『ピンポン』をめぐる往復書簡編集採録
チネチッタ高知」:お茶屋さん
ヤマ(管理人)


  (ヤマ)
 『ピンポン』観てきたでぇ。
 このところの美術館上映と文学館上映で日誌書き疲れたんで、もう書く気はないがやけんど、『GO』『ランドリー』は、うまいこと乗れたに『ピンポン』は途中までどうも乗れんかった(たはは)。
 なんでやろーっと後から考えてみたがやけんど、どうも脚本が合わんかったみたいやね、僕と(とほほ)。量じゃのうて質的に過剰な感じの台詞が連発されるリズムに妙に乗れんで、にんまり笑えもせんし、かっこええとも思えず、どうもいかざった。強い台詞が多すぎるんよねー。


(お茶屋)
 私は冒頭のペコが川へ飛んだストップモーションのところから、つかみはオッケーでしたよ。


(ヤマ)
 あそこは、僕もオッケーやったんよ。もういっぺん出てきたときは、ちょっちシラーやったけんど(笑)。
 夏木マリのおばばにしても、竹中のバタフライ・ジョーにしても作り過ぎっちゃ作り過ぎやと思わん? もっともそれで言うたら、ドラゴンもアクマも月も星も、みんな〜そうながやけんどね(笑)。


(お茶屋)
 作りすぎっちゃあ作り過ぎですが、私はまったく気にならなくてノリノリでしたね〜。


(ヤマ)
 そうやろーね。面白かったーって言いよったもんね。
 作り手側は意図的にやりゆうわけで、そこに文句言うたちしょうがないかねー(笑)。


(お茶屋)
 よくおわかりじゃないですか(笑)。


(ヤマ)
 うん(ブイブイ)。
 そやから、そこに文句は、つけんづつに強い台詞の連発のもたらすリズムが僕に合わざったと言いゆうがやけんど。


(お茶屋)
 原作を読んだけど、セリフなんかは原作のまんま。キャラクターもまんまやもん。ますます文句、言えんろ(笑)。


(ヤマ)
 こう来られると、確かに苦しいねー(笑)。
 けんど、台詞がおんなじでも、その継ぎ方まで一緒ながやろうか?
 原作に、思わず食いつきとうなる捨てがたい台詞がいっぱいあって、なるだけ拾おうとして、ああいうリズムになったとかいうところはないが? 往生際が悪いけんど(笑)。


(お茶屋)
 「継ぎ方」って間のこと?


(ヤマ)
 そうそう。それと強い台詞をあんなにたくさん使うがやったら、それ以上に、いろんな台詞が挟まっちょってしかるべきじゃないかと(笑)。


(お茶屋)
 原作は、もっと間がありますね。
 映画にも、ある程度は独特の間が受け継がれていたと思うけど。
 そんなにセリフの連発やったかね〜?


(ヤマ)
 僕の印象では、なんかそんな感じやったけんどねー。
 けんど、それがうまいこといっちゅうかどうかは、あるわけやしね。
 まぁ、その作り過ぎちゅう部分を楽しめるか、乗り損ねるかで観るほうの感じがすごく違うてくるわけやけんど、乗り損ねた僕でも、二度目のインターハイでの対戦自体は、けっこう面白う観たがやけんどね。


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(お茶屋)
 原作と微妙に違うのは、オババ(夏木より枯れている)と小泉(竹中より枯れている)かな。でも、セリフはほとんど同じだし、キャラクターのエッセンスは映画に十分反映されていると思います。


(ヤマ)
 枯れた味が出てくるとかなり違う気もするなー。
 枯れちゅうどころか、妙に極め人っぽかったもんなー。
 なんか全てお見通し的な凄さを振りまきよったしねー。


(お茶屋)
 うん、原作でもすべてお見通し的凄さでしたよ。
 落ちついていて味わい深かったな〜。←ここが違う。


(ヤマ)
 やっぱ、凄さを振りまいちゃイカンやろー(笑)。


(お茶屋)
 あと、原作と一番違うところは、映画はヒーロー側がメインで、原作は敗者(ヒーローにあこがれる)側がメインなところで、原作は映画よりほろ苦かったですね。
 まあ、原作の方で露骨にペコが脇に回っているわけじゃないけど。
 原作だけの登場人物とか、ラストシーンとかで敗者側がメインだと思いました。


(ヤマ)
 おおー、ここはすごい重要そうじゃいか!


