バッテリードライブ

不完全対称型DCパワーアンプ
Studyする



・時来たれり。

・故に、我が電池式GOAパワーアンプその2とその3が解体の仕儀となった。

・が、そのまま捨ててしまうのも忍びない。

・ので、可能な部品をリユースし新しくバッテリードライブパワーアンプを組んでみることにした。

・まぁ、こんな感じ。
・要すれば組み直し?

・なのだが、多少の見直しをする。

・初段の動作点は1mAとする。いにしえには0.3mAが決まりだったがやはりちょっと窒息しそう。なので増やした。GOAも最終段階ではもっと流したし。幸い使われていたFD1841と2N3954のIdssを改めて測定してみたら2mAをやや超えている。ちょうど良い。のでリユースする。

・初段のカスコード回路は省略する。いにしえには必要という決まりだったのだが、今は電源電圧が低いので必要ないということになったようだ。

・2段目差動アンプの動作点は変えない。それぞれ3.3mA程度なので、想定出力からして4Ω負荷でも終段への電流供給能力的に不足はない。

・終段は、いにしえには出力トランジスタのエミッタに抵抗を入れない決まりであったが、それで終段が熱暴走したりすることもあった。ので0.22Ωを入れ、併せて電流制限の保護回路も加える。

・半固定抵抗もGOA時代には御法度だったが、今は緩やかになっている。ので勿論使う。その方が大幅に楽。

・仕上がりゲインは22倍とする。この辺は自分の環境での使い勝手。

・そして最後に、最も重要な決まりであったGOA抵抗。これも止める。だから、このアンプはGOAではない。

・不完全対称型である。
  
・何が不完全対称型なのか?

・その辺、シミュレーターで占う。

・今回は、終段素子のアイドリング電流を65mA付近に揃えてシミュレートする。

・先ずは利得−周波数特性。

・負荷4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ωそして50kΩ(負荷なしに相当)の場合のパラメトリック解析。
・最初にGOA型
・オープンゲイン(赤)、従ってループゲイン(青)は負荷の抵抗値にかかわらずほぼ一定である。ループゲインはほぼオーバーオールNFB量に等しいので、要するにオーバーオールNFB量は、負荷の抵抗値にかかわらずほぼ一定である。

・また、オープンゲイン(赤)がDCから20kHz程度まで一定であり、このため
オーバーオールNFB量DCから20kHz程度まで一定になる。

・GOA導入の当初の趣旨は、電源電圧変動の影響を受けないということだったと記憶しているが、最終的にはGOAの特徴はこの2点に集約される。
まぁ、抵抗負荷2段差動アンプの場合もそうかな。(^^;
・次に普通型
・GOAを実現するためのGOA抵抗R13を取り去ってしまうとGOAではなく普通のアンプになる。

・この場合、ゲインを生み出す2段目差動アンプの負荷が、カスコード回路の出力抵抗、カレントミラーの出力抵抗、そして終段ダーリントンエミッタフォロアの入力抵抗の並列合成値と大きいものになるので、オープンゲインは低域において大きくなる。負荷4Ωで72dB程度、負荷8Ωで77dB程度、負荷16Ωで82dB程度、負荷32Ωで86dB程度、負荷64Ωで89dB程度、無負荷では94dB程度である。高域は初段FETのgmと2段目に入っている位相補正Cのミラー効果で決まるので、GOAの場合と同じだ。

・結果、GOAの特徴は2つとも失われる。
・次は完全対称型
・完全対称型は、GOAと連続性はなく、はっきり言うとGOAを否定したものである。

・のは、この特性図を見れば明らかで、オーバーオールNFB量は、負荷の抵抗値に応じて増減するし、オーバーオールNFB量も負荷によってDCから20kHz程度まで一定ではなくなる。しかも、オーバーオールNFB量が負荷の抵抗値に応じて増減することを“速度型モーショナルフィードバック効果”(以下、モーショナルフィードバックと略す。)として、終段のローカルNFBによる過剰NFBの排除とともに、GOAより完全対称型の音が良い理由とされている。

・オープンゲイン(赤)は、低域において負荷4Ωで52dB程度、負荷8Ωで58dB程度、負荷16Ωで64dB程度、負荷32Ωで69dB程度、負荷64Ωで74dB程度、無負荷では85dB程度である。負荷の4Ωから64Ωまでの16倍(24dB)の増加に対しオープンゲインの増加は22dBであるが、これが完全対称型の特徴となっているモーショナルフィードバックをもたらす特性である。
・ここでちょっと一つ前の普通型に戻るのだが、その特性は、GOAからGOA抵抗を取り去っただけの普通型にもしっかり現れている。

・完全対称型も普通型もともにGOAを否定したものであるから、特性がある種似てくるのも当然か。

・結果、この普通型でもモーショナルフィードバックはしっかり掛かる。

・勿論、オープンゲイン(赤)やループゲイン(青)が水平に移行する利得がやや大きいし、負荷に応じる利得の増減が、負荷の4Ωから64Ωまでの16倍(24dB)の増加に対して17dBとやや少ない、という違いはある。

・が、これだけあれば単なる程度問題だと思えるし、完全対称型の音をもたらすものとしてモーショナルフィードバックの効果が大きいのであれば、普通型でも良いのではないかなぁ。(^^;
・そして不完全対称型
・不完全対称型はGOA型のGOA抵抗の接続先をアースから完全対称型のようにアンプ出力点に変えただけのものである。しかも、その抵抗値でオープンゲインが水平になる利得を調整できる。

・結果、その特性は完全対称型にうりふたつ。

・オープンゲインは低域において、負荷4Ωで55dB程度、負荷8Ωで61dB程度、負荷16Ωで67dB程度、負荷32Ωで73dB程度、負荷64Ωで78dB程度、無負荷では91dB程度であるから、負荷の4Ωから64Ωまでの16倍(24dB)の増加に対しオープンゲインの増加は23dBであり、極めてリニアにいわゆるモーショナルフィードバックが掛かる特性になっている。この場合、上の完全対称型より理想的特性だ。


・が、コンプリメンタリ素子の特性は非対称であるから、同種素子で構成する完全対称型のような対称動作はしない。ということになっている。

・ので、不完全対称型。
 
・その辺定量的にはどうか?

