元祖(自称(^^;)
電池式完全対称型DCパワーアンプをStudyする
・時来たれり。 ・故に、10年前に作った我がヘッドフォンも鳴る元祖(自称(^^;)電池式完全対称型パワーアンプが解体の仕儀となった。 ・が、そのまま捨ててしまうのは忍びない。 ・ので、殆どの部品をキャリーオーバーし、リニューアルすることにした。 ・まぁ、こんな感じ。 |
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・要すれば組み直し? ・なのだが、多少の見直しをする。 ・初段の動作点は0.7mA、2段目の動作点は4mAでこれらは変更しない。2段目は定電流回路を付けなくともこれで4Ω負荷でも終段への電流供給能力は十分である。 ・初段のカスコード回路は省略する。まぁ、No−209を真似る。 ・終段は、出力トランジスタのエミッタに抵抗0.22Ωを入れ、併せて電流制限の保護回路も加える。のもNo−209の真似。 ・で、そうするとその分終段のゲインが減ることもあり、初段の2SK30AGRをgmの大きい2SK117BLに変更する。 ・また、帰還回路の330Ωにシリーズに1kΩのボリュームを入れ、No−209のようにゲインコントロールアンプとする。仕上がりゲインは6.1倍(15.7dB)から21.6倍(26.7dB)。この辺は自分の環境での使い勝手。 ・終段トランジスタにはこの際2SD217を起用し、終段のアイドリング電流は65mAとする。 ・で、新生元祖(自称(^^;)電池式完全対称型DCパワーアンプである。 ・なお、位相補正についても定数を見直した。 |
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・で、どうか。を、LTSpiceで占う。 ・とりあえず、その利得−周波数特性。負荷4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、50kΩ(無負荷相当)の場合のパラメトリック解析。 ・なお、これで終段のアイドリング電流は65mA程度になっている。 |
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・カスコード回路により2段目差動アンプTRのCobにはミラー効果が働かない。今回はここのミラー効果を利用してここをドミナントポールとする位相補正も使わない。代わりに初段のステップ型位相補正で基本的に補正を満足させる。だから、2SA607のhie=hfe/gm≒100/160=625Ωとして、低域側ポール=1/(2π*(0.41k+0.41k+0.12k)*0.0068)=24.9kHz、高域側ゼロ=1/(2π*0.12k*0.0068)=195kHz、中心周波数=√24.9*√195=69.7kHz、ステップ=0.12/(1.2+1.2+0.12)=0.0476≒▲26.4dBという設定。で、どうか? ・結果、fc=25kHz程度のようだ。この場合、2段目のミラー効果を活用したポールと違い負荷が変化してもfcは殆ど変化しない。また、ポール以上では20dB/decで利得低下が始まるが、中心周波数70kHzからゼロの効果で利得低下が抑制されはじめ、ゼロの1オクターブ上の1.95MHzにおいて低域の▲26.4dBで利得が再度水平になる。はずのところ、2SA607の拡散容量による利得低下が作用し、結果的に上手く行っている。普通はポール以上では20dB/decで直線的に利得低下した方が良いのだが、この場合は195KHzに設けたゼロのおかげでオープンゲインとループゲインの位相回転が戻ってNFB安定性が確保されているので、この結果に文句は言えない。オープンゲインの位相(赤の点線)とループゲインの位相(青の点線)が、右のとおり、ループゲイン(青)が0dBに沈む1.5MHz〜3MHz程度の利得交点周波数間において、マイナス120°未満に持ち上がっているのが、ありがたいゼロの効果である。 (・ステップ位相補正の妖しい解析はここ。) |
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・そんな面倒なことをしないで、2段目差動アンプの右側の例の箇所に小容量のコンデンサーを入れて、ミラー効果を活用して位相補正した方がよほど簡単で良いのではないか? ・やってみよう。その場合はこうなる。位相補正コンデンサーは20pFでちょうど良さ気だ。 |
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・しかしながら、10年前にはこうしたが、今はこれが吉ではないということを認識しているのでやらない。 |