(お茶屋)
 そうそう、最も映画と原作の異なる点だと思います。


(ヤマ)
 映画にもその影は窺えるよねー。
 確かに映画でも、そういう視座はきちんと描かれちょったよね。
 やっぱりワキやった、ワキやった(むふふ)。
 ちょっと原作に興味が湧いてきたねぇ〜。


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(ヤマ)
 ところで、お茶屋さんは、スマイルがチャイナに負けた後、ジョーとの約束で勝つための卓球に取り組み始めたことについて、どういう観方をしちゅうろう?


(お茶屋)
 あ、これ、よくわからなかったんですよ。なぜ、急にスマイルがやる気になったのか。スマイルってばポーカーフェイスだし(笑)。
 とにかく、ジョーとの約束を守るためじゃないことは原作を読んでなくても断言できます!


(ヤマ)
 そうでねー。僕がここに興味を覚えたがは、やっぱり元々原作にあったヒーローに憧れる側がメインやったというところが、きちんと映画のなかに忍び込んじょったやきやろうね。


(お茶屋)
 で、今、スマイルはどうして急に発奮したんだろうと考えているのですが・・・・。

理由その1
 チャイナに負けたのが悔しかったんじゃないかな。
 勝ちに行っていましたからね。勝てる相手に負けてしまった、その負け方のカッコ悪さが我ながら許せない。

理由その2
 あるいは、ペコが完敗した相手に自分が勝てるということをペコが知ってしまった。もう気兼ねすることないじゃん。と思ったのでしょうか。
 でも、その場合、スマイルは自分の実力を知っていてわざとペコに負けていたことになるけど、わざと負けていたわけじゃないですよね。チャイナにもわざと負けたわけじゃなくて、自分から「かなわない」と思ってしまう精神的な弱さがプレーに出てしまったわけで。(「かなわない」というのは強い 相手にも弱い相手にも使えますし。)

理由その3
 もしかしたら、チャイナとの試合で自分だってヒーローになれるかも!と思って発奮したのかもしれません。

理由その4
 それとも、ペコの「スマイルは(おいらを)待ってたんだ」というセリフからすると、チャイナとの試合後、全力でペコと対戦したことがないことに気づいて、全力でペコと対戦したいと思うようになったのかもしれません。
 スマイルはペコを絶対的なヒーローだと思っているから、そのヒーローと戦うためには生半可なトレーニングじゃだめだと思っているはずで、スマイルの発奮材料としては一番説得力がありそうですね。

 こんだけ書いたら、どれか当たってるだろー(笑)。


(ヤマ)
 へっへっへ〜。
 僕の思うちょったがにピタッと当たったがは、なかったでー。

理由その1(勝てる相手に負けてしまった)について
 お前には後がないんだぞってチャイナへのコーチの声援が耳に入って勝つことへの集中力が萎えてしもうたことかえ? なるほどね。
 けんど、スマイルは、そういう自分に対して自己嫌悪を本当に持っちょったろうかねー?


(お茶屋)
 自己嫌悪はともかく、試合の前に風間から「君のプレーを嫌悪する」とはっきり言われていたし、珍しく勝つ気で行ったのに負けたら気分悪いでしょう。


(ヤマ)
 よかぁないろうけんど、結局それじゃあ発奮の動機づけの主因が自身のためというか、自己実現ってことになるろう?
 勝つことへの執念が希薄やとか、ヒーローになりたいきとかやったら、自己実現のためということになるわけで、僕は、スマイルは、そんなタマやないと思うがよ。


(お茶屋)
 そんなタマじゃないと私も思うけどね(笑)。


(ヤマ)
理由その2(もう気兼ねすることないじゃんと思った)について
 それまでは、気兼ねしちょったがやろうか。
 これは、ちょっと違うがやないかと思うなー。

  >自分から「かなわない」と思ってしまう精神的な弱さ

 卓球の実力というところで「かなわない」と感じちょったんじゃなくて、試合に勝ちたいという思いの強さとか、ムキになれるところというかそういうところで「かなわない」って思いよったがやないろうかねー。
 それで、ついつい気後れが出てきよったがやないろうか。


