Novel

亡国の獣 幕間―ある王の独白二―

 あの采配は果たして正しかったろうか。
 かの将を放逐したときから、己はそんな悩みに囚われるようになっていた。
 将が浦西県吏を公明正大だと称したのは、故あってのことではなかろうか。
 では臣が、県吏に謀反ありと言ったのは何故なのか。
 分からなくて、ごちゃごちゃして、誰を信じて良いやら分からなくなった。

 そんなときも、ずっと己の傍にいたのが廉だった。
 廉は件の将と同じ位で、それだけに己よりも悩んでいるはずだった。
 けれど廉は公と私を分ける性格だったから、己の前でそのような表情をするようなことはなかった。
 己は「おおやけ」で、「王」だ。そう教えられてきた。

 臣の言うことはよく聞くものだと思っていた。し、そう教育されていた。
 迷うことなんてない。
 己は臣の言うことさえ聞いていればそれで良いと思った。