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・何が不吉なのか? ・それは、こうすると2段目差動アンプの不完全対称性が一層助長され、その結果、高速な信号を入力すると、終段に過剰な異常電流が流れ、終段が熱暴走を起こしてしまったりすることである。 ・ということをLTSpiceで観る。 ・異常電流だから終段無負荷であってもそうなる。 ・入力は1Vp−pの100kHz方形波。その場合の出力電圧が右のV(Vout)(緑)であり、その際の終段トランジスタのコレクタ電流の変化がIC(Q4)(赤)と−IC(Q6)(青)である。なお、出力が飽和しないようこの場合電源電圧を±20Vにしてある。 |
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・無負荷なのに、方形波の立ち下がりの瞬間にピーク6A超のスパイク状の電流が終段上下トランジスタを貫通する。マイナス側は出力電圧がマイナス側に出るタイミングなのでまだしも、プラス側のトランジスタは電源電圧にマイナスの出力電圧が加算された状況で大電流が流れることになるので瞬間に巨大損失が発生してたちまちに熱くなってしまう。放熱措置の貧弱な電池式ではひとたまりもない。 ・と、扱う電流が大きいが故、パワーアンプではこういう現象に特に留意しなければならない。 |
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・それは、立ち上がりの早すぎる方形波入力だからであって、通常はそんな信号は入力させないので心配しなくても良いのではないか? ・そうかも知れない。ので、1Vp−pの100kHz正弦波の場合を観る。 |
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・結果、無負荷であるにも関わらず終段トランジスタにはピーク1A近い半波正弦波電流が貫通する。この場合も終段の損失は上下合わせて10W程度になるので、放熱措置の貧弱な電池式であればアッチッチになって熱暴走を起こしてしまうこと必定。 |
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・それは、無負荷だからそうなるのではないか? ・では、8Ωを負荷とした場合の100kHz正弦波と100kHz方形波応答。 |
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・残念ながら、この場合も方形波の立ち下がりの部分で異常電流が貫通するのは同じだし、正弦波でも正弦波の立ち下がり局面で出力電圧と同期しない、ということはパワートランジスタに余分な電圧が掛かった状態で異常電流が貫通しており、その分終段の損失は増大する。 |
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・と、このタイプの完全対称型パワーアンプは高周波入力に対して脆弱である。放熱処理の貧弱なバッテリー式では致命的か。 ・したがって、100kHz方形波や100kHz正弦波応答はもとより、10kHz方形波応答についても、あまりオシロで観測しない方が吉だ。 ・また、終段損失検出型の保護回路を搭載した場合には、外界からの過渡的パルスの誘導等で頻繁に保護回路が作動するといった状態になる可能性も高い。 |
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・では、どうすれば良いのか? ・なのだが、そのためには、こうなる原因を把握しなければならない。 ・結論から言ってしまえば、それは2段目差動アンプの不完全対称動作によるものである。 ・では、良く分からない。(^^; ・ので、もっと詳しく言えば、2段目差動アンプの左右の入力側の時定数が非対称であるためである。 ・そのため、入力信号の伝達は2段目差動アンプの右側が左側より遅れてしまう。その結果、入力信号は終段下側に早く伝わり、終段上側に遅れて伝わる。この場合、信号がプラスに振れるときは終段マイナス側は電流が減る方向なので、終段プラス側に信号が遅れて入っても問題は出ないのだが、信号がマイナスに振れるときは終段マイナス側が、終段プラス側より先に電流が増加する方向で働くので問題となる。NFBアンプなので、2段目差動アンプ右側の時定数によりNFB信号が反転入力に戻るまで時間を要する間に、終段マイナス側がオープンゲインで働いてしまうのである。これはTIM歪みが発生する場合のメカニズムと同じメカニズムである。で、終段マイナス側がそのように働くと当然アンプ出力点の電位を下げる方向に働くから、終段上側のIV変換抵抗の両端電圧は上昇してしまい、その結果、終段上側にも下側と同様の過渡的電流が流れる。そしてそれらが終段上下トランジスタを貫通するのである。 ・と、まぁ、こんなところが当たらずとも遠からずか。 |