(お茶屋)
 そうそう。そういう意味で書いたのよ。
 自分より弱い相手だけど、そう闘志を剥き出しにされちゃ「かなわんな〜」という感じ。


(ヤマ)
 卓球自体の才能や実力とは違うところながよねー、これは。
 けんど、むしろ決定的ながはこっちで、才能はそれをカバーする努力というがもあるし、実力はたゆまぬ継続で養っていくことができんことはないけんど、こればっかりは、どうにもならんところがあるでねー。


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(ヤマ)
理由その3(もしかしたら自分だってヒーローになれるかも)について
 これは、僕は全然そうは思ってないんだよね。


(お茶屋)
 うん。そんなタマじゃないと私も思うけどね(笑)。
 ただ、自分はなれっこないと思っているうちはヒーローに憧れるばかりだけど、その心のうちに自分もなってみたいという気持ちが潜んでるんじゃないかと思ったもので(^_^;。そんなんないかな?「憧れ」を分析してみてくださいよ(願)。


(ヤマ)
 憧れにもいろいろあるがやろうけんど、僕がスマイルを見よって感じたがは、自分もなってみたいという気持ちの希薄さやったねー。
 どっちかというと、そういうのが煩わしいタイプやないろうか。
 ヒーローとか有名人というのは、みんなぁの視線を浴びることにタフじゃないと当然いかんわねぇ。タフどころか、むしろそれを喜びにできんといかんワケで、けんど、スマイルは、それが苦痛まではいかんにしても鬱陶しいというか、気が進まんと思うがよ。それは卓球の才能や実力で問われる資格とはまた違う部分で、そういう根本部分の資質の差というもんが、ヒーローの側とヒーローに憧れる側とに振り分けるんじゃないろうかねー。
 才能や実力によって出てきた結果以上に、そういう部分での資質の違いというがは、決定的やと彼らは思うちょりゃせんろうかねー、そこがヒーローの側とそうではない側ということで。
 そやから、実際に自分がヒーローになりたいワケじゃあないけんど、底の底のところでは、なってみたい思いというのはあるかもしれんよね、お茶屋さんが言うように。そやからこそ、憧れもするわけじゃろーねー。


(お茶屋)
 「卓球の才能や実力で問われる資格とはまた違う部分でそういう根本部分の資質の差というもんがヒーローの側とヒーローに憧れる側とに振り分ける」というのは、そうですね。
 スマイルってかなり特異なキャラという印象ですが、考えてみたら彼にシンパシーを感じる面倒くさがりは、ペコやアクマなんかに比べると圧倒的に多いかもね。


(ヤマ)
 そうやろ〜(笑)。
 髪型一つ取っても、あんなおかっぱ頭やスキンヘッドにするよりスマイルのほうがずっと身近いやんか(笑)。普通人というか読者なり観客の足場は、スマイルに置いちゅうと思うがで、作り手は。
 僕らぁが今までに生きてきたなかで見ても、あいつがもっと本気で力を出したり、その気を持ったら、間違いなく頭角を現すろうに、怠惰というがやのうて、そういう意欲を持てんとにおる連中というがが、おったろう?(笑)


(お茶屋)
 ヤマちゃん自身のこと言ゆが?(笑)


(ヤマ)
 あれっ?(笑)
 映画のことやったら、もう本まで出してもろうちゅうき、これ以上の分を立てるもんでもないろうと思うけんど、ほんなら、これは仕事の話かえ〜?
 う〜ん、確かに怠惰にしゆうつもりはないけんど、そもそも頭角は全然現しとうはないわね〜(笑)。今みたいに遊び事にうつつを抜かす生活は、できんなるもねぇ(あは)。


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(ヤマ)
理由その4(全力でペコと対戦したい)について
 これは、そういうところもあるかもしれんけんど、それやったら、映画でドラゴンとペコの対戦で謳いあげたものをスマイルとペコの対戦場面でのハイライトにするはずやと思うで。