・ということを次にFFTで少しばかり推測する。

・まずは、電源電圧±15V、負荷8Ωで出力1Vr.p.m(0.0655V入力)の場合。基本周波数は1kHzである。
・GOA型
Total Harmonic Distortion:0.016656%

最もオーバーオールNFB量が少ないのに歪率はこの中では最小である。また、高調波は、高次へ向け素直に逓減している。

師おっしゃったとおり、終段エミッタフォロアのドライブ条件が良いということだろうか。
・普通型
・Total Harmonic Distortion:0.017265%

・オーバーオールNFB量が多いのに
歪率はGOA型より多少大きい。

・のは、やはり終段のドライブ条件の問題と解すべきか。あるいは、ローカルNFBの方がオーバーオールNFBより質が良いためである、と解すべきか。

・完全対称型
・Total Harmonic Distortion:0.027693%

・歪率はこの中では一番大きいと出た。が、まぁ、NFB量(ローカルNFBも含めて)の問題かな。

・が、高調波が高次に向けて逓減する中で、2次及び4次の偶数次高調波が押さえられているという感じはする。特に2次はGOA型及び普通型以下だ。が、逆に3次、5次高調波が大きく、結果トータルの歪率が悪くなっている。
・不完全対称型
・Total Harmonic Distortion:0.027527%

・歪率は完全対称型とほぼ同じであるが、僅かに小さい。比較すると、2次、4次は完全対称型より大きく、逆に3次、5次が小さい。

・悪くはないのでは。(^^;
  
・出力をもっと大きくしてみる。

・負荷は8Ωと同じだが、出力は10Vr.p.m(0.655V入力)とする。出力12.5Wとなる。電源電圧が±15Vでは飽和するのでここでは±20Vに上げる。基本周波数は1kHzと同じである。
・GOA型
・Total Harmonic Distortion:0.054500%

出力が大きいので、高調波はかなり増加する。

・で、特徴的なのは、高調波が高次に向けて逓減する中で、奇数次高調波が比較的に小さく押さえられていることである。
・普通型
・Total Harmonic Distortion:0.042227%

・この場合歪率はGOA型より小さくなった。

高調波が高次に向けて逓減する中で、奇数次高調波が小さく押さえられているのはGOA型と同じだ。
・完全対称型
・Total Harmonic Distortion:0.028032%

・完全対称型の面目躍如か。この大出力では今回の4種の中で最低の歪率となった。

・FFTの結果を見るとちょっと信じがたい気もするが、それは2次、4次、6次の偶数次高調波がGOA型や普通型に比して低いことによるものだ。

・が、高次の奇数次高調波が比較的に大きい。ここは上の二つとは実に対照的だ。
・不完全対称型
・Total Harmonic Distortion:0.062518%

歪率はやはりこの中では一番大きい。この辺はやはり終段がコンプリ素子であるが故か。が、この程度に収まるのなら悪くはないのではなかろうか。

・高次の奇数次高調波が比較的に大きいのは完全対称型と同じであるが、完全対称型に比すと2次,4次といった低次偶数次高調波の低減が今ひとつであるところにコンプリの限界が現れている、と言えるかも知れない。

・なので、不完全対称型。
   
・と、妖しい占いをしているうちに基板類が出来上がってきた。
   
・が、ケース加工には時間が掛かる。

・ので、それを待つ間、しばしまた妖しいシミュレーター占いをする。(爆)
   
・何事もそうだが、検証には多数のデータが必要だ。

・から、今度はトランジスタを全て現行で入手可能なものとしてみる。

・まずは、上と同様に電源電圧±15V、負荷8Ωで出力1Vr.p.m(0.0655V入力)の場合。基本周波数は1kHz。
終段のアイドリング電流はこの場合も65mA程度に揃える。
・最初にGOA型
・Total Harmonic Distortion:0.001683%

・素子、すなわちデバイスモデルが異なるだけなのに歪みが1/10になった。オープンゲインが20dB増えた?いいえ、殆ど同じです。何ともシミュレーションとは妖しいものだ。(爆)(^^;

・上の場合と違って、2次、4次高調波が小さく、3次、5次高調波の方が大きいという、まぁ、こちらの方が正しいのではないかという結果である。
・普通型
・Total Harmonic Distortion:0.000836%

・上の場合とは違って、GOA型より普通型の方が低歪みになった。まぁ、理屈としてはこの方が正しいかな。

・完全対称型
・Total Harmonic Distortion:0.023355%

・う〜む。。。この場合は、GOA型や普通型の14倍〜28倍の歪みという結果だ。。。

・対称動作により2次、4次の偶数次高調波が抑えられ、3次、5次の奇数次高調波の方が大きくなるのは理屈だろうと思うが、ローカルNFBを含めたトータルNFB量の差によるものとしても、ちょっとレベルが大きいか。

・不完全対称型
・Total Harmonic Distortion:0.007246%

・これもGOA型や普通型素子より歪みは多いが、なんと、完全対称型より歪みが小さくその1/3だ。

・高調波の分布状態は完全対称型に似ているが、完全対称型より低歪みになるとはこれ如何に?
   
   
・次に出力を10Vr.p.m(0.655V入力)とし、出力12.5Wの大出力時を観る。

・電源電圧が±15Vでは飽和するので±20Vに上げ、基本周波数が1kHzであるのは同じ。

・GOA型
・Total Harmonic Distortion:0.037104%

・2次、4次が良く押さえられ、3次、5次高調波が大きいのはそれらしい感じだ。が、3次高調波が大きいためにトータル歪率が悪くなっている。

・また、10次以上の奇数次高調波が相対的に大きく出てきた。が、まぁ、−120dB以下だからいいか。(^^;
・普通型
・Total Harmonic Distortion:0.014993%

・全体的にGOA型のレベルを少し下げたという感じだが、よく見ると2次から5次では3次高調波のみが小さくなっている。

・完全対称型
・Total Harmonic Distortion:0.023472%

2次、3次のレベルがGOA型より小さく、トータルの歪率としてはGOA型以下である。完全対称型は大出力ほど真価を発揮するようだ。良いのでは。(^^)

