ムク鉱とガリ鉱




かつての歌登村営軌道唯一の隧道、「毛登別トンネル」だ。
小頓別からの峠部分に存在した小さなトンネルだ。
ポータルの十字架が非常に珍しい。 毛登別トンネル

旧歌登町の市街地を抜け歌登鉱山の手前から山に入る。
志美宇丹(しびうたん)からオフンタルマナイ川に沿って登ること約12kmで本庫(もとくら)鉱山だ。
今回は久々にsurvival氏との合同探索となる。 林道

標高1129mの函岳を水源とするオフンタルマナイ川。
一般の鉱脈の鉱石は黄鉄鉱・黄銅鉱・閃亜鉛鉱などからなる「ガリ鉱」であるが、
付近は浅熱水性充填型の2系統の鉱脈が交差し、
方鉛鉱・閃亜鉛鉱の塊状鉱体が密集する「ムク鉱」を形成する。 オフンタルマナイ川

林道脇には崩れた砂防ダムがあり、
勢いよく滝のごとくの水流がある。
サバイバル氏の本格四輪駆動車では物足りない林道のようだ。 砂防ダム

10月初めとは言え、ヤマでは紅葉がすでに始まっている。
標高300mを超えてようやく鉱山跡付近だ。
沈殿池を目指し、更に登る。。 紅葉



林道の北側にある平成16年度(旧)より行われている人工湿地実証試験場所だ。
2つの人工湿地が配置され、上流部が「表面流」型、下流部が「浸透流」型となる。
配置を少し見てみよう。 表面流型人工湿地



奥のヨシが密集した部分が湿地表面を廃水が流れる表面流型で、
酸化的な浄化をメインとし、少し大きな面積だ。
下部の植生が疎らな個所が浸透流(伏流)型だ。こちらは湿地内部に水流があり、
還元的な処理が行われ、規模も表面流型より少し小さい。 人工湿地


これが最下流の観測装置だ。
人工湿地の流入前後の鉱水を採取し、PHや流入金属類の分析を行い
実用化に向けてその効果や規模の適正度、除去率や雨量との関係を検証するのである。 廃水処理


こちらは平成25年度より試験が施工されている(新)人工湿地だ。
旧人工湿地の試験を踏まえ、雪解け時期の融水量に備えた規模となり、
長さ16mの石灰石中和反応槽を上流に持ち、
沈殿池・湿地部・越流部からなる、規模20m×99m、水深0.7m、面積1927平方mの人工湿地の全貌だ。 人工湿地


新旧人工湿地を見下ろす丘の上に何か遺構がある。
煙突のようにも見えるが、
鉱山時代の廃祉のようだ。 遺構


森の奥の廃祉は精錬施設などではなく、
鉱山事務所か社宅のような廃墟であった。
ここから更に山中に分け入り6か所の坑口を目指そう。 廃祉


旧人工湿地の上流にもブロック組の廃墟がある。
こちらも大きく崩れており、
ほとんど現存していない。 廃墟


ここからは山中を這うNBRのホースに沿って遡る。
おそらくこのホースの起点は坑口に接続し、
鉱水を先ほどの人工湿地に導いているはずだ。 ホース


ここには雨水枡があり平安通洞坑付近からの浸出水を溜めて、
調査しているようだ。
いよいよ近い。 湧出


そして標高400m付近で到達したのは選鉱所らしき廃祉だ。
ほぼ壁1枚分の廃墟だが、
山中の斜面に圧倒の存在感だ。 選鉱所


その対岸には崩れた人工的な穴がある。
坑口だ。位置的にも「平安通洞坑」で間違いない。
内部を確認してみよう。 平安通洞坑


平安坑の内部は完全に埋没しており、
潜り込める隙間もない。
絶え間なく、鉱水の雫が流れ出ている。 平安坑


通洞坑のすぐ脇には坑木に寸切ボルトで固定されたプレートがある。
更に埋没しているが、
三和坑で間違いないだろう。 三和坑


更にその並びには岩盤に食い込む寸切ボルトがある。
ここも埋没した坑口だ。
鉱床図にある「文珠坑」のなれの果てだ。 文珠坑



通洞坑のちょうど対岸には崖に開く穴があった。
坑口のようだが鉱水のしたたり落ちる量は異常に多い。
ウエイダー等の装備に着替えたサバイバル氏が突入する。 A坑


人一人がやっと入れる程度の小さな穴だ。
鉱床図の語る「A坑」だが環境は悪い。
サバイバル氏は足元を確認しながら入坑する。 坑口


水深が坑道の1/2を占める水没坑道だ。
坑木も現存し、支保工が見事に組まれている。
高さは1m程度しかなくこれ以上の入坑は困難と判断し撤退する。 坑道


ここからは坑口レベルで70m及び100m上方の坑道を探索する。
配管に沿って、
道なき沢を遡行する。 遡上


ここからはザイルをも駆使して際どい沢を登る。
苔が多く足元は滑りやすい。
しかしながら配管はいつまでも斜面を這う。 遡行


そして到達したのは木製の枡の奥の崩れた坑口だ。
ここが「70m坑」だろう。
ここからは更にハードルートとなる。 70m坑


沢とルートが決別した頃がようやく100m坑付近となる。
落下に注意して、
更に進んでみよう。 配管


崖を巻いた向こうに現れた坑口。
斜面に隠れるように現存した「100m坑」だ。
非常に困難な道程だった。 坑口


こちらも小さな坑口で、
看板やビニールシートで管理されているようだ。
内部を確認してみよう。 100m坑


内部は30mほどで埋没しているが、
支保工はしっかりと残存している。 坑道


棄てられた坑口たちと鉱水処理の新たな実験施設が共存する不思議な鉱山跡であった。
鉱床配置図







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坑口
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