(お茶屋)
 う〜ん、そうかな〜?
 ペコ対風間の試合は、卓球が苦しいものでしかなくなっている風間を救うために用意されたものであって、それはペコとスマイルとの対戦で謳いあげるものじゃないと思うけど。


(ヤマ)
 僕は、風間を救うために用意されたシーンというより、苦しさと戦いながら手に入れられる境地というのをもひとつ突き抜けたところにある、真に楽しむことのできる境地というものがあることを視覚的に示したシーンやと受け取っちょったね。
 そこへ連れていってもらえたおかげで、結果的に風間は救われるがやけんど、ね。


(お茶屋)
 うん、そうですね。
 私が言いたかったのは「もひとつ突き抜けたところにある真に楽しむことのできる境地」を視覚的に示すシーンに必要な相手は、「苦しさと戦いながら手に入れられる境地」しか感じられなくなっている風間でなくてはならなかったということなんです。


(ヤマ)
 なるほど、なるほど。
 それは確かに、そのほうがより効果的なわけやから、あれは風間との間で描かれるべきシーンやね。


(お茶屋)
 ペコ対スマイルの対戦で大事なのは、スマイルはペコをヒーローとして絶対視していたため無意識のうちに全力を出せないでいた、一方、ペコは練習をまったくしないで本当の実力を出せないでいた、この二人が全力を出しきるということなんじゃないかな。


(ヤマ)
 これはそのとおりやと僕も思うね。
 この、全力を出しきることが前提としてあって初めて、その対戦で生まれてくるものがあるということやもね。
 ただスマイルは、無意識のうちに全力を出せんかったんじゃあないと僕は思うで。明るく光りゆうペコを見よりたかったがやと思う。自分は勝ってもあんなに明るく光ったりはできんき、勝ってもしょうがないって気があったように、どうしても思うがよ(笑)。


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(ヤマ)
 僕はねぇ、スマイルはペコがアクマにも負けたがに凄いショックを受けちょったと思うがよ。
 それは初めのほうで、ペコがチャイナに0負けする前に二人で打ち合う音を中国人の師弟が耳にして、一方が本気じゃないって見抜いちょって、チャイナはスマイルとやりたがったろう? そんで、ペコを負かした後、中国師弟は、ペコも才能はあるけんど、それを隙だらけのままにさせちゅうがはスマイルのせいやって言うやんか。
 スマイルは、自分はそれほど卓球の勝ち負けに執着心はのうて、それより試合に負けたら人目もはばからんとに泣くペコが喜びゆう顔を見ることが好きで、ペコのそういう顔を見ていたいから、単純にそれだけで勝ちにはいかん卓球をしよったがやろ?
 ペコの才能をつぶしたいという思いは、全然なかったはずながよ。
 この星の一等賞になりたいというペコの夢が実現することを楽しみにもし、内心応援もしゆうつもりやったと思うがよね。ペコの回りには練習相手にもなれる奴がおらんわけで、自分やからこそ、その相手がしちゃれると思いよったんじゃないろうかねー。
 ところが、手助けどころか足を引っ張りゆうと指摘されたわけよね。
 けんど、スマイルからしたら、ペコのタイプは豚もおだてりゃ木に登る型のノリで延びていくタイプやと思いよったもんやから、ライバルとして打ち負かしたりしたら、すねたりメゲたりしてあんまりようないと思いよったはずながよ。実際、佐久間に負けた後のペコはそうやったし。
 けんどねー、スマイルも自分にならいざ知らず、佐久間にさえも負けてしまうところまで、ペコを停滞させちょったかとショックを受けたがやないろうかねー。でもって、自分にならいざ知らずって思いよった自分もチャイナには負けちゃうワケで、その思い上がりがペコをスポイルしたような後悔にとらわれたんじゃないかなー。
 ほんで、今までのペコへの向き方じゃいかんと思うたがやないろうか。
 メゲてイジケたりもするかもしれんけど、どうせこのままやったらペコはもうヒーローにはなれんずつに終わっていくわけやから、今度は挑発するほうへ路線変更したがやないろうかね。ペコがもう一回ヒーローとなって帰ってくることに賭けるような思いで。ほんで、スマイルは、ぎっちりヒーローって本当におるもんやと思う?ってジョーなんかにも聞いたり、ひっとりでぼやいたりもしよったがやと思うがよ。
 ほんでもって、最後の試合、スマイルは既に、ペコにホントにヒーローになってもらいたいと自分が思いゆうがやったら、再起してきたペコの弱点をも徹底的に突けるような勝負をしなきゃダメだと思うようになっちょったがやないろうかねー。