・が、やはり10次付近以上の奇数次高調波が多いのは上で観た完全対称型と同じだ。マイナス100dB程度の世界ではあるが、これはやはり完全対称型の特徴か。
・不完全対称型
・Total Harmonic Distortion:0.016596%

・なんと、完全対称型よりも低歪率である。

・高次高調波の出方などはやはり完全対称型に似ているが、全体的にレベルが下がってこの結果だ。

・これが本当なら実に悪くないかも。(^^)

・なのだが、これでは不完全対称型と言えなくなってしまうかな。(爆)(^^;
 
   
   
・という、ちょっと不埒な結果であるので(^^;、もう少し妖しいシミュレーター占いをする。

・趣向を変えてMOSはどうか。

・なので、おなじみのMOS。

・これらのMOSは飽和電圧が大きい。ということもあり電源電圧は最初から±25Vとする。終段のアイドリング電流はこの場合も65mA程度に揃えてみる。

・最初に利得−周波数特性。

・負荷4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ωそして50kΩ(負荷なしに相当)の場合のパラメトリック解析。

・GOA型
・オープンゲイン(赤)、従ってループゲイン(青)は負荷の抵抗値にかかわらずほぼ一定であり、また、オープンゲイン(赤)がDCから20kHz程度まで一定で、このためオーバーオールNFB量DCから20kHz程度まで一定になる。

・この辺は当然上のトランジスタによるGOA型と同じであるが、GOA抵抗値が5.6kΩでオープンゲインも上のトランジスタによるものと殆ど同じになっている。上手く設計されている。と、今更に感じる。(^^;
・普通型
・MOS(というかFET全般)はその負荷に関わらず高い入力インピーダンスを保つので、この場合負荷に関わらず低域は100dB以上の利得になる。グラフでは明らかでないがこの場合のfcは100Hz程度である。オペアンプのようなワイドラー特性だ。

・したがってMOSの場合は、普通型でモーショナルフィードバックをもたらすような特性にはならない。
・完全対称型
・終段のアイドリング電流が65mA程度のこの場合、終段MOSのゲート抵抗を3kΩとすることにより8Ω負荷で上のGOA型と同程度のオープンゲイン(赤)となった、

・負荷4Ωから64Ωの16倍(24dB)の変化に対して、低域でオープンゲインも24dB変化しており、極めてリニアにモーショナルフィードバックが掛かる特性である。
・不完全対称型
・トランジスタによる場合もそうだが、この場合のように初段、2段、終段の構成が同じであれば、不完全対称型にするための抵抗(ここではR5)の値を完全対称型の終段ゲート(or ベース)抵抗の1/2にすると、その利得−周波数特性は完全対称型に一致するものになる。

・すなわち、その抵抗値で2段目までの利得が決まるのは完全対称型も不完全対称型も同じ。その抵抗値で終段の利得が変わるものではないのも同じ。で、不完全対称型はPPでその抵抗をドライブするので、完全対称型の場合の半分の抵抗値になる。

・のは、理屈。

・で、シミュレーションでもそのようになっている。
   
   
・要は動作は同じ。ということなのだが、片や同極性素子を同極性素子でシングルドライブするのに対して、片や異極性コンプリ素子をカレントミラー折り返しプッシュプルドライブするという違いがある。

・その優劣は当然歪み特性に表れる。ということなのだが、このMOSの場合はどうか。
・GOA型
・Total Harmonic Distortion:0.009683%

・上の現行で入手可能なトランジスタで構成したGOA型よりは歪みは大きい。が、まぁ絶対値としては十分に小さい。
・普通型
・Total Harmonic Distortion:0.001097%

・トータルNFB量が増えて、素直に歪みも小さくなった。という感じである。
・完全対称型
・Total Harmonic Distortion:0.003338%

・やはりさすがに完全対称型というべきか。GOA型の1/3の歪率である。
・不完全対称型
・Total Harmonic Distortion:0.037201%

・やはり不完全対称型というべきか。(^^; 完全対称型の10倍以上の歪率である。

・と言っても、絶対値としては十分に小さいだろう。
   
   
・次に出力を10Vr.p.m(0.655V入力)とし、出力12.5Wの大出力時を観る。
・GOA型
・Total Harmonic Distortion:0.032227%

・さすがに歪みは大きくなる。し、かなり高次まで高調波がだらだらと続いているが、低次ではやはり偶数次の歪みが小さく、奇数次の歪みが大きい。

・普通型
・Total Harmonic Distortion:0.006483%

・GOA型と変わらずだが、NFB量の多くなる低域でそれなりに歪みが小さくなったという感じだ。

・完全対称型
・Total Harmonic Distortion:0.141840%

・う〜む。小出力の時とは打って変わってGOA型の4.4倍の歪率である。その理由は奇数次高調波のレベルが高いためということが分かる。それが何故かは明確ではないが、MOSなので終段のアイドリング電流が足りないのかもしれない。

・と、上のトランジスタによる場合とは真逆な結果になってしまった。(^^;
・不完全対称型
・Total Harmonic Distortion:0.145094%

う〜む。こちらも相変わらず良くない。が、完全対称型と殆ど同じ歪率である。

・この結果からすれば、不完全対称型が完全対称型に著しく劣るということではないが。。。
   
   
・ところで、同程度のオープンゲイン、すなわちNFB量なのにMOSの完全対称型と不完全対称型の歪みがトランジスタによるものより一桁大きいのは気になる。

・この辺、終段MOSなので、そのアイドリング電流のせいでもあるのではないか。と思えるので、それを200mA程度にした場合で確認しておく。

・まずは、完全対称型。
・Total Harmonic Distortion:0.039543%

・やはり歪率は1/3.6となって、小数点以下第二位まで下がった。終段のアイドリング電流を増やすことにより終段の利得が4dBほど増えNFB量もそれだけ増えているのだが、それを勘案しても大きな歪みの減少率である。やはり、MOSはTR以上にアイドリング電流が必要のようだ。