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・もし、そうであるとするなら、2段目差動アンプの左側にも左右のミラー効果比を勘案した容量のコンデンサーを挿入し、左右の入力側時定数を揃えれば問題は解決するのではないのか? ・その通りである。 ・たとえば、負荷8Ωの場合、下のように2段目差動アンプ左側に1000pFを付加すると上手くいく。 |
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・結果、異常電流は皆無である。 ・が、残念ながら左側1000pFで良いのは負荷8Ωの場合だけである。 ・負荷を変更すると終段のゲインが変わるので、その変化に合わせて1000pFも変更しないと駄目なのである。が、そんなことを自動的にやるのは不可能だ。 ・結局、この現象の根本原因は、その右側だけがアンプ出力電圧で揺さぶられるという完全対称型の2段目の動作非対称性にある。 ・ので、それを踏まえた対応策を講じなければダメだということである。 |
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・いや、原因はもっと深く辿って、NFBアンプであること自体に求めるべきものではないか?NFBアンプであるから、アンプ内部の時定数でNFB信号がフィードバックされるまでの間に各部がオープンゲインで働くのは当然で、したがってNFBアンプであれば程度の差はあれこういう現象の発生は不可避である。よって、これを踏まえた正当な対策は、アンプにその時定数で規定される時間より立ち上がりの早い信号が入力されないように、アンプ入力にローパスフィルターを設置することである。と、考えるがどうか? ・それはその通りである。 ・ので、入力に3.6kΩと500pFでfc=88kHzのローパスフィルターを追加した場合。 |
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・結果、正弦波はローパスフィルターによって振幅自体が小さくなっている。方形波はローパスフィルターによって立ち上がり速度が制限され三角波になっている。 ・問題の異常電流だが、残念ながらこの場合も正弦波で600mA、方形波で1.25Aに達している。かなり減ったとは言え、まだかなりのもののような気がする。 ・やはり、アンプ自体、この現象が発生しにくいものであるべきようだ。 |
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・そこで、比較のためにGOA型と不完全対称型はこの辺どうなのかを観る。 ・2段目差動アンプの左右の入力側の時定数が非対称であることは、2段目にカレントミラーを採用したGOA型や不完全対称型にも言えるのでちょうど良い。 ・先ずはGOA型。 |
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・結果、やはり、異常電流はGOA型の場合にも発生する。 ・右の無負荷での100kHz方形波応答で明らかなように、方形波の立ち下がりの時だけではなく、立ち上がりの時にもスパイク状の電流が上下トランジスタを貫通して流れる。 ・が、その程度はピーク0.6A弱で上の完全対称型の1/10である。 ・右上の100kHz正弦波応答では、本来は無負荷なのでアイドリング電流の65mAであるべきものが多少増えていると言う意味では完全に正常とは言えないものの、異常電流と言うべきほどの電流増加はない。 ・どちらが主要な要因であるのかは不明だが、NFBアンプであること、そして2段目差動アンプの左右の入力側の時定数が非対称であることを要因とする異常電流はGOA型の場合にも発生する。が、その程度は実用上許容できる範囲である。といった感じだ。 |
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・次に不完全対称型。 |