(お茶屋)
 ふむふむ。
 私の感じたことと違う重要な点は、スマイルがペコにわざと負けていたという点ですね。


(ヤマ)
 わざと負けよったというよりも、前にも書いたように、勝ちにはいかん卓球をしよったと思うがよ。
 結果的には、わざと負けゆうことになるろうけんど(笑)。


(お茶屋)
 そうかな〜(違うんじゃないかな)と思いつつも、一理あると思ったのは、スマイルが後に先生になったことなんですよね。
 その前にもスマイルはオババに子どもを教えてやってくれと頼まれてたし、何でもお見通しのオババは、スマイルに指導者としての資質があると見抜いていたのか!?とヤマちゃんの解釈(いわば、スマイルのペコに対するコーチ術)を読みながら思ったことでした。


(ヤマ)
 おおー、そこには僕は思い至ってなかったなー。
 なるほどぉ、ますます補強されてきたやいか(笑)。


(お茶屋)
 ははは。敵というわけじゃないけど、いい塩を送ったかな(笑)。


(ヤマ)
 よい塩梅じゃった(笑)。


(お茶屋)
 私はスマイルが先生になったことが意外だったので、どうしてだろうと一応考えてたんですよ。それで小泉(ジョー)の存在がスマイルにとって大きくなってたんだろうなと理由づけしていたのです。


(ヤマ)
 この観点は、僕には全然なかったがやけんど、今回のやり取りでふ〜む、なるほどってな気がしてきたで〜(笑)。
 人を育てる資質というわけやね。


(お茶屋)
 話はもとに戻りますが、ヤマちゃんが言うようにスマイルがわざと負けていたり、コーチみたいなことをしたりじゃ、ペコに対する崇拝度が低くなりやしませんか?


(ヤマ)
 あ、僕は、無意識のうちに全力を出せんとおるというような受け取り方をしちゃあせんがやき、元々崇拝とかいう感じは受け取ってないがよ。
 純粋にペコのあの明るさと輝きが好きやったんやないろうかね。


(お茶屋)
 まあ、自分にないものやし、あの無邪気さ、好きやろうね。
 スマイルは才能や実力のうえではペコをヒーロー視していて、その他の点では無邪気なペコをお守している部分がある。ペコはペコでスマイルがいてくれる安心感がある一方、人付き合いが苦手なスマイルのお守をしている(というかかばう)部分がある。持ちつ持たれつ、お互い相手のことが好きで、いい関係ですね。


(ヤマ)
 そうながよ。


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(お茶屋)
 スマイルは自分がチャイナに勝ちそうになって、「もしかして自分はペコより強い?それじゃ、ペコはヒーローじゃない?」とペコが本当にヒーローかどうか不安になったのかも。
 それで、「ヒーローっていると思う?」と尋ねずにはいられなかった。「ペコが本当にヒーローなら自分に勝つはずだ。全力を出しきった自分に勝つはずだ。」そういう思いでトレーニングしたのかもしれませんね。
 スマイルは全力を出せば出したほど、ペコに負けたことが嬉しかったに違いありません。「ペコはやっぱりヒーローだー!」って。


(ヤマ)
 僕が見込んだヒーローだったー!ってね。
 ほんでもって同時に、自分が我知らず潰しかけよったヒーローを生き返らせることができて、安心したというか、ほっとできた部分もあったがやないろうかね。今度の再起は本物やって。


(お茶屋)
 私の前回の説に若干の修正をほどこさないかんなりましたね(笑)。


(ヤマ)
 それもいいじゃない(笑)。
 ほんなら、もうひとつ、ペコが再起できた理由を僕がどういうふうに受けとっちゅうと思う?
 

