけど、特殊な用語なんでしょうね。中国語は、隠語みたいなのがすごく多くて、結構おおっぴらに使うので、それが蔑視なのかどうかもはやわからないのです(笑)。もっと普通な呼び方は「北妹」です。妹は娘さんという意味ですが、しかし、誰かが私のことを「日本小姐」とは紹介しても「日本妹」とはあまり紹介しません。たとえば有名なAV女優を「日本妹のだれだれ」と言ったりしますので、そーゆう使い方です(どーゆう?)。
 たくさんいるんですよね〜。北妹は。結構おおっぴらに立ってます。そーゆうとこ行くと。看板もおおっぴらに出ているので値段までわかります。すごい安いです。200ドルぐらい。約3000円。ロシア妹の方が100ドルぐらい高いです(笑)。そんな値段でやってられん、と私は思うのですが。
 だからあの映画で貯金通帳が出てきたときびっくりです。金額÷数にしたらすげえ、とか思ったりして(やだわ、下世話で)。それにヒモに100はとられてたしー。300もらったとしても200だよ〜。やってられませんね。
 私も、故郷の人が本当に何も気づいていないのか、いつも聞いてみたいなあ、と思うのです。(直接でなく、シンセンとかでカラオケ小姐を愛人にしてる日本人おじさまに聞いて欲しい)うすうす感じたりしないのかしら? いくらなんでも。と。
 でも、自分で商売始めたっていうと信じてしまうのかもしれません。意外にそういうチャイニーズドリームで成功した人は、たくさんいるから。でも、田舎で同じ商売始めないと、疑いのまなざしにならないのかな?


(ヤマ)
 やはり kaori さんの話は面白い! とても詳しく、どーも、ありがとうございました。
 1国2制度っていうのは、聞いてるんですが、その割り切りようって、中国政治の了見の大きさと見るのか、たぬきぶりと見るのか(笑)。
 「シンセンに行くのが一番」とのシンセンが、かの映画でもとりあげられていたのは、そういうことだったんですね。香港とシンセンと牡丹江(東北地方)っていう組み合わせが、ある種の典型的な土地柄を示す場所だったわけですね。なるほど。香港とシンセンって対岸って程の距離だったりするんですかね。
 それにしても、いくら1国2制度とはいえ、「大陸をマーケティングに入れないのであれば、香港産の映画は何作っても平気」ってほどの表現の自由が保障されているとは驚きでしたね。と同時に、最近の香港映画の商売事情を伺って、これまたごもっともと大いに納得です。そういう意味からは、果物野郎はガッツありと観るべきとも思ったり(笑)。
 「姐」はおじょうさん、「妹」はねえちゃんって感じなのかしら(笑)。でもって「磨vはスケ(古いなぁ(苦笑))ってとこ? 茹でてるんじゃないですよね(笑)。
 kaoriさんも、故郷の人が本当に何も気づいていないのか、聞いてみたいとのことですが、「意外にそういうチャイニーズドリームで成功した人はたくさんいる」ということもあるのでしたら、あの映画では、そのへんビミョーでしたよね。京劇学校出ても不景気な東北では成功できないけど、景気のいい南でならって受け取っているとも思えなくはない描き方でした。
 でも、このあたりをどう受け取るかで、真似て南に向かう従妹の姿や彼女を次の機会には連れて行ってやるよう頼む叔母さんの姿、チン・イェンが稼いで帰った金で親戚じゅうをもてなす両親の姿の持つ意味が、変わってきますよね。嘗てとことん哀しく描かれた、日本の東北の農家の娘の身売りの話に通じるような、やむなき了解が得られているようなことなのか、そうではないのか。かなり気になるところなんですよ。映画では、ぼかしているだけに。