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・結果はGOA型の場合と殆ど同じである。 ・ので、結論は、NFBアンプであること、そして2段目差動アンプの左右の入力側の時定数が非対称であることを要因とする異常電流は、GOA型の場合にも不完全対称型の場合にも発生するが、そのレベルは小さく、実用上許容できる範囲であるといったところだ。 ・何故、完全対称型の場合と比べてこのように結果に差が出るのか? ・それは、終段をシングルドライブするか、プッシュプルドライブするかの違いによるものだろう。 ・2段目差動アンプの左右出力をカレントミラー折り返しでプッシュプル合成することにより、その左右の入力側時定数の非対称を要因とする時間差問題が緩和される。と考える以外にない。 |
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・以上から、完全対称型については、2段目右側に働くミラー効果を活用した位相補正を使用することはやはり吉ではない。特にパワーアンプについてはこの位相補正はやめておいた方が良い。という結論になる。 ・この形式の完全対称型パワーアンプは4年で姿を消したが、その理由としてこのこともあったのではないか。と推測する。 ・では、どうするか? だが、完全対称型の終段の構成がこうである以上、2段目に対する負荷効果が上側で小さく下側で大きいという非対称は所与のものであるから、方策はこれに伴う問題が最小になるようにする、ということになる。 ・そのために、2段目をカレントミラー折り返しプッシュプル動作としてこの問題に対応したのが、私の不完全対称型DCパワーアンプである。が、これは完全対称型の仲間とは認めてもらえないかなぁ。(爆)(^^; ・そこで、2段目のミラー効果をカスコード回路で遮断し、位相補正は2段目の入り口で左右対等に行うことでこの問題に対応しようとするのが、今回の電池式完全対称型DCパワーアンプである。 ・早速、これで上手く行くかどうか、LTSpiceで占う。 |
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・結果、右の上下2つが無負荷時の100kHz正弦波応答と100kHz方形波応答。下の左右2つが8Ω負荷時の100kHz正弦波応答と100kHz方形波応答。 ・無負荷時の100kHz方形波応答で生じるスパイク状の異常電流のピークはGOA型や不完全対称型の場合よりやや大きいが、2段目右側で位相補正した場合の1/10程度であり、無負荷時の100kHz正弦波応答はGOA型や不完全対称型の場合と同じである。 ・GOA型や不完全対称型の状況を許容範囲とするなら、これも許容範囲だろう。 ・8Ω負荷時の100kHz正弦波応答と100kHz方形波応答応答における終段の電流変化も全く正常で異常電流はない。方形波の立ち上がりと立ち下がりで電流にオーバーシュートを生じているが、NFBを掛けたアンプとしては正常な反応で、異常電流とは異なる。ちなみにGOA型及び不完全対称型の場合も8Ω負荷ではこうなる。 ・ので、これで良いかな。(^^) |
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・参考までに私のNo−209(もどき)はどうか。 |
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・右の上下2つが無負荷の場合で、下の左右2つが負荷8Ωの場合。 ・う〜む。。。 ・まぁ、単なるシミュレーション占いである。信じてはいけない。(^^; |
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・と、シミュレーション占いで遊んでいるうちに基板が出来上がってきた。 |
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・ので、我がNo−144を解体し、そのケース及びボリューム、入出力端子、LED等の付帯部品を全てリユースしてケーシングする。 ・追加加工は1mm厚15mm×15mmのL字アングルによる2本の桟の取り付けと追加したLED2個の取り付け、そして側板へのパワートランジスタの取り付けだけなので、造作もなく終了。 |