・が、GOA型で同じことをやると、Total Harmonic Distortion:0.008222%とGOA型の歪低減率は1/3.9となる。MOSの場合、上のトランジスタの場合のように、大出力時の歪みがGOA型より完全対称型や不完全対称型が小さくなるという結果にはなっていないことには変わりはない。
・次に、不完全対称型。

・こちらも終段アイドリング電流を200mA程度に設定する。


・そうすると、これも完全対称型と同様に終段の利得が4dBほど増え、NFB量もそれだけ増える。
・Total Harmonic Distortion:0.050241%

・歪みの低減は1/2.9に止まったが、NFB量の増加割合以上の低減率であることに変わりはない。

が、小数点以下第二位まで下がったし、MOSの場合もこの程度に収まるのなら悪くはなかろうて。

・で、やはり不完全対称型という名前で良さそう。(^^;
 
・と、シミュレーターで遊んでるうちにケーシングも終了したようだ。

ので、検証には多数のデータが必要だが、この辺で打ち止めとする。(爆)(^^;
  
ケースはタカチのHY70−33−23SS。

・前面、背面パネル上側フランジに、1mm厚15mm×15mmのL字アングルで4本の桟を渡し、ステレオ分を組んだアンプ部基板AT−1Wを2枚吊り下げている。すなわち、これで2WAYマルチ対応のステレオ2台分である。

・終段トランジスタは、放熱器構造のサイドパネルにタップを切って密着させた3mm厚40mm×40mmのL字アルミアングルに取り付けてある。バイアス発生回路もこのアルミアングルに取り付け、そのトランジスタ2SC1775Aは終段トランジスタに接着してある。

・また、前面パネル上側フランジに保護回路基板とバッテリーチェック基板を、同下側フランジには出力DC検出基板をそれぞれ取り付け、No−209で言うところの一体型としている。

・前面パネル正面は、左右にそれぞれのステレオアンプの動作オンオフスイッチと動作インジケーターとしてのエメラルドグリーンLED、そしてその内側向かって左側が保護回路動作インジケーターの赤色LED、右側が電源パイロットランプ機能を兼ねさせたバッテリーチェックのインジケーター2色LEDである。2色LEDはバッテリー正常時に緑(こうしてみると黄色に近い)でバッテリー電圧低下時に赤となる。電源パイロットランプ機能を兼ねさせるので、バッテリー電圧低下時にLEDが消えてしまうのはまずいのでこうしたもの。

・要するにバッテリー自体のオンオフスイッチは取り付けていない。ので、バッテリーの消耗が気になる場合は、アンプを使わない間は昔の電池式時代のようにバッテリーは背面パネルのコネクタから抜いておくことになる。

・なお、インスタントレタリングも市場から消えてしまったので、文字の入らないのっぺらぼうである。(爆)

   
・と、組み上がったので、動作チェックと位相補正コンデンサーの調整のため、方形波応答を確認する。

・位相補正コンデンサーの容量候補は10pFと20pF。

・出力が大きいほどアラが出やすいようなので、入力±0.423V(ピークtoピーク0.846V)、したがって出力±10V(ピークtoピーク20V)で観る。ほぼ最大出力である。

・なお、写真は全て下が入力波形で上が出力応答波形。
・最初に無負荷状態。
10kHz 位相補正10pF
20uS/div 下0.5V/div 上10V/div
10kHz 位相補正20pF 
20uS/div 下0.5V/div 上10V/div
100kHz 位相補正10pF
2uS/div 下0.5V/div 上10V/div
100kHz 位相補正20pF
2uS/div 下0.5V/div 上10V/div
・次に8Ω抵抗を負荷とした場合。
10kHz 位相補正10pF
20uS/div 下0.5V/div 上10V/div
10kHz 位相補正20pF
20uS/div 下0.5V/div 上10V/div
100kHz 位相補正10pF
2uS/div 下0.5V/div 上10V/div
100kHz 位相補正20pF
2uS/div 下0.5V/div 上10V/div
・抵抗のインダクタンス成分のせいか容量成分のせいか、8Ω抵抗を負荷とした場合の方形波応答が乱れる。

・が、正弦波なら1MHzでも応答に乱れはない。
まぁ、入力信号波形まで乱れているところをみると、観測の仕方に問題がある可能性もあるので、動作に問題がある訳ではないだろう。だめ?(^^;

・位相補正容量については、10pFでも20pFでも方形波応答にオーバーシュートがある。勿論20pFの方がその程度は小さい。

近頃はこの辺全く教えがないが、遙かいにしえの教本では、この場合のようにオーバーシュートが1波程度あるように調整するのが妥当であるとされていた。

・ので、大体この辺で良いか。

・で、どちらが良いかは最終的に音を聴いて決める。

・のだが、あまり違いが分からない。(爆) ので、20pFにしようかな。(^^;
    
・ところで、参考までに私のNo−209(もどき)ではどうか。

・今回の不完全対称型になるべく合わせるということでゲイン設定をMAX(クローズドゲイン21.9dB)にした場合。


・なお、念のためだが、こういう高速な信号をパワーアンプに入れると、先生が同じ遙かいにしえの教本で解析されている、ドライバー段による終段の電極間容量に蓄積した電荷の放電速度が間に合わなくなることによる終段のバイアスの増加、その他の理由によって、終段のアイドリング電流が急増して終段トランジスタが熱暴走を起こす可能性がある。ので十分注意しないといけない。

・特に完全対称型ではこれはやらない方が吉かも。(^^;
10kHz 無負荷
20uS/div 下1V/div 上10V/div
100kHz 無負荷
2uS/div 下1V/div 上10V/div
10kHz 負荷8Ω
20uS/div 下1V/div 上10V/div
100kHz 負荷8Ω
2uS/div 下1V/div 上10V/div
    
破綻?(^^;
・と、言うわけで回路はこう。要するにアンプ部以外はほぼNo−209そのもの。(^^;  
・で、その音。

・なのだが、そもそも不完全なものであるからそんなに良いはずはない。

・確かに他に比して劇的に変わった、というようなものではない。要するにソースそれなりである。

・が、ソースが良いと、鳥肌が立ってジーンとなり、涙がこぼれんほどに感動してしまう。演奏者が心を込めて演奏している様がありありと伝わってくるのだ。

・私としてはこのアンプ、生かしておくことにした。(^^)
不完全対称型。その名に偽りなし。(^^;
   