(kaori)
 私の話がおもしろいというより、外国に住んでて日本ではわかりにくい話を知りやすいから、ということですよ、きっと。
 中国政府のことは、やはりたぬき、というべきなんでしょうか? どうなんでしょう(笑)。なんとなく、中国に帰属さえすれば、あとは別にどーでもいい、というメンツの問題だけだった(返還について)という気がしないでもありませんが(笑)。
 香港は、主に香港島という、政治(市議会議員のような政治)、経済の中心地となっている島と、九龍側とに分かれていて、この九龍側はそのまま大陸と陸続きです。なので、まあ、東京でいえば、大手町とか銀座とかそーゆうような所からシンセンまでは、電車で1時間ぐらいですが、国境直前の街(結構普通のベッドタウン)なら、1駅なので、5分でいけます(笑)。物価がすごい違うので、週末は買い物に出かける人がすごいんです。香港から。
 シンセンに行くと、映画にも出てきましたが、いきなり「ケ小平のなんとか理論に基づいて、なんとかかんとかの共産主義をかんとかかんとか」とかゆうケ小平のでかいポスターとともに、そーゆうスローガンが街中に出てきて、それでまず、すごい雰囲気の違いを感じることができます(香港にはないので)。あとはやっぱり広いので、道路が広い、空が広くて、そーゆうところは、シンセンの方が私は好きです。
 香港は、中国の「特別自治区」ですが、シンセンは、中国内の「経済特区」で、実はシンセンに行くのでさえ、普通の中国人は許可証が必要です。そうそう誰も彼もが行ける場所ではないのです(まあ、裏道あるんでしょーけど)。
 表現の自由に関しては、香港人はすごぉぉぉくナーバスです。映画のみならず、新聞などのマスコミに関しても。言いたいこと言えなくなるのでは? ということは、すごく心配みたいで。それに関する条例でいつももめてます。
 私のような外部から客観的に見ると、そんなことで急に締め付けたりするほど香港が危ない(独立するとか)地域ではないので、中央としてはどうでもいいと思っていると思うんですけど...
 果物野郎の新しい映画はトイレについてで、すさまじくトイレネタが多いそうなので、私は見に行く気になれません.....インディーズ出身なので、撮りたいものを撮る、というスタンスなのかもしれませんね。香港の大手映画会社などは、とにかく今は大陸重視と言う感じですけど。チャウ・シンチーも次は絶対に大陸で公開してもらうべく必死のようですが。
 故郷に関しては、やはり現実もみんなうっすらとわかりながらも、わざとぼやかしているのかもしれませんね。


(ヤマ)
 ところで、報告と御礼です。少々遅くなってしまいましたが、一昨日づけの拙サイトの更新で、こちらの『ドリアン・ドリアン』を例の直リンクに拝借しております。この掲示板でもいろいろ教えていただきましたが、僕にとっては凄くヴィヴィッドに生々しいほどに映る姿が、Kaoriさんには、いわばステレオ・タイプ的に映っていたというのが実に衝撃的でもありまして、生活体験のあるなしの違いを際立って感じました。くだんのトイレの話など、僕には想像も及ばない話で(笑)、そこを香港と大陸とのギャップを示す場面と解することなど思いもつかないことでした(感心)。ありがとうございました。


(kaori)
 いつもありがとうございます。ヤマさんの意見で、私もいつも新鮮な目を持つべきだな〜と思いました。とても難しいことですけれども。
 私がステレオタイプだと思ったのは、彼女の香港の生活の描かれ方ではなくて、親や親戚・友人にだまって風俗→一攫千金→故郷に錦を飾ったものの、誰にも言えなくてなんともいえない思いをする、というそのパターンが、どこの国の人も考えそうなステレオタイプな考えだと思ったのです。中には、風俗やって何が悪い?と思っている女性だってたくさんいるのに、どうして、わざわざこのようなステレオタイプな考えに則って映画を作るのだろう?と思ったからです。まして、インディーズ社会派出身なら、そのような、ステレオタイプではなく、革命的なことを撮って欲しい気がしました。
 でも、香港人ってかなり保守的なので、まあこういうノリになるのかな、と思ってしまいますけれども。。しかし、その点、同じく北から来た娘を撮っている「ハリウッドホンコン」は、ステレオタイプからは若干外れてて、その娘の堂々さとドライさが、私には気に入っています。公開されたらぜひご覧になって比べていただきたいです。
by ヤマ(編集採録)



ご意見ご感想お待ちしています。 ― ヤマ ―