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・と、写真を見たらアンプ基板の裏側にSEコンが付いているので、思い出した。(^^; ・クローズドゲイン26.7dBの固定ゲインで使うならば必要ないのだが、ゲインコントロールアンプとして最小ゲイン15.7dBまで絞ると、その場合NFB量が増える(無負荷時にそれは最大になる)ため位相余裕が減ってアンプが発振する可能性が高まる。のを、これらコンデンサーで補償したのだった。 ・それは、終段ドライバーである上下の2SC960のB−C間に120pFを取り付けてある。 ・これがないと、クローズドゲインが15.7dBのMIN設定の場合こうなる。 ・負荷4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、50kΩ(無負荷相当)の場合のパラメトリック解析だが、ここでドライバーの2SC2705のB−C間に30pFのコンデンサーを取り付けてあるのは、2SC960のCobが2SC2705のそれより30pF程度多いだろうという想定によるもの。 ・この場合、どの負荷の場合もクローズドゲイン(緑)の7〜9MHz付近にピークが発生する。ので、発振に至る可能性が高い。 |
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・そこで、これについては終段入り口の上下対称な位相補正で対応する。 ・ドライバーのB−C間に120pFを追加し、2SC960の想定Cob30pFと合わせて150pFのコンデンサーで補償する。負荷に応じて終段のゲインが変化するが、ミラー効果により補償容量もその変化に比例して自動的に変化するので造作がない。 ・結果、ゲイン設定MINの場合も上手く行きそう。 |
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・で、回路はこうなった。 ・電源はNo−209のリチウムイオンバッテリーを使う。また、保護回路についてもNo−209のものを使わせてもらうのだが、保護回路は共通とせず、単独でアンプ内に収めてNo−209で言うところの一体型とした。 ・電源はNo−209の3電源方式ではなく、最近拵えた不完全対称型と同じく2電源型である。 ・過去の電池式の経験からしても、私のような怠け者は、バッテリー方式の場合所要電源の数が増えると手間はその数の二乗倍で増えるように感じ、結局使わなくなったりするからである。 ・多少の出力増より、2電源方式の気楽さを選ぶ。(^^; |
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・で、果たしてその動作は適切か? ・どうかを、LTSpiceの占い波形と対照しながら方形波応答で観る。 ・先ずは、無負荷の場合の10kHz方形波応答と100kHz方形波応答。どの写真も下が入力波形であり、上が出力応答波形である。 ・最初に、ゲイン設定MAXの場合。 ・出力が大きいほどアラが出やすいようなので、入力±0.423V(ピークtoピーク0.846V)、したがって、ほぼ最大出力の±10V(ピークtoピーク20V)としたかったのだが、たまたまバッテリー電圧が下がっていたこととオーバーシュートの関係でそこまでの出力は得られなかった。が、その電源電圧での最大出力ではある。 |
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10kHz 無負荷 MAX | 10kHz 無負荷 MAX 20uS/div 下0.5V/div 上10V/div |
100kHz 無負荷 MAX | 100kHz 無負荷 MAX 2uS/div 下0.5V/div 上10V/div |
・10kHz方形波応答も100kHz方形波応答も、LTSpiceが占う応答波形にうり二つである。 ・応答波形にオーバーシュートが出る。のは、初段ステップ位相補正の場合なかなか避け得ない宿命的なもののようだ。位相回転を引き戻すのはゼロのありがたい効果なのだが、一方その副作用で1MHz近辺のクローズドゲインがやや持ち上がる。のでこうなる。だから、これで良いのである。 ・次に無負荷で、ゲイン設定MINの場合。 |
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10kHz 無負荷 MIN | 10kHz 無負荷 MIN 20uS/div 下0.5V/div 上2V/div |
100kHz 無負荷 MIN | 100kHz 無負荷 MIN 2uS/div 下0.5V/div 上2V/div |
