日本では、戦後*から21世紀になるまで、働く雇用形態は「有期雇用」と「無期雇用」が主でした。 これらは、いずれも雇用主が直接労働者を雇う『直接雇用』の形態です。 21世紀に入ると、勤務地に派遣される形の「派遣労働」という『間接雇用』の形態が台頭してきています。
理由は派遣労働は、まさに「人身売買」に当たるという考えからです。 派遣元締め業者の中間搾取(いわゆるピンハネ)の酷さ、使用者の安全義務や労働保護法からの適用除外・・etc これらの弊害がある事が判っており、この弊害を排除するために、 「働き方の多様化」という名の元に、「派遣労働」の形態は徐々に拡大されました。 結果はどうでしょうか?思惑通りに働き方は多様化されたのでしょうか? 多くの派遣労働の人は、「自分たちは、正社員の雇用を守るために・・・安い賃金で・・・人身売買されている」と 感じているのではないでしょうか?
「派遣労働法」は派遣労働者が適正なルールの中で働くため、いわゆる働く人を守るために制定されたものです。 しかし、「派遣労働法」は、政治・業界の力学関係、いわゆる「大人の事情」で付け焼刃の如く頻繁に改正されています。 これもまた、結果的に労働法体系を複雑にしています。(派遣労働者を苦しめています) 筆者自身も、「今は、どうなっているの?」と聞かれても、自信を持っては即答できないほどです。 ここでは、労働法規の説明の場所ですから、「派遣労働の問題」は「労働問題」で書きたいと思います。 |
||||
派遣労働者の雇用関係は、右の図のようになります。 赤文字の芸能人の例を比べると分かりやすいかもしれません。 |
|
|||
働く人(右の例では「歌手」)は雇用契約を 派遣元(「事務所」)と結びます。しかし、実際に働くのは、派遣先(TV局など)です。 | ||||
1985年制定の「労働者派遣法」より、派遣労働の雇用形態が 広がりました。 派遣労働という形が定着してくると、やはり労働者が不利益になる「弊害」が生まれてきました。 「偽装派遣」と「二重派遣」の問題です。 ○偽装派遣 派遣業務であるにもかかわらず契約形態を業務請負契約とし、派遣業務を行っている事実を偽装した業務形態のこと。 あたかも自社内で業務を行っているかのように見せるためにも用いらるケースも見受けられます。 「請負業務で仕事をしており派遣ではない」と言われて就職してみると、仕事先は顧客先のオフィスであり派遣と同様の業務形態である場合です。これでは責任体制の不明確になり、労働災害など問題が起きたときにトラブルが発生します。 ○二重派遣 二重(多重)派遣とは、派遣先企業が派遣元企業(派遣会社など)から派遣された派遣社員を他の企業に派遣するもので、間に2社以上が入る場合は多重派遣となります。 雇用関係が明確でないため、雇用主としても責任が不明確になります。 「偽装派遣」「二重派遣」とも、特に IT業界では当たり前のような 形態の時代がありました。(いや、今も・・?) |
||||
労働者派遣法は、許されていた職種が拡大されて以降、2004年以降、幾度なく改正されています。 製造業への拡大、同一企業3年以上の派遣の制限・・ 色々な方面からの圧力、力学によって付け焼刃の如く変化する「労働者派遣法」。 直近では、2012年10月に変わっています。 労働者派遣法 2012年10月の改正では・・ ☆法律の正式名が変わりました。 「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」 ↓ 「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」 政府・厚労省は、「名前も、派遣労働者の保護のための法律になった」と言っていますが、「労働者の保護」を強調しなければいけないあたりが「もう積んでいる」状態なのです。 ご承知の通り、2014年以降、政府・与党(自民党など)は、更に使用者側の意見を聞き、法律を変更しようとしています。 内容が「労働者保護?どごが?」っていう印象を受けるでしょう。 |
||||
労働者派遣の法律の重要な部分が、これだけ多く変わるということは、それだけ問題が多い法律といえます。 |
||||
・ 東京都産業情報局 http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/seido/haken/data/kanren/qa.pdf ・ 厚生労働省 派遣労働者・労働者の皆様 |
||||
→次はこれまでの醜い改正の歴史を | ||||
(注意) 戦後*: 太平洋戦争を指しています。 | ||||
労働環境研究所 TOP > 知っておきたい「労働法規」 > 派遣労働