・といったところで、夏休みの研究と工作。終了。



2010年8月20日




バッテリードライブ

不完全対称型DCパワーアンプ
兼パワーIVCをStudyする






復活



・10年ぶり。

・作って2年足らずで電流入力方式のパワーIVCに母屋を取られ、ついにはパワーIVCの部品取りとして解体とされてしまったバッテリードライブ不完全対称型パワーアンプ。

・10年ぶりに復活。

・これに伴って、今度はバッテリードライブパワーIVCを解体し母屋を返してもらう。

・アンプも整理すべき。増やさない。

・復活に当たってやや回路を見直す。
 
・2段目差動アンプのカスコード回路のベース電位を、HZ3B1に代えて1S1588×3個で設定することとした。最大出力を少しでも大きくするため。

・終段、2SA649と2SD218(シミュレーションでは2SA1943と2SC5200で代用)のアイドリング電流は12mA程度とした。右のシミュレーション回路でも終段のアイドリング電流は12mA程度となっている。

・この辺は、30年前の電池式GOAパワーアンプの設定。

・が、昔のGOA時代はFETはバイポーラTRより音が悪く、よって初段カスコード回路にもバイポーラTRを用いるべきところだが、何気にFETを使用した。また、GOAなら右図のR13=5.6kΩはアースに落とすのだが、これを出力に落として不完全対称型とする。

・そして、その抵抗値、10年前は680Ωだったのだが、5.6kΩとした。

・終段のアイドリング電流が12mA程度であると終段のゲインが小さくなるためもあるが、全体のオープンゲイン設定をやや大きくした。

・位相補正のC1は10pFだったが、5pFとした。これで十分。

・なお、いにしえの10W型電池式GOAパワーアンプは、終段TRにエミッタ抵抗も付けず、放熱器も付けないという、突き詰めた構成だったが、それで熱暴走の洗礼も受けた。ので、エミッタ抵抗も付け、放熱器も用いる。
・そのゲイン-周波数特性。

・パラメトリック解析で、赤がオープンゲイン、緑がクローズドゲイン、青がループゲインであり、オープンゲインとループゲインは、下から上に負荷が4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ(負荷オープン相当)の場合。

・緑のクローズドゲインは負荷にかかわらず26.7dB程度。

・オープンゲインは、負荷4Ω時60.9dB、8Ω時66.7dB、16Ω時72.3dB、32Ω時77.65dB、64Ω時82.4dB、100kΩ(負荷オープン相当)時93.64dB。

・と、完全対称型でいうモーショナルフィードバックはこの“不完全対称型”でも掛かる。が、これで完全対称型になるわけではない。

・不完全対称型。
*間違ってMPC74が方向性反対に付いています。後で直しました。
・方形波応答を観る。



・入力は±0.5Vp−p 10kHz方形波。
・大変綺麗。
    
・歪率を観る。
・1kHzと10kHzの歪率の差が少ない。100kHzについてはそれらの4倍程度の歪率となっている。ループゲインは8Ω負荷の際には100kHzで10kHzより15dB程度少ない、即ち1/6程度なので、歪率は6倍程度になるのが理屈であるが、4倍程度に収まっている、のは良い結果だ。



・最大出力まで歪率が直線的に推移している。



・終段アイドリング電流が12mA程度とまさにB級アンプなのがかつての電池式GOAパワーアンプ。これもその末裔。



・最大出力は、1kHzと10Khzで見れば歪率0.1%以下とすれば8W。1%以下を許容すれば10W。100kHzで見れば1%以下を許容すれば10W。
*間違ってMPC74が方向性反対に付いています。後で直しました。
・電流注入法で出力インピーダンスを観る。
・低域で76.3mΩ。



縦軸のスケールの関係で10kHzから100kHzに向けて急上昇するように見えるが、100kHzでも150mΩ程度。



・オープンゲインが10kHz程度以上で低下するのでこうなるのは当然。
・ステレオ2台分なので、配線作業はなかなかに疲れる。



・4チャンネルとも出力オフセットと終段アイドリング電流を調整。



・出力DC検出基板からのセンサー配線をアンプ出力につないで配線終了。



・完成。
  
・早速音出し。



・45回転LPは、ダイナミックレンジが大きい故か柔らかく伸び伸びしている。



・が、片面に収録できる曲数が少なく、とっかえひっかえは煩わしい。






・その昔、レコードの音の情報量はテープの1/10以下と先生が仰っていた。



・まして、レコードの元になっている96kHz24Bitのデジタルマスターと同じものがそのまま聴ける時代に、そこから更に多数の工程を経て出来上がったレコードをカートリッジで再生することに意味はあるのか?



・と思って聴くと、出てくる音はハイレゾにそう劣るものではない。



・レコードの入れ物としての能力は案外高い。



・カートリッジが発電して今まさに音が生み出されているが故の鮮度感。



・あるいは脳の補正能力か。






・美人だし美声だ。



・声はそれなりに化粧しているが、それは当然。それで良い。



・何気ない歌い方だが、飾らない歌声にかえって心を感じる。









・案外ハイレゾのデジタルもレコード並みということかも知れない。



・が、聴けるテープもテープ再生装置もないので分からない。
 

・ところで、バッテリードライブパワーIVCを解体してしまったのだが、電流入力のパワーIVCはどうするのか?

  

・こうしよう。

     

復活したバッテリードライブ不完全対称型パワーアンプの反転入力側を電流入力として、バッテリードライブ不完全対称型パワーIVCとする。

・要するにK式に同じ。

 

・そのゲイン-周波数特性をミドルブルック法で観る。

  
・パラメトリック解析で、赤がオープンゲイン、緑がクローズドゲイン、青がループゲインであり、オープンゲインとループゲインは、下から上に負荷が4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ(負荷オープン相当)の場合。



・緑のクローズドゲインは負荷にかかわらず26.7dB程度。



・オープンゲインは、負荷4Ω時60.9dB、8Ω時66.7dB、16Ω時72.36dB、32Ω時77.7dB、64Ω時82.45dB、100kΩ(負荷オープン相当)時93.83dB。



・と、不完全対称型パワーアンプと殆ど同じ。



・なのは、同じ回路の非反転入力側と反転入力側から動作を測定したものなので、当たり前と言えば当たり前。逆に言えばミドルブルック法は正しい。
・方形波応答を観る。



・入力は±1.6mAp−p 10kHz方形波。
・何故かオーバーシュートとアンダーシュートが出ている。



・が、問題ない。
・このオーバーシュートとアンダーシュートの原因はJ1のゲート抵抗のようだ。



・これを取り去ってJ1のゲートをアースに直接接続すれば、方形波応答はこうなる。
・大変綺麗。



・ならば、何故ゲート抵抗を外さないのか?



