揺り籠の中にいるんだろうか。視界も思考もふらふらと纏まらない。纏まらないうちに、体の芯のあたりを揺さぶられるような吐き気に襲われて、体をよじった。途端に浮遊感に襲われたかと思うと、何かに体が叩きつけられる。その衝撃で目が覚めた。
そこは列車の床の上だった。
列車に乗りこんだのだったか――。
飛び乗ったあとの記憶がひどく曖昧だ。二日酔いが酷くなって、倒れたのだろうか。悪化したらしい、がんがんと頭に響き渡るような頭痛に顔を顰めた。
「おい、大丈夫か」
「ん? ええ。やったわよ、ほら、ちゃんと飛び乗った」
自慢するように言う。ほとんど条件反射だった。言ってから、その相手が自分の幼馴染みであるということに気がついた。
「ああはいはい。正気じゃねえな」
トッドに助け起こされて、椅子にかける。頭が痛くて、肘掛けにもたれかかった。頭が電車の揺れに揺すぶられるようで気持ちが悪い。吐き気は一周回ってだるさに変わっていて、頭痛と合わさって思考の重石になっていた。
もう笑い出したいくらい体調が悪い。
離れた席からアイボリーの髪の――アルファード少佐が姿を現した。彼は肘掛けに凭れるサイの頭上で、トッドと何か話し合っている。
早口の標準クローヴル語であることに加え、頭痛もあって全く会話が耳に入って来ない。
「……てことだ。……サイ?」
「寝たい」
それでも、自分の一言によって、頭上でトッドがため息をついたのは聞き取れた。
結局サイは今座っている席を、先程のようにベッド代わりにすることとなった。できるだけ寝返りは打つな、と念押しされたけれど、そんなの無意識のうちの行動なんだから保証は出来ない。
心の中でそんな反論をしながら(口を開けば戻しそうだった)、サイは眠りの底に落ちていった。