(お茶屋)
 ええー!?また難問を・・・。


(ヤマ)
 今度は当てられそうやなー(笑)。


(お茶屋)
 しかも、プレッシャーまでかけて(笑)。
 う〜ん、ペコが再起できた理由。幅広いですね。
 きっかけとなったのは、アクマの「血反吐を吐くまで走りこめ、○○するまで素振りしろ」と言われたことだと思うけど。「そうか、それやってなかったな、おいら。」みたいな感じ。


(ヤマ)
 きっかけは、アクマで同感やけんど、アクマの与えたものとして一番大きかったんは、「お前がこんなんで止めてしもうたら、 お前に勝ちたい思うて必死で練習した俺らはどうなるんや。」というような言葉やなかったかと思うんよ。
 スマイルやアクマといった幼なじみの間で暗黙の了解事項のようにしてあったと思われる「ヒーローとしての負託」を率直に突き付けられたわけやろ。


(お茶屋)
 ペコはスマイルにも負けたと思っているんですよね。
 それで、すっかり自信を喪失して自分には才能がないと思っている。それでラケットを燃やしたわけで。
 それでも、卓球タムラをうろちょろしている。卓球から離れられない自分がいるわけで。そこへアクマのセリフがあって、やる気になったのが再起できた要因になってるでしょ。


(ヤマ)
 そうなんよ。きっかけはアクマ。


(お茶屋)
 それから風間との戦いで、勝つことにこだわって負けそうになったとき、「楽しめる、足は何ともない」というスマイルの声が聞こえたけど、これはペコ自身の声でもあったわけで、このときにヒーローってどんなものか自覚ができたのかもしれません。


(ヤマ)
 そういう意味では、スマイルも加わるわけやね。
 いずれにしても、幼いときからの腐れ縁友達よね(笑)。
 アクマなんぞこの試合の後、感涙をこぼしたんやもねー。


(お茶屋)
 負ける怖さを知ってスマイルの期待からも逃げていたけど、勝ち負け以前に自分のプレイをすることのカッコよさに気がついたんじゃないかな。(「勝ち負け以前に自分のプレイ」というのは、ちと教条的かも(^_^;。)
 だから、そのあとのスマイルとの対戦は、ヒーローとして戦ったんじゃないかな。


(ヤマ)
 勝ったら金を巻き上げ、負けたら人目を憚らず泣いて悔しがる、勝ち負けに徹底的にこだわっていたペコと勝ち負けに対して、なりふりかまわぬ執着心をどうにも持てないゆえに試合で全力を出す気になれなかったスマイルやったわけやけど、ペコはこのとき、勝ち負けに執着する以上のものを見つけて卓球をしよったと思うがよ。
 それは、ひとつには、お茶屋さんが言うようにどうしたって自分は卓球が好きやっていうことに気づいたことよね。もうひとつが、スマイルの笑顔をいつ見たのか思いだしたことやと思うがよ。


(お茶屋)
 ほほぉ〜。


(ヤマ)
 僕はねー、この話は、卓球に全力で向かえなかったスマイルがペコを再びヒーローにするために一回り成長できた話であると同時に、スマイルに再び笑顔をもたらすために苦手な地味な練習を耐え抜き、心底卓球が好きやいうことを再認識して一回り成長できたペコの話や思いゆうき、きっかけはアクマやけんど、ペコが再起できた一番の理由はスマイルの笑顔をいつ見たのか思いだして、また笑わせてやろうと思うたことやないかと思うちゅう。
 そやからこそ、風間との試合で苦しいときに「楽しめる、足は何ともない」というスマイルの声がペコに聞こえてきたがやと思うで。
 もちろんスマイルが、ペコにヒーローとしての再起を願うちょったという思いの強さがあって伝わったという面もあるろうし、そこには僕と全力でやり合おうよっていう呼びかけが伝えさせた面もあるよねー。
 実際、あの時点では、スマイルが人足先に決勝進出というポジションを得て「ヒーロー見参」を待ちよったわけやしね。


(お茶屋)
 なるほどね。
 スマイルはペコのためを思い、ペコはスマイルのためを思いで、美しくていいですね。


(ヤマ)
 ここんところが前に出て来すぎたら胡散臭うなるがやけんどね(笑)。
 もちろん大前提には自分のためというのがあって、けんど、自分のためだけじゃあないという要素が付加されちゅうところがやりおおせれる秘訣やろうと思うがよね〜。
 どっちか一方だけの動機付けでは、なかなかうまいこといかんもんやと思うワケよー(笑)。