・後で分かる。
・歪率を観る。
・1kHzと10kHzの歪率の差が少ない。100kHzについてはそれらの6倍程度の歪率となっている。ループゲインは8Ω負荷の際には100kHzで10kHzより15dB程度少ない、即ち1/6程度なので、歪率は6倍程度になるのが理屈である。が、パワーアンプの方は4倍程度に収まっているから、パワーIVC動作の方が歪率は悪いという結果だ。



・最大出力まで歪率が直線的に推移している。



・最大出力は、1Khzと10kHzで見れば歪率0.1%以下とすれば8W。1%以下を許容すれば10W。100kHzで見れば1%以下を許容すれば8W。



・と、100kHzについては多少違いがあるが、バッテリードライブ不完全対称型パワーアンプの場合とほぼ同じ。

・と、いうわけで、ステレオ2台分の内、1台分をバッテリードライブ不完全対称型パワーIVCとする。
  
  

・のではなく、

・一台で二役を果たせば、パワーアンプとパワーIVCを別々に作る必要はない。

ので、バッテリードライブ不完全対称型パワーアンプからバッテリードライブパワーIVCとなっていたものを、兼用型として統合する。

・のが、TR1のゲート抵抗を取り除いてゲートをアースに落とさない理由。


・で、バッテリードライブ不完全対称型パワーアンプ兼パワーIVC。

・回路は電源部も含めてこう。

  
・まず、オープンゲインを如何ほどにするかもあるが、


・要点は帰還回路の定数設定。


・パワーアンプとして使用する際は、そのゲインは右上図の(R6+R5)/R5=(6800+330)/330=21.6倍≒26.7dBとなる。


・パワーIVCとして使用する際は、トランスインピーダンスは右下図のR6=6.8kΩなので、そのgmは6800Sになる。


・したがって、パワーアンプ動作で1V入力の際の出力電圧と同様の出力電圧をパワーIVC動作時に出力するために必要な入力電流は3.18mAとなる。


・この電源電圧では、正弦波で最大12V程度しか出力出来ないので、パワーアンプ動作ではその際の入力電圧は0.56V程度、パワーIVC動作では入力電流は1.76mA程度となる。


・丁度良いだろう。


・今一つ。


・パワーIVC動作では、前段の電流出力プリアンプや電流出力チャンネルフィルターの出力インピーダンスが、帰還回路の右下図であればR20とパラとなるので、その出力インピーダンスが低いと、回路のループゲイン≒NFB量が小さく(少なく)なる。


・K式では電流出力プリアンプでも出力インピーダンスは大体2kΩ程度以上になる設定なので、R20を330Ωにしておけば、R20と2kΩがパラになっても283Ω程度になるだけで、それほど大きな違いにはならない。


・影響を少なくするためR20を小さくするとR6も小さくしないといけないので、gmが小さくなり同じ出力を得るためにはより大きな電流入力が必要になる。


・R20=330Ωは丁度良いところだろう。


右下図のR20に当たる抵抗を省略し、100%帰還のボルテージフォロア動作させるパワーIVCでは、前段につなぐ機器の出力インピーダンスがそのままR20となるので、つなぐ機器によりループゲイン≒NFB量が変化し、下手をすると、入力ケーブルの容量や、入力あるいは出力につなぐ機器の状況で、あるいは入力オープンで発振したりするものになりかねない。


・NFB回路を外部に引き出すのだから注意しないと。


・と、いうようなことを考えて、オープンゲインの設定や帰還回路の定数設定をする。

  
・完成したバッテリードライブ不完全対称型パワーアンプ兼パワーIVC。

・テクサンのインスタントレタリングがなくなって、ずっとのっぺらぼうのままにしていたが、今回の復活を機に顔を作ってみた。

・LA4さんのブログで知ったexmouth_.ttfフォント(検索すると出てくる。Stereo Power Amplifier と DC のフォントとして使用)をダウンロードしてインストールし、Windowsの適当なフォントも使用して、A-ONEの転写シール透明タイプ(タトゥーシールとも言うらしい)にインクジェットプリンタで印刷し、転写シール記載の手順に従いアルミパネルに転写したあと、レタリング固定剤の代用としてホームセンターからつや消しクリアタイプのラッカースプレーを買ってきてスプレーしてみた。

・出来は褒められたものではない。また耐久性も不明。が、まぁまぁかな。

・これで入力ピンジャックのところでV-Inputにつなげば電圧伝送パワーアンプ、C-Inputにつなげば電流伝送パワーIVC。

・便利。
  
・私の簡素版無帰還IVC型MCプリアンプの出力も、その出力をV−Inputで受ければ電圧伝送で、C−Inputで受ければ電流伝送で信号伝達され、このアンプで簡単にその音の違いの聴き比べが出来る。



簡素版無帰還IVC型MCプリアンプの出力部分を分けて、電流伝送用には抵抗定数を変更し、電圧伝送と電流伝送それぞれ理想的な信号伝達を図るべきかとは思ったが、試しにそのままでV−Input、C−Inputにつなぎ変えながら聴いてみると、そのままで全然良い音がする。



・ので、当面そのままでいいや。(^^;




・で、音だが、



・電圧伝送でも電流伝送でも、一番大事な情感がひしひしと伝わってくる。手前味噌だが、良いアンプだ。GOA当時選び抜かれた素子と回路(勝手に不完全対称型にしているが)は伊達ではない。



・で、電圧伝送から電流伝送に切り替えると、う〜ん、こっちの方が良いかなぁ...