・この場合も、10kHz方形波応答も100kHz方形波応答も、LTSpiceが占う応答波形に似てはいる。 ・NFB量が増えたことに伴いクローズドゲインの帯域がより高域に伸び、ゼロによる帯域の盛り上がりも少し高域に移動したようだ。そのため立ち上がりも高速化し、オーバーシュートも鋭くなっている。 ・残念だが、周波数100kHz方形波応答で明らかなように、実機の方はリンギングが生じている。 ・LTSpiceの方も、終段位相補正を150pFから減らしていくとリンギングが生じるようになる。のだが、それは実機よりもっと細かく、要するにクローズドゲインの持ち上がる周波数が実機の場合より高い。 ・その辺、シミュレーションと実機では素子も違い、完璧なシミュレーションなどもともと望めないのでしょうがない。 ・実機の方もまだ発振には至っていないので、今回はこれで良しとしておこう。 ・まぁ、あまりゲイン設定MINで使わない方が吉であることは間違いないかもしれない。 ・で、次は、負荷8Ωの場合の10kHz方形波応答と100kHz方形波応答。 ・最初に、ゲイン設定MAXの場合。 |
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10kHz 負荷8Ω MAX |
10kHz 負荷8Ω MAX 20uS/div 下0.5V/div 上10V/div |
100kHz 負荷8Ω MAX |
100kHz 負荷8Ω MAX 2uS/div 下0.5V/div 上10V/div |
・最近拵えた不完全対称型の場合と同様に、8Ω抵抗のインダクタンス成分のせいか容量成分のせいか、形波応答が乱れる。 ・入力信号波形まで乱れているところをみると、観測の仕方に問題がある可能性もある。が、まだその原因は掴めていない。 ・が、まぁ、いいか。(^^; ・次に負荷8Ωで、ゲイン設定MINの場合。 |
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10kHz 負荷8Ω MIN |
10kHz 負荷8Ω MIN 20uS/div 下0.5V/div 上2V/div |
100kHz 負荷8Ω MIN | 100kHz 負荷8Ω MIN 2uS/div 下0.5V/div 上2V/div |
・負荷8Ωの場合は、ゲイン設定MINの場合の方がMAXの場合より方形波応答はまともである。 ・100kHz方形波応答もMAXの場合より高速であるし、一方、リンギングは無負荷の場合より軽微になっている。 ・8Ω負荷のため無負荷時よりはオープンゲインが減り、すなわちNFB量が減る。一方、MINの場合とMAXの場合を比較すればMINの場合の方がNFB量が多くその分帯域がより高域まで伸びる。ということにより、こうなるのだろう。 ・結果、これならMIN設定で使っても大丈夫かな。(^^; ・と言ったところで、取りあえず検討は終了。 |
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・で、その音。 ・なのだが、これを作ってようやくバッテリードライブの完全対称型DCパワーアンプで2wayマルチの音が聴けることになった。 ・ので、我がNo−209(もどき)を急遽2電源方式に変更し、リチウムイオンバッテリーから自作二股ケーブル経由で両アンプに電源を供給して聴いてみる。 |
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・長岡鉄男推奨優秀録音CDで、その筋では有名な「梵鐘」を聴いてみた。音楽ではなく、お寺の鐘の音である。 ・「ホリーランド」同様、このCDも上から下まで帯域が広くダイナミックレンジも広大なシステムでないと本領は発揮されない。 ・録音されたのが夏の頃なのか、蝉や虫の音が背景音となっており、ちょうど今の季節そのものである。 ・閑さや岩にしみ入る蝉の声 ・そんな広大な空間に入り込んだような錯覚を覚える。実に澄み切っている。虫の音や風の凪いだ雰囲気、遠くの蝉の声や犬の鳴き声、水の流れる音など、田舎の夏の空間にいるかのようだ。その静けさの中、突然分厚く耳をつんざくような鐘の音が現れ、体を震わせ、長い余韻を漂わせて空間に染み入って消える。その響きの様はまさに眼前にあるようにパルシブでエネルギッシュでしかも滲みや淀みは微塵もない。そしてその間も背景の微かな虫の音や蝉の声がそれぞれの距離から透き通って聞こえてくる。まさに明鏡止水。 ・が、このCD、聴くうちにあまりにリアルなお寺の雰囲気に気味が悪くなって止めた。私は明鏡止水の境地に至っていない。(爆)(^^; ・こういう風に聴こえるのだから、もちろん音楽を聴いてもそのソースのとおりの音がする。ソースが優秀ならこのアンプの奏でる音も素晴らしい。 ・私としてはこのアンプ、生かしておくことにした。(^^) |
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・バッテリードライブの不完全対称型DCパワーアンプと比べてどうか? ・まぁ、甲乙付け難し。(^^; |
2010年9月7日