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(お茶屋)
 ちなみに、タムラのチームで優勝したとき、なぜ、スマイルは笑顔だったのかということと、ペコはどうしたら(何をしたら)またスマイルの笑顔が見れると思ったかということを、ヤマちゃんはどう考えていましたか?
 これを聞いて『ピンポン』の締めくくりにしよっかな(笑)。


(ヤマ)
  >タムラのチームで優勝したとき、なぜ、スマイルは笑顔だったのか

 どうせペコのことやき、スマイルがここまで来れたがは自分が一生懸命教えたからやって得意満面やったろうし、ほらー絶対できるようになるって言うたやろーって嬉しそうにペコに言われ、そういうペコを見るがが嬉しかったろうし、その期待に応えられた自分が嬉しかったんやろうね。


(お茶屋)
 なるほど、なるほど。
 特にペコの期待に応えられたことが嬉しそうな笑顔でした。


(ヤマ)
 だよねー。

  >ペコはどうしたら(何をしたら)またスマイルの笑顔が見れる
  >と思ったかということを、ヤマちゃんはどう考えていましたか?

 タムラで優勝したときのように二人が力を合わせて風間にインターハイ連覇をさせんとに自分らぁが勝つことやと思いよったがやないが? 優勝の喜びを二人で分かち合うことやね。

 もっともスマイルは、そんなこと以上にペコのヒーローとしての再起を喜んだろうと思うけんど、ペコ自身までもがそういうふうに思いゆうというのはやっぱちょっとヘンじゃろう?


(お茶屋)
 ヘンじゃないよぉ。
 私はペコはスマイルからヒーロー視されている自覚があって、


(ヤマ)
 ま、あいつは厚かましい奴だからね(笑)。


(お茶屋)
 それならヒーローになっちゃりましょう、


(ヤマ)
 おだてりゃ木にも登る豚!(笑)


(お茶屋)
 ヒーローになれるかどうかはわからないけど、とにかく全力でスマイルとぶつかりましょう、「それをスマイルは望んでいるかんね」と思っていたと思います。


(ヤマ)
 あいつ、そんなふうに想像力のある奴やったんかなー(笑)。


(お茶屋)
 うん。スマイルのことは、けっこう把握しちゅうと思うで。


(ヤマ)
 僕は、ちょっと過剰なまでに単純な奴として受け取っちゅうがやけんど。
 シンプル・イズ・パワーって感じでね。


(お茶屋)
 ペコは、階段で「ヒーローっていると思う?」とスマイルに聞かれて、スマイルが何を言いたいかわかったから、一時はそれから逃げたし、後には逃げるのを止めて膝の怪我を押してスマイルとの対戦に臨んだのだと思います。


(ヤマ)
 なるほど。こいつは、そう観るべきところだね、やはり。
 敢えて単純そうな造形に力点を置いているように見えた罠に、僕は嵌まっていたかな(笑)。
 そう受け取るほうが果たし得た理由について僕が見て取ったところともより整合性が取れるわけだしね(ふむふむ)。


推薦テクスト:夫馬信一ネット映画館「DAY FOR NIGHT」より
http://dfn2011tyo.soragoto.net/dayfornight/Review/2002/2002_09_09.html

推薦テクスト:「多足の思考回路」より
http://www8.ocn.ne.jp/~medaka/pingpong.html

推薦テクスト:「岡山で映画を観よう!!!」より
http://www5b.biglobe.ne.jp/~blackish/Movie
/ReviewOfMovies/Movie4/Pingpong.htm

推薦 テクスト:「チネチッタ高知」より
http://cc-kochi.xii.jp/jouei01/0208-5pinpon.html#pingpong

推薦テクスト:「THE ミシェル WEB」より
http://www5b.biglobe.ne.jp/~T-M-W/moviepingpong.htm
by ヤマ(編集採録:お茶屋)



ご意見ご感想お待ちしています。 ― ヤマ ―