・良い音楽、演奏、歌を聴くと鳥肌が立ちそうな感覚になることがあるのだが、電流伝送の方がそんな感じが来やすいような感じ。



・ブラインドテストでは聞き分けられないかも知れないが。
・No-144改(4Ω対応)パワーアンプの電源と本体の間に割り入ったバッテリードライブ不完全対称型パワーアンプ兼パワーIVC






・我が小部屋では10Wばかりの最大出力でも十分な音量になるのだった。






その音も、No-144改(4Ω対応)パワーアンプの復帰の必要はなかったのではないか、と思わせる。






・選び抜かれた素子と回路。本物。素晴らしい。
  



2019年6月21日








久しぶりに



・半田ごてを握る。


・右は、2SC1399。パワーアンプで使う分には2SC1400。


・ジャンクボックスに眠っていたので、滅びる前にこの世で働かせる。



・8個必要だが7個しかない。ので、もう1個は使い回しの2SC1400。下左端。
・初段カスコード回路の2SK117を2SC1399に置き換え。






・だけで良いのだが、この際、他もちょっと弄りたくなる。






・不完全対称用抵抗5.6kΩを10kΩに置き換え。







・位相補正用SEコン5pFを10pFに置き換え。
・で、回路はこう。

・終段Q8、Q10のアイドリング電流は11mA程度。
・そのゲイン-周波数特性。

・パラメトリック解析で、赤がオープンゲイン、緑がクローズドゲイン、青がループゲインであり、オープンゲインとループゲインは、下から上に負荷が4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ(負荷オープン相当)の場合。

・緑のクローズドゲインは負荷にかかわらず26.7dB程度。

・オープンゲインは、負荷4Ω時63.9dB、8Ω時69.6dB、16Ω時75.8dB、32Ω時80.2dB、64Ω時84.6dB、100kΩ(負荷オープン相当)時93.9dB。

ループゲインは、負荷4Ω時37.2dB、8Ω時42.9dB、16Ω時48.4dB、32Ω時53.5dB、64Ω時57.9dB、100kΩ(負荷オープン相当)時67.2dB。

・と、オープンゲイン及びループゲインは従前より3dB程度増加。

・これは、不完全対称用抵抗を5.6kΩから10kΩ、即ち10/5.6=1.786倍=5.04dB抵抗値を増やしたことによるものだが、終段の入力インピーダンスとパラレルだから、3dB程度となる。

・TR 2SA6272SD188 パワーアンプ&パワーIVCでは、不完全対称用抵抗を取り去ったが、こちらには残しておこう。同じにするのも面白くない。
・方形波応答を観る。



・入力は±0.55Vp−p 100kHz方形波。
・一番下が出力波形。当然どの負荷でも同じ波形。オーバーシュートもアンダーシュートもない綺麗な応答波形。



・下から2番目が終段上下トランジスタのコレクタ電流値だが、方形波の立上り、立下り時に貫通電流が生じている。



・上から2番目が、終段パワートランジスタのベース電流値の推移、一番上が終段をドライブする2SC959と2SA606のコレクタ電流値の推移。



・終段上下トランジスタの貫通電流は、そのCob等の充放電に遅れが生じるためで、終段上下トランジスタのベースベース間に1uFのCを挿入すれば解消する。
・終段上下トランジスタのベースベース間に1uFのCを挿入。
・貫通電流は消滅。



・一番上に追加したC2に流れる電流を赤で表示してあるが、この電流によって終段のCob等の充放電の遅れが解消され、下から2番目のとおり終段のコレクタ電流に上下貫通電流は生じない。大変綺麗な波形になる。



・が、通常この方形波のような高周波がアンプに入力されることはないので、特にこのCを入れておく必要はない。



TR 2SA6272SD188 パワーアンプ&パワーIVCでは、あって悪いことはないのでこのCを入れておいたが、皆同じなのも面白くないので、こちらは入れないでおこう。
・出力インピーダンスを観る。
・低域で53.5mΩ、100kHzで204.5mΩ。
・歪率を観る。



リチウムイオン電池の容量は大きいので4Ω負荷にも対応するし、アンプ自体も4Ωで20W出力に必要なピーク電流3.162Aは問題なく出力できる。ので、4Ω負荷の場合の歪率も観る。
1kHzと10kHzの歪率の差が少ないが、10kHzの歪率の方がやや大きい。100kHzについてはそれらの5倍から8倍程度の歪率となっている。



・ループゲイン≒NFB量は100kHzで10kHzより20dB程度少ない、即ち1/10程度なので、歪率は10倍程度になるのが理屈である。が、それ以下に収まっている。



・最大出力は、1KHzと10kHzで見れば負荷8Ωの場合、歪率0.1%以下で8W。1%以下を許容すれば10W。100kHzも1%以下を許容すれば10W。



・4Ω負荷では、1KHzと10kHzで見れば歪率0.1%程度以下で16W、100kHzについては1%以下を許容すれば16W。



・本当?



・シミュレーション。信じてはいけない。



・パワーIVC動作時の歪率については、ほぼ同じと思われるので、省略。
・全てのチャンネル作業終了。

・回路はこう。


・音は?

・もともと良いが、一層良くなったような気が、...

・これ以上はない。




2023年9月13日








その後


  10pF 横軸20uS/div、縦軸下は0.05V/div、上は1V/div
・10kHZ方形波応答。



・下が入力波形で上が出力波形。



・輝線に何かまとわりついているが、観測環境のせいなのでそれは無視。



・入力波形にまでオーバーシュート、アンダーシュートが出ているが、オシロのせいか、プローブの付け方が悪いのか、本来の入力波形にはない。



・出力波形には立上り時のオーバーシュートと立下り時のアンダーシュートが僅かに出ている。
   10pF 横軸2uS/div、縦軸下は0.05V/div、上は1V/div
・100kHZ方形波応答。



