『ハーフ・ア・チャンス』(1 Chance sur 2)
監督 パトリス・ルコント


 こんなにも荒唐無稽で、凡そリアリティとは縁のない、もっと言えば漫画的ですらある物語を渋くカッコよく決めてみせるのだから、さすがにドロン、さすがにベルモンド、さすがにルコントといったところだ。派手なSFXやどぎつい刺激で観客を圧倒するのではなく、役者の存在感と洒落た会話で存分に楽しませてくれ、昔懐かしい娯楽映画のある種の原点を思い起こさせてくれる。かと言って、昔のスタイルをなぞっただけでは今の観客に全く通じないことをよくわきまえていて、現代的なスピード感覚とオシャレというものを映画のリズムとして充分に意識している。達者なもんだ。
 あんなスーパー初老の男がいるはずもないのに、あの二人だと許容できてしまうから不思議だし、二人のその持ち味を存分に引き出したルコント監督も見事。そして、その二人と張り合って、いささかもひるむところのないヴァネッサ・パラディの存在感も大したものだ。映画が進むに連れて、観ているこちら側の頬がニヤニヤ緩んできて、何とも楽しい気分になってくる。ご都合主義の展開や出来過ぎだぁの設定も全く気に障ってこない。むしろ、そのことが余計に参りましたという後味に繋がるという珍しい体験ができた。
by ヤマ

'99. 5.24. 県民文化ホール・グリーン



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