『インディラ』(Indira)
監督 スハーシニ


 意外なほどに冴えない映画であった。脚本に『ボンベイ』のマニ・ラトナム監督が名を連ねていたので、少し期待していたのだが、かの作品が「ドキュメントなリアリティとドラマティックなファンタジーとが木に竹を継ぐような形で調和を求めずに混在していて、そのことが破綻や違和感に繋がらずにダイナミズムとして結実したところが奇蹟のエンタテイメント」となったのに比べ、ドキュメントなリアリティにもドラマティックなファンタジーにも観るべきほどのものはない。
 娯楽性も中途半端で、そのなかに何か問題意識や社会性を取り込んでピリッと風刺を利かせるというには、社会的なテーマ性が前面に出すぎているし、その割には、そのテーマ性に深みがなく、人間ドラマとしての展開や人物造形あるいは演出といった点で、力不足が目立ったように思う。看過できない大事な問題を取り上げた意欲作なのだが、残念である。
 色彩が美しかったことには、目を惹かれた。ことに自然であれ、衣装であれ、僕の好きな緑色が鮮やかに美しかった。それも大事なことではあるけれど、やはりそれだけでは満足できない。
by ヤマ

'99. 5.21. 県民文化ホール・グリーン



ご意見ご感想お待ちしています。 ― ヤマ ―

<<< インデックスへ戻る >>>