・下が入力波形で上が出力波形。



・入力波形にまでオーバーシュート、アンダーシュートが出て、リンギングもあるが、オシロのせいか、プローブの付け方が悪いのか、本来の入力波形には勿論ない。



・出力波形に、立上り時のオーバーシュートと立下り時のアンダーシュートが僅かに出ているが、僅かに1波でリンギングもない。



・これなら位相補正は適切。
・LTspiceで、この場合の100kHZ方形波応答を占ってみよう。
・下が入力波形で上が出力波形。






・実機の100kHz方形波応答にそっくりだ。






・昔の教義での最も妥当な方形波応答になっている。






・よって、位相補正は10pFで良い。
 
・参考のため、LTspiceで、位相補正C1=10pF、11pF、12pF、13p、14pF、15pF場合の100kHZ方形波応答をパラメトリック解析で占ってみよう。
・結果、位相補正容量が増える程に、オーバーシュート、アンダーシュートは小さくなり、12pF以上では、滑らかな肩特性になっている。






・が、ちょっと見にくい。
・ので、横軸を広げてみる。






・良く観ると、12pFでも多少のオーバーシュートとアンダーシュートがあるようだ。






・13pF、14pF、15pFならば、滑らかな肩特性になることが分かる。





・結論としては、教義に従い、位相補正は10pFのままとする。
10pF 横軸20uS/div、縦軸上は0.05V/div、下は1V/div
・今度は、デジタルオシロで観た10kHZ方形波応答。



・こちらは、上が入力波形で下が出力波形。



・アナログブラウン管オシロと違って、輝線に何かまとわりついている感じはない。



・出力波形には立上り時のオーバーシュートと立下り時のアンダーシュートがある。のは、古いアナログオシロスコープに同じ。



・古いアナログオシロスコープも未だ使い物になると言うことだ。



・が、軽いデジタルオシロスコープを使ってしまうと、重いアナログオシロスコープの出番はなくなってしまいそう。
  10pF 横軸2uS/div、縦軸上は0.05V/div、下は1V/div
・100kHZ方形波応答。


・上が入力波形で下が出力波形。


出力波形に、立上り時のオーバーシュートと立下り時のアンダーシュートがある。


・実は、1波程度の小さなオーバーシュート、アンダーシュートが出るようにするのが良いと仰っていながら、いにしえの教書のAB級80Wの100kHz方形波応答写真では、これより立上り、立下りの角は丸まっている。


・なので、シミュレーション結果からして、位相補正を12pFにすると丁度教義に合う応答になるかも知れない。


・が、私は耳が鋭敏ではないので、これまでの私の各パワーアンプ&パワーIVCのメンテナンスで、位相補正値で多少違った方形波応答のものを聴いてきたが、それによる音の違いは分からなかった。


・幸せな耳なのだ。(爆)


音も、これ以上はない。ので、10pFのままとする。
10pF 横軸20uS/div、縦軸上は0.05V/div、下は1V/div 8Ω
・参考までに、アンプ出力に8Ω抵抗を繋いだ場合の方形波応答を観てみる。



・先ずは10kHz方形波。



・無負荷の場合と違って、立上り、立下りにリンギングがありそう。
  10pF 横軸2uS/div、縦軸上は0.05V/div、下は1V/div 8Ω
・次に100kHz方形波。



・出力波形にはオーバーシュートとアンダーシュートの他に細かいリンギングがあるように見えるし、うねりと言うか周期の長いリンギングもある。



・上の入力波形の方にまでリンギングが生じているようだ。何故か?出力から入力側にフィードバックがあるから?分からない。



・他の私のパワーアンプ&パワーIVCでも、ほぼ同様だったが、これが良いのか悪いのか、不明。
     
・何も変化なしなので、音も変化なし。
・気持良い。






・素晴らしい。
  



2023年11月24日







その後のその後



・ジャンクボックスを覗くと、SE3pFが所在なげに転がっている。



・このまま滅びさせるのも忍びない。



・滅びる前にこの世で活用しよう。



・と、不完全対称型パワーアンプ兼パワーIVCの位相補正Cの10pFに3pFをパラにし、合計13pFの位相補正としてみる。
  13pF 横軸20uS/div、縦軸上は0.05V/div、下は1V/div
・結果、まず10kHz方形波応答。上が入力波形で下が出力波形。



・多少のアンダーシュートがあるようにも見えるがどうか。
  13pF 横軸2uS/div、縦軸上は0.05V/div、下は1V/div
・100kHz方形波応答。



・オーバーシュートもアンダーシュートもリンギングもないようだ。
  13pF 横軸1uS/div、縦軸上は0.05V/div、下は1V/div
・横軸を倍に伸ばして観ても、この通り。
・こうなることは上のLTspiceでの占いで分かっていたことだが、再度LTspiceで位相補正13pFの場合の100kHz方形波応答を占う。
・結果は、実機での方形波応答にそっくり。
・いにしえの教本で、先生が方形波応答では1波のオーバーシュート、アンダーシュートがあるように調整するのが良い、と、仰っていた頃のパワーアンプは、抵抗負荷2段差動の、いわば最初期型のもので、右がそのAB級80Wパワーアンプ。
・その100kHz方形波応答をLTspiceで占うとこう。



・オーバーシュート、アンダーシュートは僅かにある感じになった。
・先生が、実機の方形波応答を写真に撮ったのが右。


・左側がアンプ出力で、右側はNFB電圧を観たもの。


・確かにオーバーシュートとアンダーシュートがあるが、それよりも、そもそも立上り、立下りのスピードがやや遅い。


・第2世代のGOAとなってからは、カスコードアンプやカレントミラー等が採用され、パワーアンプがより高速化されている。


・私のこの不完全対称型パワーアンプ兼パワーIVCも位相補正を13pFとしてオーバーシュート、アンダーシュートが無いようにしても、100kHz方形波応答のとおり、これより高速だ。


・より低速になると「つまらない音になる」と、このオーバーシュート、アンダーシュートを許容した理屈からすれば、そもそもこれより高速なら良いのでは。


・と、解して、
我が不完全対称型パワーアンプ兼パワーIVCの位相補正は13pFとしよう。

よって、全回路図はこう。

・位相補正が13pFになったのみ。

 
   
・毎度同じだが、位相補正を弄って、音は変わるか?






・ユーミンのアルバムにも音の良いものがあるのだね。






・薬師丸ひろ子のこれも良い。






・結局音は良い。変わらない。
   



2023年12月21日